第8話 未来への架け橋

俺は部活に入った事が無い。

何故なのか説明するなら俺の行動を馬鹿にされたから。

それも.....友人に、だ。

俺が.....心の底から親友と思っていた友人に裏切られたのだ。

そして.....俺は友人にコケにされ。


通っている中学の教室中の笑者にされたのだ。

それで.....心が傷付いてしまって何も信用出来なくなったのだ。

それは引きこもりをしたぐらいに、だ。

その為に今もずっとぼっちで居たのだがある日。

俺を好きだという七瀬という女の子がやって来て俺の運命は変わり始めた。


それはまるで赤信号がようやっと青になった様な。

止まっていた時計が動き出した様な。

歯車が動き出した様な。

そんな感じだと思う。


一度きりの出会いの中の様な気がする。

七瀬は俺の手を引き。

そして.....部活に入ろうと誘ってくれた。

こんな俺でも.....役に立てるのだろうと思い始めたのだ。


昔のことは昔に置いていこう。

そう決心して.....一歩を踏み出す。

何かしたいと、その様に思えた。


「君達のお陰で随分と綺麗になったよ」


「.....良かったです」


「だね。ゆーちゃん」


ピカピカになった。

俺は埃が一つも無い部室を眺める。

外を見るともう薄暗くなっていて下校の時刻が迫っていた。

こんなにやった感が有るのは久々の様な気がする。


「もう遅い。帰ってから.....明日また部活をやろう」


「はい」


「そうっすね」


「.....でも本当に有難うな。二人とも。まさかまだ続けられるとは思って無かった。君達に感謝だ」


そして頭を下げて上げる、先輩。

俺と七瀬は顔を見合わせてそして笑顔になった。

埃まみれだ。

帰ってから風呂に入ろう。


「.....先に帰ってくれ。でも気を付けて帰ってな。私はまだ仕事が有るから」


「分かりました。先輩も気を付けて」


「手伝わなくて良いですか?」


七瀬が言う。

その言葉に先輩は満面の笑顔を見せた。

そして親指を立てる。

俺達を安心させる様に、だ。


「.....大丈夫。私はもう平気だ。君達が居るから」


「.....はい」


「はい」


俺と七瀬は頭を下げた。

そして部室を後にして下駄箱から靴を出して薄暗い夜道を歩く。

七瀬は、ふふっ、と嬉しそうに笑んだ。

口元に手を当てて、だ。


「.....嬉しいな。ゆーちゃんと一緒に部活が出来るなんて。本当に嬉しいな」


「.....俺が部活をやるとは思って無かったよ。これまでもした事が無い」


「今のゆーちゃん、今まで以上に輝いて見えるよ」


「.....そうか?俺は何時も通りだと思うけどな」


ううん、絶対にぜーったいに輝いてる。

それはあの星の様にね。

と空を指差しながら七瀬は口角を上げて笑顔を見せる。

俺は.....そうか、と笑んだ。


「.....あゆちゃんのお陰だね。本当に」


「そうだな。でも俺は.....」


お前のお陰だと思っている。

俺の場合は、だ。

と言いたかったけど恥ずかしくて言えなかった。

ん?と首を可愛らしく傾げる、七瀬。

俺は.....いや、と言った。


「楽しい部活にしような」


「.....そうだね。ゆーちゃん」


まるでそれは.....本当に。

太陽が全てを吹き飛ばす様な.....そんな感じだ。

表現の仕方が下手くそかも知れないけど。

俺にとって何もかもが変わり始めた。

それは.....奇跡の様だ。


「.....七瀬。お前は.....この街に来て正解だと思うか?」


「.....うん。思うよ。だってゆーちゃんに会えたんだから。大きい」


「.....そうか。それなら良いんだ」


「.....?.....え?」


それが聞ければ十分な気がした。

俺は.....考えながら。

笑みを溢しつつ、七瀬と共に家に帰り。

それから.....明日の事を考えた。



七瀬水色。

過去を語らない俺を好きだという少女。

俺は.....彼女を知らないけど、彼女は俺を好いている。


だけど俺も何かを思い出しそうになったから。

七瀬を知っているんだろう。

昔から、だ。

だけどマジに思い出せない。


最低かも知れない。

だけど.....これから思い出そう。

七瀬は待ってくれるだろう。

思いながら.....俺はスマホを弄る。


(今日は有難う。宜しくな)


(.....いいえ。先輩。此方こそお世話になります。七瀬も)


(そうだな。部室を片してくれて有難うな。昴にも報告したからな)


(.....はい)


昴さん。

俺の先輩だった人.....か。

どんな人だったのだろうと思いながらベッドに横になる。

そしてスマホのキーボードに触れた。


(七瀬にも有難うって言ってくれ。私が言っていたってな)


(はい。分かりました。伝えておきますね)


それから少しだけ時間が空いた。

そして.....コメントがまた来る。

俺は空を見てからそれを開いて見た。


(私は.....本当に諦めていた。だから.....君達が来たのは昴が行ってくれと.....示したんだろうって思えたよ。本当に有難う。本当に.....有難う)


(.....俺達も出会えたのは運命だと思っています。これから.....宜しくお願いします。昴さんのお墓にも行きますね)


(ああ。.....宜しくな)


俺は.....その言葉に柔和になりながら。

一旦、勉強するんで失礼します、とメッセージを送った。

先輩も、分かったじゃあね、と送ってくれて俺はそれを見てからアプリを閉じる。


そして.....勉強道具を取り出した。

間も無く.....小テストが数学で有るのだ。

その勉強となる。


「.....」


勉強なんて昔はつまらなかったな。

だけど今は.....明るく見える。

何だろう。


人と関わるだけでこんなに世界って変わるんだな。

だから人と関わった方が良いって.....良く言われるんだなって思う。

俺は勉強をしながら.....笑みを浮かべる。

よし、頑張ろう。


「.....部活.....何か良い方面に動けば良いな」


思いながら.....俺はシャーペンを握った。

数学の問題を解く。

それから.....勉強をやっていると。

ドアがノックされた。


コンコン


「.....はい?」


「.....私だよ。ゆーちゃん。あ、勉強しているの?」


「.....そうだな。どうした?」


七瀬に返事しながら俺はシャーペンを置く。

そして応答を待っていると。

うん、えっとね、分からない所が有るから教えてほしいの。


と七瀬は言った。

俺は分かった、入って。

と言葉を発する。

七瀬は直ぐにニコッとしながら入って来た。


「.....有難うね、ゆーちゃん」


「大丈夫だ。で、何処が分からないんだ?」


えっとね、数学なんだけど.....と七瀬は何時もの顔を見せる。

そんな感じでその日は過ぎて行った。

明日からまた頑張ろうとその様に.....思える。

よし、っとだ。

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