第2話 それはね、好きだからだよ

七瀬水色。

彼女は.....可憐な存在だった。

簡単に言えば皆んなに慈愛を振り撒く女神の様な。

そんな感じの母性溢れる存在。

完璧な美少女だと思う。


そんな美少女だが。

俺の家に居る。

何?お前の妹なら当たり前?そう思っているお前は馬鹿か。

まず妹じゃねぇし、全く他人の女の子が住むとなったら有り得ないだろ。

何がどうなっている。


「この部屋が水色の部屋だ」


「はい。おじさま。有難う御座います」


「.....」


ちょっと待って。

転校してきたばっかりのしかも俺が全く記憶が無い少女がお嫁さんでこの家に住む?いくらなんでも飛躍しすぎぃ!!!!!

2chとかに書いたらスレが伸びてぶっ叩かれて素顔を特定されて干されるレベルだぞこれ!

全く記憶が無い.....!


「ねぇ、ゆーちゃん」


「.....おわ!?覗き込むな!?」


制服姿の女の子の香りがする少女が俺を覗いていた。

勘弁してくれ。

マジで下半身が反応しそうだし.....って問題はそこじゃ無い。

何だこれ.....マジに話が進んで行ってしまって.....!?


「親父.....俺は.....頭が死んだのか?」


「.....アホかお前?死んでねぇよ」


じゃあ気が狂ったのか俺は。

思いながら頬を抓るが。

世界はそのままだ。

何故なら目の前に七瀬が?を浮かべて立っている。

マジに何なんだ。

一体.....何がどうなっている。


「ゆーちゃん。下でお菓子食べない?」


「.....そのゆーちゃんっての止めてくれ。お前の事をあまり知らないんだ。俺は。それからむず痒い」


「え?ゆーちゃんはゆーちゃんだよ」


ね?と髪をかき上げながら。

俺を笑顔でニコッと見てくる、美少女。

親父が俺を良かったなぁと見てくる。

いや、良く無い。

って言うか.....何が起こっているのかさっぱりだ。


「.....お菓子は良いや。俺は勉強すっから」


「え?じゃあゆーちゃん。勉強教えて?」


「.....いや、今は.....その、勘弁してくれ」


マジに.....心臓がバクバクしているのだ。

これ以上は破裂しそうなぐらいに。

俺は.....溜息混じりに上がって行く。

そして自室に篭った。


「.....俺にお嫁さん?そんな馬鹿な事が.....?」


そんな記憶も無いし、しかもそんな事が有るなんて。

想像が全く出来なかった。

この家に美少女.....俺はボッと赤面する。

それから.....息を整えた。


「.....勉強すっか.....」


その様に考え、俺は勉強を始めた。

それから10分ぐらい経った時。

扉がノックされた。

そして七瀬の声がする。


「入って良い?ゆーちゃん。お菓子と紅茶を持って来たよ」


「廊下に置いておいてくれ。ちょっと忙しい」


と言ったのだが。

ギィとドアが開いた。

それから.....七瀬が入ってく.....な!?

コイツ何やってんだ!?

俺はまるで火山の噴火を見る様な感じで見る。


「.....えっと.....ゆーちゃん。本当に私の事、憶えてないの?」


「.....すまないけど全く記憶に無いんだが」


「.....うーん。困ったな。ゆーちゃんが私に告白したんだよ?」


「.....そうか.....うん.....って、ハァ!!!!?」


アホか昔の俺は!!!!!

記憶が無いのに告白だ?

どこでやったんだそれは!!!!!

俺は愕然としながら七瀬を見る。

七瀬は.....笑顔だった。


「でも良いや。.....ゆーちゃんが憶えてないって言うなら.....私は.....これからゆーちゃんに心から好かれる。それで良いでしょ?今の私を見て」


「.....お前、何でそんなに.....」


「何でって?それはね.....ゆーちゃんが好きだからだよ」


「.....!」


クルッと回転して笑顔。

まるで太陽の様な笑みだった。

俺は.....その笑みに赤面する。

それから顔を横に向ける。

コイツ.....!


「あ、ゆーちゃん赤くなった。あはは」


「.....お前.....!」


はにかみを見せながら。

八重歯を見せながら。

笑顔を見せる、俺をゆーちゃんと呼ぶ女の子。

そして俺の頬に触れた。


「ね?愛してる。大好きだよ。ゆーちゃん」


「.....」


にししと言いつつ、さて、と七瀬は立ち上がる。

それから俺に手を振った。

そして.....下で家事をしてくるね。

と去って行った。

ファイト!と言い残して、だ。


「.....気が狂うな.....マジに」


何だか.....昔から知り合いな感じがする。

だけど俺は知らない。

の割にアイツは.....俺を好きだと言う。

本当に.....気が狂う。


あんなに一途だと俺は赤面をせざるを得ない。

俺は頭をボリボリ掻きながらウァオオオ!!!!!と雄叫びを上げた。

本当に気が狂いそうだ!

とそこまで考えて、はた、とした。


「.....アイツ、俺と一緒に登校するとか言い出す.....つもりじゃ無いよな?」


孤独が好きな俺.....なんだが。

一気に青ざめた。

そして.....冷や汗がどっと出た。


いやいや流石に冗談だよな?

俺は.....顎に手を添えて考える。

その日は勉強に全く集中が出来なくなった。

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