家にやって来た少女は美少女です。.....って言うか俺、この少女の記憶が無いんだけど。

アキノリ@pokkey11.1

第一章 記憶に無い少女

第1話 記憶に無いッ!

簡単に言えば長谷部勇大(ハセベユウダイ)はクソだ。

16歳で高二。

まあ何がクソかと言われたら簡単。


先ず、煩悩有りでそして成績もイマイチで運動オンチ。

さらに言えばボッチでヒョロガリだ。

身長170センチで体重50キロぐらい。


マジでクソッタレと言える。

この世に居て良いのかとさえも感じる。

世界が終わったとしても誰も俺を助けてはくれんだろうと思う。


「.....」


ああ、因みにボッチとは言えイジメを食らっている訳じゃ無い。

簡単に言えば俺は嫌われているのだ。

そういう系のボッチ。

到底、女の子なんぞ寄っては来ないだろう。

その筈だった。


なのに、だ。


今現在、俺の家の玄関。

そこに.....美少女が立っていた。

一体.....何だこの美少女?

さらさらそうな黒髪に.....少しだけ柔和な目。

更に言えばキャンバスの様な白い肌。

そして柔らかそうな桜色の唇に.....細い眉。

更にトドメで魅力の有る瞳。


「七瀬水色と言います。宜しくお願いします」


何が起こっているのか.....誰か説明をしてくれ。

なんで俺の家に.....美少女が居るのか、を。

勘弁してくれ。

数時間前はこんな事は.....無かったのに。



学校のホームルームぐらいまで遡る。

俺は.....何時も通りボッチのバッジでも抱えていれば良い様な扱いを受けながら。

学校で下駄箱から靴を履いて、欠伸をしながら。

教室まで向かって鞄を後ろにしつつ教室に入ると。


「おい聞いたか?このクラスに絶世の美少女が来るってよ」


「マジかよ?アタック必須だな」


「そうそう」


クラスでそんな感じで噂が立っていた。

俺はうざったいな.....と思いながら角の席に腰掛ける。

それから.....また欠伸をしつつ3月。

外の桜を楽しんでいた。


するとホームルームのチャイムが鳴り響き、喧しい連中が静かになって。

それからウズウズした感じ。

なんつうか、小便でも我慢しているかの様にソワソワした感じが拭えない教室に担任がやって来た。

それから俺達を見渡して.....担任の海老名は首をコキコキ鳴らした。

男の担任だ。


「よーし。喜べお前ら。美少女だぞ。あー.....まぁ女子はまた今度な」


「「「「「うおおおお!!!!!」」」」」


何だコイツらの気力は。

朝から国の一つでも潰せそうな勢いだなと思いながらも。

興味が全く無いので外を見た。

と言うのもどうせ嫌われると思いながら諦めで外を見たのだ。

そして入って来た.....美少女。


確かに美少女だった。

物静かな感じながらも毒気の無い少女だった。

教室が大騒ぎになる。

男子どもが大騒ぎを起こした。


「紹介してくれ。七瀬」


担任に促され、その少女は頭を下げた。

それから.....教室を見渡しながら頭を下げて挨拶をする。

俺はその様子に律儀だな、と思った。

そしてその少女は挨拶をする。


「七瀬水色です。宜しくお願いします」


「「「「「ウッヒョオォ!!!!!」」」」」


喧しいなコイツら。

マジで軍隊でも組んだらどうだ。

と思いながら.....七瀬を見る。

すると俺の方を見ている気がした。

目線がコッチを向いていたから、だ。


「.....」


「.....?」


どうせ、コイツボッチか。

と思っているのだろうけど。

そう思って目を逸らしてそして桜を見る。

そうしていると海老名は俺達を見渡しながら出席を取り始めた。

七瀬とはその時だけ目が合うだけ。


放課後まで会話する事は無かったのだ。

つまり俺が帰る時まで。

まあ簡単に言えばそれが相手にされる最後だろうと思っていた。

のだが。



「親父!どういう事だ!」


「あれ?言って無かったっけか?この家にこの子が来るって」


「初耳だ!何で俺の学校に転学して来たばかりの女の子がこの家に来るんだよ!?」


今日は夜勤の親父、長谷部透(ハセベトオル)はまあ落ち着け。

と言いながらニヤニヤしつつリビングで俺を説得する。

オールバックの髪に、若々しい顔立ち。

そして.....身長175センチの親父だ。

30代っつっても過言じゃ無いかも知れない。


そんな目の前では七瀬がニコニコしていた。

いやいや.....いやいや!?

落ち着けという言葉の概念がおかしいんだが!

簡単に落ち着ける訳無いよな!?


「水色。うーん。お前、良い子に育ったな」


「はい。おじさま」


「.....」


ちょっと待って。

マジで何が起こっているのだ?

何故、おじさま?

そして何故、そんなに親しいんだ。

俺は過去に七瀬に会った事.....あったっけ?.....って、ねぇよ!?

会ったら会ったで覚えるだろ普通!


「それにしても.....大きくなったね。ゆーちゃん」


「.....何だそれ。お前にゆーちゃんと呼ばれる筋合い.....」


拳骨が飛んできた。

俺は頭痛に悶えながら.....考える。

親父は、すまんね、と言いながら謝っていた。

やっぱ全然に記憶が無いんだが。


「親父.....マジに記憶が無いんだが」


「そんな訳有るか。この子は将来のお前のお嫁さんだぞ」


「おう.....そうか。.....って、ハァ!!!!?」


七瀬が俺のお嫁さん!?

ハァ!!!!?

そんな馬鹿な話が!!!!?

何でそこまで話が進んでんだ!!!!?

七瀬は俺を見ながら少しだけ顔を赤くする。


「という事だからね。ゆーちゃん」


「.....という事だからね。ゆーちゃん。.....じゃねぇぇよ!!!!?お嫁さん!?何の話だ!?ちょっと待てコラ!?親父!!!!?」


「お前.....本当に何も覚えてないのか?」


親父は目を丸くする。

あたりめぇだ!

こんな美少女に告白した覚えは無いッ!


そして遊んだ記憶も無い!

有ったら直ぐ言うわ!!!!!

俺は頭に手を添える。

ちょっと待て、俺が馬鹿になったのか?

マジに何がどうなって?


「まぁ良いや。取り敢えず、今日からウチに住むんだよな?水色。この馬鹿は放っておいて良いから」


「はい。おじさま。不束者ですが.....宜しくお願いします」


「アァェィ!!!!?」


「お前、うるさい」


再び拳骨が飛んできた。

ごめんもう何が何だか分からないんだけど。

誰か説明してくれ。


奇声しか出ないんだが。

この家に住むって何?この美少女が?

マジに.....どうなってやがる。

ぜんッぜん、この子との記憶が無いんだが.....。

そんな七瀬は俺の前に正座した。


「ゆーちゃん。宜しくね」


「.....!?!」


笑顔を見せる、七瀬。

途轍も無い美少女の七瀬水色と俺、長谷部勇大。

つまり俺を好いている少女と。

俺が全く記憶に無い少女の。

前代未聞のラブコメが始まった。

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