私を救ったもの 2
小学生の頃は特に読書好きな子どもではなかった。でも「本が好き」とか「趣味は読書」と言える人がカッコ良く思え、家の近くにある公立図書館へ時々行っていた。そしてある日、表紙のイラストに惹かれて借りた小説を読んだ。その美しさは表紙だけではなく、その話しもまた美しい文章で綴られているのだった。私はその小説を書いた作家に夢中になった。
その作家の作品は孤児が主人公になっているものが多かった。逆境にある女の子が、やがて素敵な青年に出会い幸せになっていく…私はその主人公に自分を重ね合わせ、いつか自分も…と夢を見た。
ある時、何冊目かに読んだ話しで私は衝撃をうけた。
それは引取られた家でイジメられた孤児が、偶然に出会った青年に助けられ幸せになっていく話しだった。その主人公に対して親友となった女の子が言うのだ。
「…自分だけが苦労して来たとひがむのは止してちょうだい。苦しみは誰にも理解できないなんて思い上がりだし…《中略》…私は薄幸の少女だなんて涙を浮かべていたのでしょう。およしなさいよ、そんな滑稽なこと…《略》…」
衝撃だった。
この台詞を読んで私は自分が自分を不幸だと思っている事を自覚し、それがおそろしく滑稽であると断言されてしまったのだ。
私は、それ以降自分を不幸などとは決して思うまいと…何があっても踏ん張って生きていこうと思えるようになったのだ。
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