イジメっ子

 最初に私をイジメてきたのは主に3人の男子だったが、すぐにクラスのほとんどの男子が同じ事をするようになった。

 最初にイジメてきた男子達は、別にリーダーシップを持つような目立った存在ではなく、どちらかというとだらしがなく授業中の集中力のなさや不真面目さが少しばかり目につくくらいの3人だった。

 そんな3人でも、それまで誰もやらなかった事や言った事のない事をやり出すと、途端にクラスメイト達の目をひくのだった。

「うぇ〜、気持ちわりぃ」

「こっち見るな!」

そんな言葉を同級生に向かってぶつけるなどという事は、小学5年生の子ども達のそれまでの人間関係にはなかったのだ。

 その目新しい行いを面白いと感じたのか、遊びだと思ったのか、やがてクラスのほとんどの男の子たちが、その行為を真似するようになった。そして真似から始まった遊びは、その延長線上に新しい遊びを編み出し、私が配膳した給食は「菌が感染るうつる」と言ってあちこちの席にまわされ、身体や手が私にれたら「くさる」と言って避けられ、授業のフォークダンスで男女が順番に手を繋ぐような時は、その男の子たちはギリギリ私に触れない位置に手を出すのだった。

 私はこの頃の事を後から思い出しては「給食全部に触ってやればよかった」「本当にれる事で腐るのなら、あいつら全員を腐らせてやれたのに」と思ったのだった。


 私はこの男の子達をずいぶん長い間、にくんでいた。"自分の思春期をボロボロにされた" という思いはその後10年以上も私の心に残り続けた。

 複数の小学校から進学し人数の多い中学校で、主なイジメっ子達と関わる事は少なくなり、2年生になって男女共に仲の良いグループの一人になってから徐々にイジメはなくなっていった。

 それでも大人になり、就職して何年かするぐらいまでは、ふといたみを思い出しては、自分を傷つけた男の子達へのにくしみで心が熱く焼けることがあるのだった。



 

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