43.忘年会でお酒を飲んだ夜の話

「それでは今年一年、お疲れ様でした。乾杯!」

「乾杯!」


 普段よりいささか威厳のある空気をまとったテステュー総指導者の合図に合わせ、百にも上るグラスが一斉に掲げられる。

 あの人とも十年近い付き合いになるけれど……というか、なるせいでというか、どうも未だに出会った頃の、カニとかウニとかに成りすましてふざけてたイメージが抜けないんだけれど、よく考えたらこの人だってもう三十歳回ってるんだもんなぁ。


(聞こえてますよ、シュよ)

(あっ、ごめんなさい)


 やばい。思考が完全精神感応テレパシーで漏れていたらしい。

 これ、近くにいる時は、こっちから信者のこと考えてても誤爆しちゃうってのも不便なんだよなぁ。


(年齢の話は構いませんけど、若い子に変な話しないでくださいよ。カニとかウニとか)

(あれやっぱり今思い出すと恥ずかしいんですね)

(私も、責任ある立場になったんですよ)

(当時貴女教祖でしたよね)


 卓袱台を挟んで無言のまま交わされていた会話は、先方の「あ、そろそろ鍋の方もいいんじゃないですか?」というわざとらしい、しかし周囲から見ればごく自然な発言によってリンクを切られ、僕は同卓の面々と共にカニ鍋をつつき始めた。


 一応聖職者の集まりということもあり、名目上は無礼講でも、皆さん節度を持った盛り上がりを見せるのが、例年の教団忘年会の光景だ。都市内事業所の常勤職員全員が集まる、結構大規模な物なんだけど、僕と妻のレインもこうして参加させてもらっている。

 各卓では和やかに宴が進み、一年の疲れを互いに労っていた。


「カニの身ほぐし器、ってあるでしょ」


 隣席のレインが唐突な話題を振ってくる。


「あるね。あの、えーと、うん、うまい喩えが思いつかないやつ」

「細長くて先が分かれてるやつよ」

「それそれ。そうか、見たまんま説明すれば良かったのか」


 金属製の、細長くて、先が二股に分かれている、カニの身をほぐすために使う器具。

 今回の会場となった割烹には、そんな用途の限られた微妙なアイテムは置いていなかった。


「で、それがどうしたの」

「あれって実際、カニの身ほぐしやすい?」

「それ今する話かなぁ」

「カニ食べてる時以外にいつすんのよ」

「カニの身ほぐし器を店で見掛けた時とかかなぁ」


 なお、このお店のカニ脚は、あらかじめ身が見えるほどまで殻を削いであるため、熱耐性を持つ火属性保持者か手の皮の厚いお爺ちゃんお婆ちゃんなら、その隙間に両の親指を添え、殻を縦に裂いて食べることができる。僕には無理だけど。


「あれも慣れれば結構使えるんですよ」


 と、鍋の向こう側から話に乗ってくる人がいる。宗教法人・真なる神を祀る会、総指導者のマドレーヌ=テステューさんだ。


「そうなんですか? 慣れるほど使う機会がないんですよねー」

「普通そうですよね。私も、一時期やたらカニが送られてくる友人の家で毎日カニ鍋を食べていた頃に、苦心して身に着けたんですが」

「カニ料理にもバリエーションがあると思うんですけど」


 カニの話で二人がカニの身ほぐし器の話で盛り上がっている間に、僕は黙々とカニの身をほぐす。



 気付けば最初の頃に穿り出した分のカニ肉が、ポン酢にひたひたになってしまっていた。

 座席は移動自由なので、同じ卓袱台を囲む面々も、僕とテステューさん以外は既に一度以上席替えを済ませている。妻はグラスを持ってぐるりと一周挨拶をしてきた後、また元の席に戻って来ていた。

 隣席の妻は、周囲の神官や事務職員の人達と共に、和気藹々と会話を繰り広げている。話題は今年一年の苦労話ということで、当事者の一人でもある司祭がちょっと前の異端審問について語り、妻はそれを聞いてケラケラ笑っていた。

 仲の良いのは、喜ぶべきことだ。


「レインも部外者なのに何処にでも馴染むよね」


 僕が感心してそう褒めると。

 うーん。なんか、唖然というか、哀れみというか、えも言われぬ目線が、周囲から返ってきたんだけど。


「サニー……扶養者の仕事も知らないの?」


 扶養者。扶養者だけど。


「主、それはないですよ」

「学校で親の仕事について調べてくるように言われた小学生ですか」


 普段あまり話したことのない面々にまでそんなことを言われるのは、無礼講だからだろうか。


「まあ、主ですから」


 なんて笑ってるテステューさんもどうかとは思うんだけど、確かにこの場で一番どうかと思われるべきなのは僕だろう。

 場の膠着を解消すべく、僕は素直に尋ねることにした。


「レインって何の仕事してるの?」


 妻は先程までの素の驚きとは違う、まさしく「呆然」といった表情を作ってみせ、こう問い返した。


「まず聞くけど、サニーってさ、事業所で働いてる人ってみんな神職だと思ってる?」

「え、違うの」


 僕はあまりの衝撃に弾かれたように、同卓の事務員の人に視線を飛ばす。

 事務員の人は笑って答えた。


「うちは事務方はみんな株式会社の方の社員なんですよ」

「へぇ、そうだったんですか」


 何その株式会社って、とは思うけれど、口には出さない。こっそり後で調べることにしよう。


「主は株式会社があった自体、ご存知ないんじゃないですか」


 口に出さなくてもわかってくれるのは、付き合いの長いテステューさんだな。今回は心の声は漏れていないはずだけど、普通に読まれたな。流石だなぁと感心するけれど、今はその優秀さはいらないんだよね。

 僕は平然を装って、重々しく頷く。妻は大きく溜息をつきながら首を横に振ってみせた。


「私、その代表取締役社長」

「ふーん。なんか僕の周りって社長とか多くない?」


 と僕は努めて軽い調子で話を流し、極めて自然な所作で、「ちょっとトイレ行ってくる」と一時離席した。


***


 トイレから戻ると、奥の椅子に座った青年から声がかけられた。


「先輩待ちっスよ、乾杯」

「ごめん会長」


 軽く手を合わせて、空いていた椅子に座る。


「OBが現役に迷惑かけたら駄目でしょー」


 隣席の妻・レインが非難がましい声をかけて見せる。

 僕は「皆さんすみませんでした」と目礼し、グラスを掲げた。


「えーそれでは、偉大なる神と皆様のお陰を持ちまして、このご馳走と本年一年の平穏を恵まれました。深くご恩を喜び、ありがたくいただきましょう! お疲れ様です! かんぱーい!」

「かんぱーい!」


 いつもの定型句に少し付け足した乾杯の文句を会長が述べ、会員諸氏が一斉にグラスを呷る。卒業生があまりはしゃぐのも何なので、僕と妻は大人しく口をつけるだけでグラスを置いた。

 周囲にいるのは新一年生なのか、見たことのない顔ばかりで、僕も相手もどうもお互いに気まずいというか、愛想笑いをしながら天気や気候の話などをしていた。妻の方は早速盛り上がっていたようなのだけれど、枝豆の食べ方だけでどうしてここまで会話が盛り上がるのかが、ちょっと理解できない。普通に尊敬するんだけど。


「あれー先輩、元気ないっスね」


 そこへ、グラスを掲げた会長がヘラヘラ近寄ってきた。


「主宰者は上座に控えてろよ」


 と軽くにらむと、


「OBOGが上座に寄ってくださいよ」


 と近くの椅子を引き寄せて、僕とレインの間に座る。


「よくもまー新婚夫婦の間に座れるね、こいつ」

「へへへ、この度はおめでとうございました」


 顔が良い癖にやたらと卑屈な笑顔が似合うこの男はウィルバー君、大学の後輩だ。付き合いはそれなりになるのに、苗字は知らない。

 学生時代に無理やり引き込まれた、というか、僕を旗印に結成された天与聖典バイブルサークルの初代会長にして現会長。レインは他大生にも関わらずその怪しげなサークルの活動に毎週参加していたので、やはり彼とはそれなりの付き合いがある。


「あれっスよ、うちはもともと先輩あってのアレっスからね」


 それはまぁ、そうなんだろうけども。


 うちの大学は腐っても国内最高学府であり、この場の面々は基本的にみんな頭が良い。学力が高ければ入れるというものでもなく、例えば会話一つとっても妙にオシャレというか、捻くれているというか、聖典の引用や諸分野の専門用語を原義と全然違う意味で使ったりするので、油断していると会話にならない。加えて、相手の言葉の意図が理解できなくてもそれを表に出さないので、会話になっているのかどうかもわからない。理解できてもわざと曲解する者もいる。非常に厄介だ。

 会長はそんな風潮に反発し、なるべく頭の悪そうな話し方を始めたとのことだけれど、時折少々努力が足りないのではないかと思うこともある。

 なお、僕は卒業生と言っても今は亡き一芸入試というシステムで入学した一般人であり、僕の代で始まった一芸入試システムは、二代目入学者が起こした学内闘争で初代入学者が三代目入学者に殺害されるという不祥事を以って、次年度入学者募集より廃止とされた。


「最近どんな感じなの?」


 僕はグラスビールで唇を濡らし、極めて曖昧な質問を投げる。


「サークルにて成せる誓いに従い、今も学内にはただ一つの宗教しかありませんよ」

「そういう話じゃなくて」

「見ての通り、何故か新入生も随分入会しまして」


 確かに、僕の在学中より人数が増えているような気もする。

 レインも周囲をぐるりと見渡し、首を傾げて向き直った。


「このサークルってどんな活動してんのよ?」

「闘争も終わったし、布教も行き着いちゃったんで、今飲み会しかしてねっスね」

「もう潰せば?」

「綺麗に潰れてくれるといいんスけどね」


 妻と後輩がなんだか不穏な話を始めたので、僕は誰か他の知人を捕まえようと、


「先輩方のとこは最近聖戦仕掛けられたんスよね?」

「え、そこでこっちに振るの?」


 したところで、話の先をこちらに向けられた。

 まあ、さっきの話よりは穏便だからいいんだけども。


「聖戦っていうか、ちょっと聖騎士が異端審問に来ただけだよ」

「うはー超軽いスね」

「サニーその感覚治した方がいいよ」

「いや、だってあれも穏便に終わったしさ」


 浮かせかけた腰を下ろし、グラスの中身を呷り、会長が傾ける瓶を受ける。

 あの時の、じんわりとした不愉快味が、心中に蘇ってくるのを感じた。


「ちょっと愚痴みたいになるけど良い?」

「私その話、昨日も聞いたんだけど」


 不満そうに振舞う妻をさて置いて、僕はその時のことを愚痴り始めた。


***


 年忘れ、というけれど、忘年会で失くせる記憶なんてせいぜい半日分が良いところだし、本当に記憶を失くしてしまうと、まあ焦る。


 過去の事例として――最終汽車に乗り遅れたらしい僕は、寒さを防ぐためか公衆念話ボックスに潜り込み、何を思ったか、既に就寝していた女子高生(当時)を着信ベルで叩き起こし、小銭が切れるまで延々手品論を戦わせていていたことがある、らしい。付き合ってくれた方も方なんだけど、

 まあ原因はわかる。かの宴会において、僕が輪切りパイナップルの穴からキュウリスティックを取り出して見せたのと、隣席の後輩の髪の中から刺身を取り出して、驚かれると共に説教を食らったことまでは判然と覚えている。

 大学で所属していたサークルは怪しげな宗教系のそれであり、真面目に手品の事を話せるような相手もおらず、そう、確かあの時、何か新ネタを思い付いて、妙に手品熱が上がってたんだよね。我ながら何で今更こんな必死になって言い訳じみた回想してんのかよくわかんないんだけど、ああ。


 僕もうこれ酔ってんだな。


 僕、イーサン=アンセットは神の化身だ。

 神の化身であるが故に、無職でなければならない。


 いや、ならないってことはないんだけど、奇跡の力で収入を得てはならないというシバリと、布教へのフットワークの軽さを維持するためには、無職でいた方が都合が良い。

 ボランティアで奇跡を授けたり説法をしたりはしているので、別に何もしてないけじゃないんだけど、日の実働時間は午前中の二、三時間だけ。暇は暇だ。

 自信をもって「主夫」を名乗れるほど、夫婦間の家事分担は僕に片寄っているわけでもない。無職だ。

 無職というのは年中無休で無職だから、下手な労働者より気の休まる日がないんだよね。下手な公務員より、よほど重労働といえるんじゃなかろうか。


 そんなことを考えながら手を洗い、濡れた手で額を湿らせ、僕は友人らの待つ座敷席に戻った。


「ただいまー」

「ん。ホッケ来たぞ」

「おー」


 板間に上がり、座布団に胡坐を掻く。

 今日は三夜連続忘年会の三日目で、メンバーは中学時代からの友人となる。


 三夜連続の初日は教団関係者による集まりで、わりと礼節を弁えた、酒量的にも穏やかな場だった。料理の美味しいお店だし、費用は厚生費から出るタダ飯なので、満足のゆくまで腹に詰め込み、幸福な気分で会を終えた。

 二日目は大学時代のサークルでの集まりで、一応宗教サークルということになっているんだけれど、まあ飲んだ。参加者のほとんどがまだ学生なので、単価の安いつまみと安酒を大量に飲む。単価が安いので気軽に吐く。吐いてまた飲む。もう飲めないとなったら、神の奇跡でアルコールの分解を助ける聖灰を創造し、また飲む。大変頭の悪い集まりだった。

 三日目のこの集まりは、特に普段からよくつるむというわけでもないんだけど、幹事の提案で久々に集まったメンバーということになる。全員が揃うのは、中学卒業の半年後くらいにあった同窓会以来じゃないのかな。


「サニーってホッケ好きなの?」

「別に好きなわけじゃないんだけど、なんか居酒屋来たらとりあえずホッケっていうか」


 隣席の妻・レインにそう言いながら、背骨を外す。

 ホッケはどちらかといえば、骨の周りの身がカラッと乾くまでしっかり焼いている方が好みだ。ここのホッケは、少なくともその面では合格と言って良かった。僕は何様なんだろうな。


「骨貰っていいか」

「食べるの? はい」


 妻の逆隣、通路側に座る幹事に皿を寄せ、自分は身を食べる。

 ちょっと生臭いけど、チェーンの居酒屋ならこんなもんだ。

 幹事は骨を噛み砕きながら口へ押し込み、飲み下す。


「やっぱスポーツマンは顎強えな」

「そうだね。すごいなぁディック君」


 幹事の向かいに座る友人が、間違ってはいないんだろうけど容易には首肯しかねる感想を述べ、その隣の友人が首肯した。


 幹事であるリックことパトリック=リカルド=ディックの召集により集まったのは五名だけれど、これは別に、彼に人望がないというわけではない。来る正月休みに彼の主催する同窓会にはクラスのほぼ全員が参加するという話だし。その同窓会に誘われた折、「中学のクラスメイトなんてほとんど覚えてないんだけど」という旨のことを婉曲して伝えたところ、「ならお前が覚えてそうな奴だけ呼ぶから、別で飲もう」とのお誘いを受けたわけだ。

 かくして集まったのがこの五名。僕はこんなに交友関係が狭かったろうかと省みたけれど、ただ友人の慧眼に舌を巻くばかりだった。


 幹事のリック、僕、妻、ブーン=ケリー、エリカ=ブロンテ。中学時代の同級生で、ブロンテさんは正直名前を言われてもピンと来なかったんだけど、顔を見たら思い出せた、ブーンの恋人の人だ。

 この二人は僕の恋占いをきっかけに付き合い始めたということで、一時期「恋占いの神の使徒」を名乗っていた。中学を卒業するまでにはやめてくれたけど、その時の縁でブーンともよく話すようになったし、たびたびその隣にいるブロンテさんとも挨拶を交わすようになった。


「リックは最近、仕事の方はどんな感じなの?」


 ホッケを一口摘み、幾分曖昧な質問を投げる。


「ぼちぼちだな」


 リックは相応に曖昧な答えを返した。

 なるほどと頷き、猪口を傾ける。

 猪口を置いてホッケに手を伸ばす。

 これなぁ、もうちょっと焼いてもいいと思うんだけどな。


「それだけかよ」

「何が?」


 手の甲をこちらに向けて尋ねるブーンに首を傾げ、隣席の妻に目をやると、妻が小声で「近況トークが短すぎるってことよ」と耳打ちしてくれる。

 ああ、と再び頷き、近況トークの幅を広げることとした。


「ブーンはどうなの?」

「結婚とか考えてるの?」

「お金が溜まれば、とは思ってるんだけどね」

「二人も長いもんねー」

「レインちゃん達ほどじゃないよ」


 僕の曖昧な質問へレインの重ねた具体的な質問――絶妙な夫婦のコンビネーションだ――に、ブロンテさんが答え、女性陣二人で近況トークを広げ始めた。見事な展開力だと感心する。


「なあアンセット、あの式ってぶっちゃけ幾らくらいかかったんだ?」

「あれ姉と教団が全部出してくれたから、費用とかわかんないんだよね」

「お前人生なめてるよな?」

「存外苦労してるんだけどなぁ」


 僕はやさぐれるブーンを適当になだめつつ、ホッケをつついていた。



 ホッケの切れ目にししゃもを頼み、話の切れ目にリックが曖昧な質問を投げてくる。


「それで、アンジーはどうなんだ? 最近」

「最近ねぇ。最近」


 僕は今後極力このように無責任な質問を控えようと決意した。


「何か大変だったんだろ? 式のちょっと前くらい」

「ああ、そうそう。なんか天与聖典バイブル教の異端審問官がきてさ」


 ブーンのアシストにより思い出した近況トークを、


「私その話、今日で三夜連続なんだけど」


 語ろうと思った所で、妻の不満げな様子に遮られた。

 僕も水族館での頑張りを先方にスルーされた件は結構根に持っているので、愚痴だって長くなろうものだ。けれど思い返せば、確かに昨日も一昨日もこの話を愚痴ったし、昨日も一昨日も隣の席に妻がいたような気もするなぁ。


「二人は仲良いよね」

「そうだな」


 ブロンテさんのピントのずれた物言いに、ブーンがノータイムで同意した。

 仲の良いのは良いことだと思うけれど。


 小皿に取り分けたポテトサラダを口に掻き込み、飲み下す。

 まぁ、仕方ない。こちらの夫婦仲維持のためにも、妻の希望はなるべく叶える方向で行こう。


「愚痴なんて長々と語るものでもないし。今日はやめとくよ」

「なら、三行で頼む」

「異端審問官が来た。天与聖典カルトクイズ対決仕掛けられた。ゴネられたけど論破した」

「すげぇじゃん」

「すげぇじゃんじゃないから。サニーとディック君の会話は雑過ぎるから」


 箸先を突きつけながら怒って見せる妻を見て、人と人との対話というのは実に難しいものだな、と、僕は改めてそう考えた。

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