第33話 平和が戻った

 ナウマン教団がジャポニカン王国から派遣された勇者一行に倒されたことは、大陸中にすぐに伝わった。

 ジャポニカン王国では国王直属の伝令が告げ、マゲ髪の国とエンドーの国ではマゲ髪の仲間が、マジョリンヌとモミアゲの国ではマジョリンヌの部下が人々に伝えた。

 各地で大騒ぎだ。

「ナウマン教が倒されたのか」

「ナウマン象が復活したけどよ、勇者コニタンのパーティーが倒したらしいぜ」

「マゲ髪とマジョリンヌも、勇者一行と協力してナウマン教を壊滅させたって」

「かつての四王国が復活するみたいだな。風の谷に幽閉されてた王族が見つかったのか」

「虹の都、土の里、火の丘では、すぐにでも新しい王が就いて国を治めるようだ」

「ジャポニカン王国で祝賀会が催されるらしいぜ」

「王宮に行けば、勇者様たちにお目にかかれるのかしら」

 あらゆる場所で、人々に笑顔が戻った。荒廃した村や街に人々が帰ってきた。


 ジャポニカン王国のとある街で、バカ犬とアホ雉が話をしている。

「バカ犬、お前、戦士マモルが飛ばした伝書鳩を追跡するの、手抜いたやろ」

「あの戦士はとても勇敢に戦った。あの鳩がジャポニカン王国にたどり着くのが戦士マモルの最後の願いだった。正直、俺は鳩を捕まえるのをためらった」

「もし、お前があの鳩を捕まえてたら、コニタンのパーティーがナウマン教を滅ぼすことはなかったんかもな」

「ナウマン教がしようとしたことは、武力による支配だ。もし世界征服が達成されたら、恐怖によって人々を支配するようになってただろうな。そんな世の中では、人々は笑えないだろう。人が笑えない世の中なんて、本当に平和なんだろうか。アホ雉、お前に以前言われてから、そんなことを考えていた。俺ら子どもの頃、いつも笑ってたよな。笑いのない世界が来るかもしれないのが、怖かったのかもしれない。笑いのない世の中なんてクソだ。お前の寒いギャグはいらないけどな」

「一言多いねん。行くやろ、王宮での晩餐会」

「いや、行かない」

「何や、行かへんのか。残念やな。で、これからどうするんや?」

「風の谷で生きていくさ。ウマシカ様を弔わねばならないからな。ドクターとクソ猿の供養もな」

「風の谷でちゃんと生活できるんかいな?」

「その日その日をしっかり生きていくさ」

「何か、カッコええこと言うやんけ」

 バカ犬は、去って行った。

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