第27話 ついに風の谷へ
コニタン一行は火の丘と土の里の国境を南下して、風の谷へと通じる唯一の道へ来た。広大な幅の道がうねりながら谷の底へと続いている。「これより先 風の谷 近づくべからず」と書かれた道標がそばにある。
ハリーはそそくさと下って行く。すぺるんは負けじと後に続く。コニタンと金も二人の後に続く。
「げほっ、げほっ……だるい……いいい……」いつもより元気がないコニタン。
「何だか、若干……しんどい……それに咳き込む……ゴホゴホ」ハリー。
「えほっ、えほっ……おうぇええええ」金も苦しそう。
そこへ、矢文が飛んでくる。金以外は気づいていない。ゲロ吐きながら素早く慣れた手つきで文を読む金。
「えほっ、えほっ。おぶぁええええ……ちょいと、失敬……ぶおううぇええおああ!」
金はその辺の岩陰の方へ走っていく、ゲロ吐きながら。みんなを不思議そうに見ながら、すぺるんは言う。
「何だみんな。俺は何ともねえぞ。何で咳き込んでんだ?」
コニタンがすぺるんの脚にしがみついてくる。
「吐きそ……おおお……おえ……」
「おい、コニタン、待て! あっち行って吐け!」焦るすぺるん。
「私はお前に吐いてやりたい……」ハリー。
「頼む、向こう行け。謝るし、謝るし、向こう行け」必死のすぺるん。
すぺるん以外は皆、体調がおかしくなっているようだ。そうこうしていると、ナウマン教の信者らが十数人やって来た。
「お前ら、勇者一行だな」
「よくここまで来れたな」
「捕まえろ!」
すぺるんは指をボキボキ鳴らしながらやる気満々だ。
「モンスターじゃなくて、単なる人間か。余裕で返り討ちにしてやるぜ!」
戦闘開始だ。
すぺるんは信者らに突進していく。まずは二人を一撃で倒した。周りには数人いる。レベルアップしたから以前よりも格段に強くなっていることを認識しているすぺるん。相手のみぞおちを狙って攻撃していく。
コニタンとハリーを狙って信者らが来る。ハリーはコニタンをかばって、信者からこん棒で殴られる。だが、信者が殴ったのはマントで、ハリーとコニタンの姿は消えている。
「畜生、どこ行った!」
「ひいいい……げほっ……いいい……」
「そこか」
「コニタン、叫ぶな、ゴホゴホ、バレただろ、ゴホゴホ、せっかくの変わり身の術が……」
数メートル離れた岩陰に隠れているのが見つかったハリーとコニタン。ていうかコニタン、間抜けかよ。ハリーはフレイルを取り出して振り回す。迎撃だ。でも、両手を上げて降参のポーズのコニタンは超簡単に捕まってしまう。
「助け……て……えええぇぇぇ」
「おい、簡単に捕まり過ぎだろ!」すぺるん。
「コニタン、せめて少しぐらい戦ってから、ゴホゴホ」ハリー。
「げほっ、げほっ……げほおおぉぉぉ」
「筋肉バカよ、ゴホゴホ、早く倒せ、ゴホゴホ」と言いながらすでに捕まっているハリー。
「おいハリー、お前もう捕まってるだろ! 金さん、どこだ!」
すぺるんは金を呼ぶが返事がないし、姿が見えない。
「こいつらを殺されたくなければ、降参しろ!」
コニタンとハリーを人質に取って有利な立場の信者らが、すぺるんに降伏を迫る。
「そっちのマントの男は殺してもいいぞ、だけど臆病な勇者は助けてくれ」
「ゴホゴホ、お前、死ねよ」ハリー。
「降参しろ!」
「ああ、わかったよ」両手を上げるすぺるん。
コニタン、すぺるん、ハリーの三人はナウマン教団に捕らえられてしまった。
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