第25話 バカ犬とアホ雉のケンカ
ナウマン教の本拠地から離れた場所、風の谷を流れる川の横にある荒れ地で、3バカトリオのバカ犬とアホ雉が深刻そうに話をしている。
「バカ犬、ウマシカ様の次の命令、お前はどう思うんや?」
「どういう意味だ?」
「わてな、なんか気が進まへんのやわ」
「なぜだ?」
「モミアゲが死んで、これから残りの4Kもみんな死ぬことになるんやろな」
「ナウマン教が世界を征服するために必要なことだ」
「そやけどな」
「ナウマン教が世界を征服したら、世の中から争いがなくなる。世界中が平和になるんだ。そのために4Kは全員死んでもらわなければならん。そんなことくらいわかるだろ、アホ雉、お前バカか」
「いや、お前に言われたないわ」
「ハエの悪魔は全てのモンスターを操ることができる。ウマシカ様がそのハエの悪魔と契約を交わしたことを忘れたのか。世界を征服したら、世の中からモンスターを全て消し去るという契約を。だから、ナウマン教が世界を征服しなければならない。ナウマン教が世界を征服したら、森の中でモンスターに襲われる人もいなくなるだろう。それに、世界征服後は、俺らも一国一城の主になれるぞ。4Kのどこかの国を俺らが治めることができる」
「そうなったとして、いつかお前とクソ猿がケンカし始めるんやろうな。そしたら、結局また争いが起こることになるやろ。お前らみたいな強欲な奴がおるから、世の中が平和にならへんのと違うか」
「アホに言われたくはない!」
「何やと! 力づくでもわからせたろか!」
「ふん、かかって来い!」
二人はケンカを始めた。ケンカというよりはほとんど戦闘だ。格闘家であるバカ犬は鋼鉄のガントレットで殴り続ける。魔法戦士のアホ雉は剣で攻撃しながら、隙あらば魔法を唱えようとしている。もし魔法を使われたら、相当なダメージを受けて素早い動きを封じられてしまうので、魔法を唱える時間を与えないように攻撃を繰り出すバカ犬。一方のアホ雉はガントレットの重い攻撃を剣で受けきれないので、かわすことに集中している。間合いを詰めたいバカ犬と、間合いを取りたいアホ雉。小一時間それが続いて、二人とも疲れが出てきた。戦闘、いやケンカ終了だ。
「はーっ、やめや! 相打ちで二人とも倒れるわ」
「アホ雉、ウマシカ様について行けぬなら、去れ!」
「俺らはウマシカ様に拾われた。そやから、ウマシカ様には大恩がある。そのことは忘れたらあかん。でもな、ホンマにナウマン教のやってることが世の中に取って良いことなんやろか。地位とか名誉は、ナウマン教と違ってもついてくるで。ナウマン教が世界を征服したら、モンスターが消え失せるんやとしても、恐怖で人を支配することになるやろな。そんな世の中になるんが、ホンマにいいことなんかな。昔みたいに、モンスターが外におるけど、いくつかの王国があって、それなりに平和やった時代と、どっちがええんやろな」
「……それなりに平和だっただと? 風の谷を、俺らの生まれ育った国を目茶苦茶にしたのは、水の森や火の丘や土の里だ! そんな国があった時代が平和だっただと!」
「それはそれで、わしもわかっとる。でもな、感情的にならんと、よー考えたほうがええんちゃうか?」
バカ犬は無言のまま去って行った。
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