第23話 レベル上げの戦闘をします

 冒険を続けるコニタン一行、どこかの草原をぶらり歩き。

「離せえええええ!」

「やかましい! 離したらお前、走って逃げていくだろうが!」

 コニタンとすぺるんが定番のやり取りをしている。

「ところで師匠、どこに向かってるんでしょうか?」ハリー。

「少し距離を置いて歩いてもらえますか、ハリーさん」冷たいかおりん。

「何だお前、嫌われてんのか?」すぺるんが嬉しそうに尋ねた。

「私は女性にモテた経験しかない、お前と違ってな」

「モテない奴ほど自分が嫌われていることがわかってないからな」

「脳みそが筋肉みたいに硬いやつほど、わけのわからない屁理屈ばかり言う」

「何だとこら! やんのか!」

「モテないやつほど短期で暴力的だ」

「あんだと!」怒りのすぺるん。

「ケンカあああああ!」

「静かにして下さい!」

 かおりんが何時いつにない大きな声を上げた。みんな、シーンとする。

「ところでよ、教祖のウマシカが言ってたゴータマ神殿の何とか大神官って誰だ?」すぺるん。

「学校で習っただろが」ハリー。

「覚えてねえ」すぺるん。

「モンスター大戦の英雄の一人ですよ」かおりん。

「何だそれ?」すぺるん。

「30年前に起きたモンスター大戦で大陸を救ったパーティーのメンバーだ」ハリー。

「そのパーティーの勇者だったのがノダオブナガ様、魔法使いだったのが現大臣のサンドロ様、神官だったのがゴータマ神殿の現大神官メイジ様。こんなことも知らないんですか」呆れるかおりん。

「お、おう」

「で、大活躍したノダオブナガ様は民衆から請われて国王の座に就かれたんだ。それまでばらばらだった街や村が国王様に忠誠を誓い、現在のジャポニカン王国が出来上がった」ハリー。

「別にジャポニカン王国の歴史なんかいてねえわ、けっ」すぺるん。

「知らないようだから教えてやったんだろ、ありがたく思え、筋肉バカ」ハリー。

「やかましい!」

「常識ですよ」かおりん。

「おい、かおりん、お前も偉そうにすんな! リーダーじゃねえだろ!」すぺるん。

「私は別に偉そうにしてません」

「人のことをバカ呼ばわりしやがって!」怒りのすぺるん。

「それは師匠ではなく、私だ」ハリー。

「みんな心の中でバカバカ言ってるんだろが!」

「ひいいいいい!」

 すぺるんはコニタンを殴る。しばらく間が空いて、すぺるんは呆れた感じで言う。

「あーあ、こんなにギスギスしてたんじゃ、もうパーティー解散か?」

 しかし、皆どうしていいのかわからない。でも、無口な金が言う。

「ちょいとごめんよ。あきらめちゃいけねえ。千里の道も一歩からだ」

「パーティーは解散させませんよ。このメンバーで、ナウマン教団のアジトに乗り込むんですから」ハリー。

「嫌だあああああ!」

「黙れ! お前大体、勇者だろうが。お前もちゃんと戦えよ」殴りながらすぺるんが言った。

「戦えない人に無理やり戦わせる必要はないんじゃないですか?」かおりん。

「戦えないなら、それなりにできることをやるべきだろが! こいつは何か役に立つことをするどころか、戦闘中に俺の脚にしがみついてきやがるんだ! おかげでこっちはまともに戦えやしない」すぺるん。

「脚にしがみつかれても戦えるような訓練をしてこなかったのか?」ハリー。

「そんな訓練するわけないだろが!」

「戦場では常に命がけだ。何が起ころうが臨機応変に対処しなければならないときがある。どんな状況になっても戦えるように訓練すべきだ、違うか?」ハリー。

「正論だと思いますね」かおりん。

「……何だ、珍しく言い返してこないのか?」ちょっとがっかりなハリー。

「俺は、モミアゲとマジョリンヌを相手にした時、正直ビビっちまった。さっきの、エンドーとモミアゲの戦いを見たときも、小便ちびりそうだった。俺はまだまだ弱い。とても4Kみたいな強い奴らとまともに戦える気がしねえ。お前の言うように、どんな強い奴らを相手にしてもひるまないように鍛えておくべきだな」すぺるん。

「少し曲解されてるみたいな気がするが……」ハリー。

 またシーンとする。ここでまた金が提案する。

「どうだい、みんなでモンスターと戦うってのは。戦って経験積もうじゃねえかい」

「そうだな、みんなでレベルを上げまくろうぜ。手っ取り早くこの辺のモンスターどもを倒しまくろうぜ」すぺるん。

「私は全然かまいませんよ」ハリー。

「嫌だああああああ!」

「黙れ!」殴るすぺるん。

「それじゃあ、みんなで戦闘訓練しましょうか!」かおりん。

「おーーーう!」

 すぺるんが一人で拳を高く突き上げながら元気爆発なノリで叫んだ。みんな、シーンとしてる。

「みんな、やれよ!」みんなと波長が合わないすぺるん。

 一行はその辺でうろうろしてモンスターと遭遇。戦闘開始だ。

 10本足のライオンのモンスターが数匹、一行に襲い掛かってきた。コニタンは速攻で気絶。すぺるんは一番に殴りかかる。金は右肩のアルパカの刺青を出して、得意のチョップを繰り出す。かおりんは水流魔法を唱える。ライオンが三匹倒れる。ハリーは鉄の輪を投げて戦っている。投げられた鉄の輪が、ライオンに避けられる寸前で三つに分裂。かわしきれずにライオンに命中。どうやら新しい手品グッズを試している模様。次にハリーはナイフを数本投げる。ナイフは空中で前後左右に直角に奇妙な動きをし、ライオンはそれをかわそうにもかわしきれない。ナイフが直角に曲がってきて、ライオンに命中。その間にかおりんの魔法で四匹が倒されていた。戦闘終了だ。

「おいハリー、お前、相変わらずおかしな戦い方してるな」すぺるん。

「魔法使いだからな」

「たわけが!」

 一行は近くの村に到着し、宿で体力を回復することにした。


 コケコッコーー!

 そして村の周辺をうろうろしてモンスターを探す。巨大なカタツムリのモンスターが十匹以上現れた。戦闘開始だ。

 いつもの感じで戦うコニタン一行。難なくモンスターを全滅させる。戦闘終了だ。

 そして、再びうろうろしてモンスターと遭遇。戦闘開始。お決まりのパターンの戦い。戦闘終了。

 戦闘開始。戦闘終了。

 戦闘開始。戦闘終了。

 村に戻って宿で一泊。


 コケコッコーー!

 戦闘開始。戦闘終了。

 コニタンはひたすら気絶。

 うんやらかんやら……。

 繰り返し、繰り返し……。

 ……三日ぐらい経過。


「あーーー、疲れた!」すぺるん。

「軟弱な野郎だ、はあはあ、ぜえぜえ……」ハリーは滅茶滅茶息を切らしてる。

「いや、お前めっちゃ疲れとるがな!」

 油断しているこの時、仕留め損ねたモンスターが一匹、背後からすぺるんを攻撃しようと起き上がる。

「危ない!」かおりんが叫んだ。

 バキューン!

「どあっ!」びっくり仰天するすぺるん。

 ハリーが拳銃で見事に仕留めた。

「私がいなかったらお前、死んでいたな。貸し1だ」

「ふん! 余計なことを、気づいていたわい」

「弱い奴ほどいきがる」

「あんだと、こら!」

「ケンカはしない! みんな、レベルがかなり上がったようですね。村の教会で確認しましょう」かおりん。

「俺は教会よりも寺のほうがいいんだがよ」すぺるん。

「贅沢言わないで下さい」

 一行は村に戻って教会へ行く。神父に戦闘の記録を渡して、成績表を作成してもらう。しばらくして神父が書斎から出てくる。

 パッパカパッパッパーーン♪

 ラッパの音が鳴り響いた後、コニタン一行は成績通知を受け取った。みんなで確認する。


 ★コニタンはレベルが1上がった

  臆病さが25上がった


「えっ、それだけ?」ハリー。

「臆病さって、そんなん上がるな!」すぺるん。


 ★すぺるんはレベルが25上がった

  腕力が50上がった

  俊敏さが45上がった

  エロさが60上がった

  頭の良さが50下がった

  体力が80上がった


「エロさが上がって、頭の良さが下がったって、はっはっははは!」ハリー爆笑。


 ★ハリーはレベルが20上がった

  器用さが60上がった

  頭の良さが10下がった

  体力が90上がった

  マジックパワーが40上がった


「おい、貴様も頭の良さ下がっとるし。ていうか、魔法使えねえのにマジックパワーが上がるな!」すぺるん。


 ★金はレベルが20上がった

  腕力が20上がった

  俊敏さが30上がった

  頭の良さが40上がった

  金遣いの荒さが80上がった


「おい、金さん、すごいじゃねえか」感心するすぺるん。

「金遣いの荒さが上がりましたが……」ハリー。

「てやんでえ」金。


 ★かおりんはレベルが15上がった

  俊敏さが40上がった

  頭の良さが60上がった

  マジックパワーが100上がった


「さすが師匠」

「ていうかよ、コニタン、お前1しかレベルが上がってねえぞこら!」

「はいはい、弱い者いじめはやめましょう」かおりん。

「そうだ」ハリー。

「さあ、冒険の続きしようぜ! 先に進もうぜ!」やる気満々のすぺるん。

「そうですね、十分経験を積んだので、先に進みましょうか」かおりん。

「ひゃあああああ!」

「黙れ!」殴るすぺるん。

 一行は村から出て、冒険を再開する。とりあえずは、歩く。旧土の里王国と火の丘王国の国境沿いを歩く。かおりんは、火の丘を支配しているエンドーをどうするか考えている。このまま南下すれば風の谷へ行けるのだが。

「おや、はるか向こうに街がありますね。看板にはヨドガクの街と書かれてます」望遠鏡で見るハリー。

「どこだ? 見えねえぞ」すぺるん。

「お前は見えないんじゃなくて、字を読めないんじゃないのか」ハリー。

「何だと、こら!」

「ヨドガではなくて、ヨドガですよ、ハリーさん」かおりんが訂正。

「えっ? 本当ですか?」

「ええ、私は視力が8.0ありますから」

「ぷぷぷぷぷぷっ! 恥ずかし!」すぺるん。

「黙れ、筋肉バカ」拳銃を突きつけるハリー。

「はいはい、行きますよ」

 一行はヨドガワの街へと向かう。

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