第22話 どうなる? カエルの悪魔
「モミアゲが、やられた……」すぺるん。
「ふははははははっ! これで、俺が世界最強だー!」
エンドーは剣を高く掲げて叫んだ。
「よし、やったぞ、世界最強の男モミアゲを倒したぞ!」ウマシカ。
「よくやったぞ、カエルの悪魔よ」ドクター。
いつの間にか、雨が止んでいた。
「ウマシカよ、これで俺が世界最強だ。約束通りモミアゲの国は俺がもらうぞ。ゆくゆくはこの俺と、お前らナウマン教団とで世界を支配する。いいな! 覚えておけ!」
「ああ、かまわん、約束だ。今頃ジャポニカン王国は滅亡しているだろうな。あの国はわれわれがもらう!」
ウマシカの言葉に、かおりんが即座に反応する。
「なんですって! ジャポニカン王国が!」
「おい、こら」
すぺるんが止めようとするが時すでに遅し。
「誰だ! そこに隠れているのは!」ウマシカ。
「おう、あの時の妖精じゃんか」クソ猿。
「何だ、ビビりの勇者一行か?」バカ犬。
「ひいいいいいい! ブクブクブク……」コニタン気絶。
「やばい、バレたぞ」ハリー。
「どうする? 逃げるか?」沈みそうなコニタンを持ち上げるすぺるん。
「今なら3バカトリオも弱ってるから、勝てるかもしれないわ」かおりん。
「何で、アホ雉が生きてるんだ?」すぺるん。
「さーあ、なーぜでしょうねー」大げさに言うハリー。
「……」ハリーを睨むかおりん。
「ウマシカ様、どうします? こいつらやっつけますか?」クソ猿。
「ああ、かまわんぞ」ウマシカ。
「待て、妖精だけは生け捕りにしろ。妖精のDNAが欲しい」ドクター。
「了解」クソ猿。
「おい、4Kのエンドーまでいるんだぞ、ヤバくねえか?」すぺるん。
「師匠、どうしましょうか?」ハリー。
「悪魔ってモンスターを呼べるんじゃねえのか? ヤバいぜ」すぺるん。
「そうですね。逃げたほうが良さそうね」かおりん。
すぺるんたちは逃げる気満々でいる。
「覚悟しろよ、勇者一行様」クソ猿が水をかきわけてじわじわ近づく。
そこへ、二回目だろうか三回目だろうか、またしてもグッドタイミングで例の男がやって来る。
「待った!」
「何! マゲ髪!」ウマシカ。
そう、マゲ髪がこの上ないタイミングでやって来たのだ。
「このパーティーを全滅させるわけにはいかないな。俺が相手するぜ」
「これはやっかいやな。わしら三人とも、かなり体力が消耗しとるで」アホ雉。
「エンドー」マゲ髪が睨みつける。
「マゲ髪か。お前とも久しぶりだな」エンドーは兜を脱いだ。
「エンドー、キモい面を見せるな」
「うるせえ! お前も十分キモいだろ!」
「……モミアゲを倒したのか……」
「ああ、そうだ。この俺が世界最強になったんだ!」
「ドクター、やれ」ウマシカは冷静だ。
「カエルの悪魔よ、お前の力を見せてやれ!」
「ケロケロ、ケロケロ」
雨が急に降り出し、強風が雨をほぼ真横に飛ばしてくる。暴風雨だ。
「はははははっ! 悪魔の力は、素晴らしい!」ドクター。
「すごい力やけど、わしらも動きにくいんやけどな」アホ雉。
「……ケロ……う、ううう……」
雨風が収まり出した。
「おや、様子が変だな」ハリー。
「倒しちまおうぜ!」すぺるん。
「待って! あなた、悪魔なの!? ハエの悪魔とは何だか匂いが違う」かおりん。
「おいどうした! カエルの悪魔よ! さっさと雨を降らせろ!」ドクター。
「……うう……たす……助けて……」
雨が完全に止んだ。カエルの悪魔は水の中に倒れ込んだ。マゲ髪が
「おい、しっかりしろ」
みんながその状況をじっと見ている中、マゲ髪のすぐ近くに幻のような、ぼんやりとしている人の形が出現した。紫色をしていて、体が透けている。その人の形が魔法を唱える。
「呪い解除魔法!」
「……うっ、うう……」カエルの悪魔が苦しむ。
「おい、どうしたカエルの悪魔よ」ドクター。
紫の人の形が徐々にはっきりとしてきた。
「貴様は!」驚くウマシカ。
「えっ? 大臣様?」かおりん。
体は透けているが、完全に人の外見になった。サンドロ大臣その人である。みんなが驚いた。
「えっ? 何なの?」かおりん。
「妖精のかおりんよ、わしじゃよ、大臣のサンドロじゃ」
「貴様は死んだはず!」ウマシカ。
クソ猿がブーメランを投げるが、大臣の体をすり抜けて飛んでいく。
「何やねん、これ? こんな魔法知らんで」アホ雉。
「実体がないのか。こんなことができるのは、奇妙な術を使うゴータマ神殿の大神官か」ウマシカ。
「ほほほっ、当たりじゃ。メイジ大神官の千里眼の力を借りておる。わしは生きておるぞ、王宮にちゃんとおるわい」
「大臣様」喜ぶかおりん。
「呪い解除魔法!」
「実体がないのに、この場で魔法が発動するんかいな。どうなっとるんや」アホ雉。
「呪い解除魔法が人間の脳に届く魔法だからだ。攻撃魔法や回復魔法は使うことができないはずだ」ドクター。
「……うう、こんなことはしたくない……助けて……」苦しむカエルの悪魔。
「この人は悪魔じゃない、人間よ」かおりん。
「人工的に悪魔にされているんじゃ」大臣。
「おのれー、私の人工悪魔をよくも!」
「ジャポニカン王国の大魔法使いの貴様が王宮にいるということは――」ウマシカ。
「わが国は無事じゃ。ウシの悪魔の呪いもほぼ解除してやったわ」
「くそじじいが!」怒りのドクター。
ナウマン教団にとって想定外のことがいくつも起こり、どうするか考えるウマシカと、神経が高ぶっているドクター。一方、余裕たっぷりのマゲ髪が言う。
「どうする、ナウマン教! 俺らと戦うのか?」
「ウマシカ様、ハエの悪魔を呼べますか?」ドクター。
「いや、そう簡単にはいかん」ウマシカ。
3バカトリオはウマシカの判断を待っているのか、じっとしたままだ。
「久しぶりじゃのうエンドー」大臣。
「クソじじいめ」エンドー。
「キモい顔を見せるな」
「うるせえ! だったら見るな!」
「相変わらず重装備じゃのう」
「俺は戦士だ。強い武器と防護を装備して何が悪い」
「いずれ過信を招くぞ」
「黙れ、じじい!」
「かおりんよ、エンドーに水流魔法を唱えてみよ」
「えっ、は、はい。水流魔法!」
かおりんが魔法を唱えた。水の渦がエンドーに向かう。エンドーはその渦を盾ではね返した。自分の身の丈ほどもある巨大な盾で。盾は傷一つついていない。
「ふむ、それがどんな魔法でもはね返す大陸一の魔法の盾か」大臣。
「俺には、魔法は効かない。この完全防備の俺こそが最強なのだ」エンドー。
「エンドー、モミアゲの国はお前には支配させない。すでに俺の仲間たちが、各街や村に行っている」マゲ髪。
「マゲ髪、ムカつく野郎だぜ」
「エンドー、今ここで俺と勝負するか?」
「今日は体力をかなり消耗した。お前とはまたいつか決着をつけてやる」
エンドーはそう言うと退き始めた。
「待て! エンドー!」ウマシカ。
「お前ら、潰し合っとけ」エンドーは去って行く。
「ウマシカ様、われわれも退きましょう」ドクター。
「……うむ。皆、退却だ!」ウマシカ。
バカ犬は警戒しながら後ろ向きに、アホ雉とクソ猿はマゲ髪やコニタン一行に背を向けて、まだ膝くらいある水をバシャバシャと蹴り上げながらウマシカの方へと歩いて行く。
「戦った方がいいんじゃねえのか?」すぺるん。
「いや、ここは一旦態勢を立て直す方が双方良い選択だろう」マゲ髪。
ウマシカとドクターはカピバラのバッピーを連れて、3バカトリオと共に退却していく。戦闘終了だ。
空が急速に晴れてきた。
「マゲ髪よ、よくぞこのパーティーを救ってくれた」大臣。
「ええ、偶然ですよ、大臣様」マゲ髪。
「マゲ髪、あんたにはまた助けられたな」すぺるん。
「ところで大臣様、一体どうして?」かおりん。
「ああそうだ、生きてるんだろ、透明だけど。何でだ?」相変わらず無礼なすぺるん。
「すまんのう。死んだふりをしておったのじゃ。事情があってな。それよりも、この人工的に悪魔にされた男じゃ。ゴータマの神殿に送って呪いを完全に解いてもらわねばならん」大臣。
「俺らが連れて行けばいいのか?」すぺるん。
「いや、俺が連れて行こう」マゲ髪。
「そうじゃのう。お前らパーティーは冒険を続けろ。この男のことはマゲ髪に任せよう」大臣。
「マゲ髪、あんたには世話になりっぱなしだな」すぺるん。
「世界最強の男と呼ばれていたモミアゲが、死んだ……」ハリー。
「ああ、かつて俺と一緒にナウマン教を倒すためにパーティーを組んで冒険に出た男だ。世界の平和のために戦っていた熱い男だった」マゲ髪。
「こんなに強いのなら、なぜナウマン教を倒さなかったんです?」ハリー。
「前に言ってたよな、あんた、『俺たちにはナウマン教を倒せない理由がある』とか……」すぺるん。
「あれ、そんなこと言ったかなあ。エンドーのこと、見てただろう? あいつは人間として問題がある。エンドーが俺たちのパーティーから抜けたのが、おかしくなることの始まりだったのかなあ」マゲ髪。
「どういうことだ?」すぺるん。
「さあ、お前たちは冒険を続けろ、さあ」急かす大臣。
「いや、しかしよー」すぺるん。
「どうしたんだ筋肉バカ、何怖気づいてんだ」ハリー。
「そうですよ、行きましょう」かおりん。
「……お、おう」すぺるん。
「へっ、あたぼうよ」金。
「誰か、コニタンさんを起こしてあげて」かおりん。
「えっ、ずっと気絶してたのか」ハリー。
「おい、こら! 起きろ!」すぺるんはコニタンを殴った。
「……い、い、痛ええええええ!」
「行くぞ! 来い、こら!」
「暴力反対いいいいいい!」
すぺるんはいつものようにコニタンを無理やり引っ張る。
「……」大臣。
「……」マゲ髪。
「しかしよ、ナウマン教の教祖、目茶目茶べっぴんだったな。うひひひ」すぺるん。
「お前、そもそも下品なんだ。もっと上品になれ、筋肉バカめ」ハリー。
「何だと、バカ魔法使いが。やんのか、こら!」
「こっちはいつでも相手になってやるぞ」二丁拳銃を構えるハリー。
「は、は、は、は、冗談だろが」さすがにビビるすぺるん。
「では大臣様、行ってきまーす!」ノリの軽いかおりん。
水はもう足首の高さまで引いていた。コニタン一行は冒険を続けるために普通に旅立つ。ほんと、ごく普通に。
「……大丈夫かのう……」透明な大臣。
「……さあ……」マゲ髪。
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