第19話 出撃用意

 ……シカ様……ウマシカ様……

 誰かが呼んでいるような気がして、ウマシカは目を覚ました。

「……すまない……少し眠っていたようだ……」

 ウマシカは悲しい夢を見ていたような顔でドクターに言った。

「例の件で、ハエの悪魔が来ております」とドクター。

 ハエ男が部屋へ入ってくる。

「ハヘー、ハへー」

「伝えた通り、ハエの悪魔よ、ジャポニカン王国から例の物を奪ってきてはおらぬのだな」

「ハヘー、盗むのが面倒になったからな。別に、大臣が死んだからいいんじゃね」

「念には念を入れて、もう一度奪ってくるよう命令すべきです」ドクター。

「うぬぬ」困惑の表情のウマシカ。

「おい、ハエの悪魔、もう一度ジャポニカン王国へ行き――」

 ウマシカの代わりに命令しようとしたドクターは、すぐ目の前にハエ男の槍先があるのに気づいた。

「てめえ、殺すぞ!」ハエ男。

「ひいいっ!」腰を抜かすドクター。

「ハエの悪魔よ、もう一度行ってまいれ」

「やーなこった。自分で行ってこいや」

 ハエ男はそう言うとバサバサと飛び去っていった。

「ぐぬ……気まぐれな悪魔め……」

「なんとわがままな! ウマシカ様に向かって!」

「よい。私があの悪魔にどんなことでも命令できるのではない。それに、別の悪魔に行かせればよいのであろう?」

 ウマシカは薄ら笑いを浮かべた。そこへ信者がやって来る。

「申し上げます。人工悪魔の出撃準備、整いました」

「ご苦労。人工悪魔第一号、ウシの悪魔の力を試すときがいよいよ来たか。では、ウマシカ様、出撃のご命令を」

「うむ。人工悪魔をジャポニカン王国に向けて出撃させよ」

「はっ」信者は戻って行った。

「ウマシカ様、ジャポニカン王国へ向かわせるウシの悪魔は怪力を持つ悪魔です。人間の力などウシの悪魔に到底及びません。大魔法使いのサンドロ大臣がいない今、ジャポニカン王国では誰も牛の悪魔を止められますまい。しかも千匹のモンスターを率いさせておりますゆえ、わが教団の勝ちですな。はっはっはっ、はーっはっはっはっ」

 信者が伝令に来る。

「申し上げます。モミアゲ一味がツチノコ盆地へ進軍しています」

「よし、われわれも準備をするぞ。皆を集めろ」号令するウマシカ。

「はっ」信者。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る