第16話 ビッグ・ニュース!

 コニタン一行は、みんなスッキリしない気持ちを抱えたまま、3時間ほど歩いてようやくタカツチの街までたどり着いた。高い壁が数キロにもわたって横に伸びている。もう日が暮れ始めているので、壁の端の方はよく見えないが、大きな街である。一行は門番に門を開けてもらい、街の中へ入った。とりあえず宿を見つけて、体力を回復させることにした。


 コケコッコーー!

 到着時は暗くて気づかなかったが、巨大でとても賑わいのある街であることがわかった。

「おーっ、でかい街だな」驚くすぺるん。

「人おおおおおおおお!」

「やかましい、黙れ!」すぺるんはコニタンをどついた。

「都会ですね」ハリー。

「ええ、そうですわね。ジャポニカン王国でもここまで大きな街はないですね」かおりん。

「……」無言の金。

 食料の調達や、武器と防具の保守点検、情報収集のために街を歩く一行。モミアゲがナウマン教団を追い出したおかげで、旧土の里王国は昔のように平穏を保つことができていることが、わかった。モミアゲがナウマン教団からこの国を解放したのだ。モミアゲが悪人ではないとわかったので、みんなは一応安堵した。ただ、すぺるんは少し複雑な気持ちのようだ。

 一行は昼食時に落ち合う約束をして、それぞれ用事を済ませに行く。コニタンは先に待ち合わせ場所へ行き、人の多さにびっくりして、その後、気絶。すぺるんは武器屋でガントレットの修理・点検をしてもらい、その後、ナンパしに行く。ハリーは服屋でマントを新調し、その後、手品の店へ。金はイケイケギャルたちと酒場で豪遊し、その後、一文無しに。かおりんは道具屋で薬草などを購入し、その後、待ち合わせ場所へ。

 落ち合う場所は街の中心にある広場だ。すぺるんと金が二人そろって最後にやって来た。

「おい、筋肉バカ、顔が腫れてないか?」とハリー。

「ナンパしてたら、痴漢と間違えられて引っ叩かれたんだよ」

「汚れめ」

「やかましい!」

「ひいいいい!」

 広場では号外が配られているようで、いくつか人だかりができている。それと関係があるのか、人々は何やら話し込んでいるようだ。どうも共通の話題のように一行には感じられた。こっちで井戸端会議、あっちでも井戸端会議、店々では客と店主が談じているし、通りや酒場で男たちが談じている。

「おい、モミアゲがナウマン教と対決するんだって!」

「モミアゲの飼ってたペットのカピバラがナウマン教に捕獲されたらしいぜ」

「じゃあ、モミアゲはペットを取り返すためにナウマン教にケンカを売ったのか」

「もしモミアゲが負けたら、この街はまたナウマン教に支配されるぞ」

「マジョリンヌは助けに来てくれないのか」

「マジョリンヌとモミアゲは仲が悪い。マゲ髪なら助けに来てくれるかもしれんぞ」

 至る所で、モミアゲがどうのこうの、ナウマン教がどうのこうのと聞こえてくる。街中がざわざわしているのだ。

「なんか騒がしくねえか」すぺるん。

 通りを歩きながら、ハリーが目についた人に話しかける。

「ちょっとすみません。新聞見せていただいてもよろしいですか?」

「ああ、どうぞ、差し上げますよ」

 ハリーはもらった新聞の一面を読む。

「ふむふむ、なになに」

 すぐに、短気なすぺるんが新聞を奪い取って読みだす。

「おい、貸せ。えーっと、なになに。おい、この字なんて読むんだ?」

「読めないんだったら、他人から取るな、筋肉バカが」

「お前がもったいぶってるからだろが!」

「ひいいいいいいい!」

 お決まりの流れがあって、かおりんが止めに入る。

「やめなさい! まったく、ちょっと貸して下さい。ふむふむ、なるほど。大変なことが起きますよ。モミアゲがナウマン教団と戦うらしいです」

「おい、すげえじゃねえか。俺らが戦わなくても、モミアゲがナウマン教をぶっ潰してくれるかもしれないぜ」興奮するすぺるん。

 金も驚きを隠せない様子だ、相変わらず無言であるが。かおりんが続ける。

「世界最強と言われてきたモミアゲが、ナウマン教団と直接対決するんです。これはただ事ではないですよ」

「師匠、私たちも行きましょう」

「ええ、もちろんです」

「おい、いつどこで決闘があるんだよ」すぺるん。

「二日後、場所はツチノコ盆地ですね。地図によると、土の里と火の丘のちょうど境にあります。ここから西に30キロくらいのところみたいですね」

「行きたくないいいいいいいい!」

「やかましい、お前も行くんだ!」

「皆さん、行きましょう」

 一行は、モミアゲ一味とナウマン教団との戦いを見るために、ツチノコ盆地へと向かう。

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