第15話 疑心暗鬼のコニタン一行

 かおりんは、アホ雉とハリーが一緒に話をしているところを見たことを、ハリーに伝えた。

「見間違いですよ、師匠」

「いいえ、そんなはずはありません。私ははっきりと見たんです」

「きっと見間違えたんですよ」

「ちゃんと認めて、はっきりと言ってください。アホ雉は生きているんですね。あなたとの関係は?」

 詰め寄るかおりん。たじろぐハリー。気まずい間が空くが、聞き覚えのある叫び声がかき消す。

「ひいいいいいいいい!」

「待てよ、こら! あれ、お前ら、良かった、合流できた」

 いい加減に走ってきたのだろうが、コニタンとすぺるんはハリーとかおりんと落ち合うことができた。運のいい奴らだ。

「何だ、お前たちか」冷たいハリー。

「何だとは何だ!」怒るすぺるん。

「うまく合流できて、良かったです」驚くかおりん。

「おーーー疲れた」すぺるん。

「それより、ちょっと聞いて下さいよ、皆さん――」

 かおりんはアホ雉のことを皆に伝えようとするが、意外な人物がひょっこりとやって来て話を止める。

「おうっ、ちょっくらごめんよ」

「あー、金さん」とハリー。

「何だ和服野郎、タイミング良すぎじゃねえか?」

「すぺるんさん、和服野郎とは、失礼ですねい」

「金さんも、良かった。これで全員揃いましたね」

 安心するかおりん、そして皆に伝えようとする。

「ちょっと、皆さん聞いて下さい」

「いやあ別に聞かなくても――」ハリー。

「何だよ、俺も聞いてほしいことがあんだがよ」すぺるん。

「ええ、聞きましょう」ハリー。

 かおりんはハリーの顔を見する。

「ひいいいいい!」

「うっせえ! 実はよ、俺ら二人、ゴータマ神殿の聖騎士と二人の神官に偶然出くわしたんだよ。で、その後、4Kのモミアゲとマジョリンヌに攻撃されたんだよ」

「ゴータマ神殿の方々ですか。それはすごいです。でも、4Kに攻撃されたって!?」驚くかおりん。

「おう、危なくやられかけたけどよ、マゲ髪が来て助けてくれたんだよ」

「えっ、どういうことですか? モミアゲとマジョリンヌに攻撃されて、マゲ髪が助けてくれた?」

「おう、そうなんだ」

「なぜ? なぜ、あなたたちがモミアゲとマジョリンヌに襲われたんですか?」

「おう、それがよ、俺がコニタンを追いかけて行ったら、マジョリンヌと遭遇して、慌てて逃げて藪の中に隠れてたら、今度はそこにモミアゲが来たんだ。そしたら突然コニタンが悲鳴上げやがるから、二人に見つかっちまってよ」

「で、マゲ髪はなぜ来たんだ?」ハリー。

「おう、モミアゲとマジョリンヌに半殺しにされかかってたら、マゲ髪が来て、俺ら二人、助かったんだ」

「何で?」ハリー。

「何でって、マゲ髪が、モミアゲとマジョリンヌを追い払ってくれたんだよ」

「どうしてですか?」かおりん。

「いや、それはわからねえな。何でもよ、マゲ髪のパーティーではナウマン教を滅ぼすことができない理由があったとか、それと、ようやく見つけたとか、なんとか……」

「……意味深ですね……」

「すごく強いパーティーだったのに、ナウマン教を滅ぼすことができない理由って、そんなのあったのですか。師匠」ハリー。

「わかりません。んー、『ようやく見つけた』か。何を見つけたのかしら?」

「わからねえ。で、おい、お前は、どこに行ってたんだよ」

 金はすぺるんからお前呼ばわりされてとして答える。

「へっ、あっしには関係のねえことで」

「おい、お前、怪しくねえか。何で無職の人間がパーティーにいるんだ?」

 若干キレ気味のすぺるんに対して、かおりんが怒る。

「ちょっと、すぺるんさん! それは職業差別ですよ!」

「おっしゃる通りです」同調するハリー。

 すぺるんは、ハリーとかおりんに尋ねる。

「お前らは二人で行動してたのか?」

「あ、いえ――」

 否定しようとするかおりんの返事にハリーが割って入ってくる。

「ええそうです! 私と師匠は行動を共にしていました。なので、単独行動していた金さん、あなた怪しいですね」

「おう、そうだ」釣られるすぺるん。

「へっ、他人を疑ってかかる人間が一番怪しいんじゃねえですかい?」

「そうだ、そうだ」ハリー。

「待て! ハリー、お前どっちの味方だ!」すぺるん。

「すぺるんさん、4Kのマゲ髪は、どうしてあなたを助けたんですか?」

「いやだから、知らねえよ。ひょっとしたら、コニタンを助けたかったのかもしれねえのかな……」

「それはないだろ」きっぱり言い切ったハリー。

「コニタン、実はお前が一番怪しんじゃねえのか、おい! 五人目はお前だろ!」

 すぺるんはコニタンの胸倉むなぐらをつかんで凄んだ。

「暴力反対いいいいいいい!」

「落ち着いて下さい!」止めるかおりん。

「そうだ、落ち着け、筋肉バカ」

「仲間割れしていても、モンスターと戦う上でいいことありませんよ」

「その通りです、師匠」

「さあ、行きましょう。旧土の里王国の最大都市タカツチまで、あと少しですよ」

「けっ! だが、忘れんなよ、誰かがナウマン教のスパイかもしれないってことをよ」

 すぺるんはそう言うと、みんなの顔を順番にじっくりと見て、歩き出した。

 アホ雉が生きていること、マゲ髪が助けてくれたこと、金がいつも個人行動を取ること、いろんな疑念を払拭できずに、一行はさらに進む。

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