第12話 人工悪魔の研究
ナウマン教団の本拠地の地下深く、広い空間があり、そこを囲むように大小さまざまないくつもの牢獄がつくられてある。全て岩肌むき出しの壁で、粗末なつくりの牢獄だ。鉄格子だけは強固なつくりになっているが。大きなものは数千人を収容できるほどの広さがある。一人用の狭い牢獄はたくさん並んで設置されている。
そこへ、ドクターが信者二人を引き連れてやって来る。
「んふふふふ」
1と書かれた牢の前で足を止め、不気味な笑みを浮かべるドクター。それを見て牢の中の男が声を張り上げる。
「貴様、よくも俺の家族を! 殺してやる! 殺してやる!」
男は鉄格子を強く掴み、ドクターを睨みつけている。ドクターは嬉しそうに男に近づく。
「いいぞ、憎め、憎むんだ! はははははは! はーっはははははは!」
ドクターは大声で笑いながら隣の2と書かれた牢へ進む。牢の中の男が突進してくる。男は鉄格子の隙間から腕を伸ばしてドクターに掴みかかろうとするが、信者に棒で叩かれ、骨の折れる音がした。しかし男は痛みを物ともせずにドクターに対して怒りをぶちまける。
「お前……俺の妻と子を……許さんぞ! お前、お前だけは、絶対に許さんぞ!」
「素晴らしい。私のことが憎いか。そうだ、憎いだろ。憎め、私を殺しに来い。ふははははは!」
ドクターは高らかに笑い続ける。両方の牢の男たちは叫び続けている。ドクターは満足そうな顔をしている。やがてその叫び声も小さくなっていく。ドクターはさらに隣の3の牢の前に進む。だが、静かなままだ。信者が鉄格子を蹴って、「おい!」と中の囚人に声をかけた。すると、女の声で何やらぼそぼそと聞こえてくる。
「……のに……たった一人の家族だったのに……」
「おい! 憎しみが足らないんじゃないか!」ドクターが牢の中の女に怒鳴った。
「……んで……よくも弟を……許さない……」
「憎しみが足らないぞ! 家族を殺されたんだろ! 俺だよ、お前の家族を殺したのは。だからよ、もっと憎め、ほら、もっと憎むんだよ!」
ドクターに言われ、女は急激な興奮状態になって叫ぶ。
「許さない! 許さない! 殺してやる! 殺してやる!」
女は叫びながら鉄格子に向かってきて、金切り声を上げ続ける。それを見てドクターは狂喜する。
「はははははは! そうだ、怒りだ! もっと怒れ! この俺を憎め! 憎めー!」
この女の叫び声を聞いて、先ほどの男たちも叫び声を上げる。ドクターたちは、牢2の前へ戻り、じっと中の男を見る。次に、牢1の前で同じことを繰り返す。
「畜生! ここから出せ! 出せ!」
牢1の男がそう叫んだので、嬉しそうにドクターは話しかける。
「ああ、出してやろう。それから、この、悪魔から採取した遺伝子情報をお前にインプットしてやる。これをインプットすれば、お前は強い悪魔になれるぞ。うひゃひゃひゃー! お前らみんな、悪魔に改造してやる! 人工の悪魔の誕生だぞ! この天才科学者の俺様のおかげで、お前ら、悪魔になれるんだ! ははははは! まずはお前からだ。おい、こいつを出してオペ室へ連れてこい」
信者二人は「はっ」と返事をして、牢を開けて中の男を連れ出した。
「離せー! くそー!」
「そうだ、怒れ! ふはははははは!」
「くそー! くそー!」
男は
牢2の男も大声を上げている。牢3の女は泣き叫んでいる。それらの声を聞いているドクターの顔は、笑っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます