第31話 黄光
エリーナの出立を見送ったアリシリアは野営地があったこの場所を見渡す。
簡易的であるが建てられた建物は壊され、まだそこら辺に血が飛び散っている。
やはり、このような結果になりましたか
少し違うのは彼女が生き残ったということ
冒険者とも闘ったようですし、本当に先が見えない
彼女には今後も注視する必要がありそうですね、楽しみです
そして、今回の襲撃の件は魔王ルシファーの仕業でしょうが、これが予定通りなら、本元は別にいる
次の計画はその本元を……
アリシリアの前に黒い渦が現れ、そこに向かってアリシリアは歩き始めた。
エリーナと冒険者が闘った場面から魔族同士の戦闘の様子を上空から見ていたリリとルルであったが、アリシリアの姿が見えるとその場合から退却を始めていた。
「とりあえず、アリシリア様がついているならもんだいないかな?」
「……先が見えないのはアリシリア様も同じはず」
「それでもなにかさくはあるでしょ!」
「……うーん。どうだろう」
「それにしてもふしぎなこだったなー」
「……不思議?」
「なんていうか、いままでみてきたイレギュラーとはちがうかんじ」
と会話をしながら、リリとルルは人間が魔族から奪い、陣取るエン・ヘリアルへ到着する。
「よし、もどってきたね!」
「……冒険者の事を報告する」
「でも、あれってどこのギルドのひとたちだろ」
「……何でもいい。その辺の冒険者に伝えれば大丈夫」
「おっけー」
言葉通りにその辺の冒険者に伝えたところ、最初は信じてもらえなかった。
しかし、現在、行方がわからない冒険者と情報が一致する事から信憑性が増した為、ある場所に案内された。
エン・ヘリアル内にある大きな城の中に案内されたリリとルルはギルド黄光(きこう)のリーダーと出会う事になった。
「これは見ない顔だね」
そう呟くのが黄光のリーダーである。
「まぁいい。俺のところの馬鹿共の行方を知っているそうじゃない?」
一人称で俺と言っているが、黄光のリーダーは女であり、この場にはリリとルルを抜かせば、女は黄光のリーダーだけであった。
見た目は何もかもがでかく筋肉だらけである。
その巨体の圧力からギルドのメンバーであろう男達は身を縮めていた。
「しってるよーしんじゃった!」
何事もないようにリリがケロっと話す。
「死?はははっ!いくら馬鹿で何かやらかしたとしても死ぬほどやわじゃないね」
「……死体ならここから北西の方へ行けば、ある」
「北西?ほう?確かまだ未踏の地であったはず、そんな所に二人だけで行ったのかい?」
占領したとはいえ、ここは魔族側の領地内であり、周りには魔族が彷徨いていてもおかしくない。
そんな中を未踏の方へ行っていた二人を黄光のリーダーは怪しむ。
「そうだよ!」
これもリリがケロっと答えた。
リリの返答を聞いた黄光のリーダーは側に置いてあった大きな矛を手に取るとリリにその矛を振った。
いきなりの出来事でもリリは体を返し、矛を避ける。
避けられた事によって、上から振り下ろされた矛は地面を叩き割る。
「避けるのか!持っている剣を構えろ!」
いきなりの戦闘に周りは慌てふためく。
リーダー!リーダー!と声が聞こえてくるが、聞く耳を持たない。
「実力を確かめてやる!」
「えーけんをかまえたら、けんがおれちゃうでしょ!」
リリは戦う意志はない素振りをする。
「……私達には他にする事がある。王から頼まれている事がある」
王という言葉を聞き、矛を構えるのをやめる。
「ラルの使いかい。なら、行きな!次に会った時は手合わせしてもらうよ!」
そう言うと、矛から手を離し、座った。
立ち去る二人の後ろ姿を睨め付けるように見ていると、側にいる男が恐る恐る声をかける。
「あ、あの……名を伝えなくてよかったのでしょうか?初対面ですよね?」
「俺が女を嫌いなのを知っているわよね?」
「あ……はい」
「なら、女に名を名乗る義理はないさ。特に強い女はさらに嫌いさ」
脳裏にはスティーシャ公国の英雄の姿が思い浮かんでいた。
大きな城から出たリリとルルは人間の国がある方角に向けて歩いていた。
「ほんとにきりかかってくるとはーおもわず、はんげきするところだったよー」
「……女性を毛嫌いしている。過去に色々とあったみたい」
「いや、それだけじゃないよ!あれはたたかうのがすきなかんじだって!」
しばらく歩いていた二人だったが、その場に立ち止まる。
「……この辺なら」
周り確認し終えると、リリとルルの前に黒い渦が現れる。
「え、それでいどうするの?」
「……これが一番。それに向こうはもう着いている頃」
「うーん。あのさ……いっしょにいかなきゃだめ?」
「……何言ってるの?当たり前」
「うへーあまりあいたくないだよね……」
「……ほら、早く」
ルルは先に黒い渦の中に入って行く。
渋々、その後をリリが続いた。
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