第50話 ギルド【リザード・アイ】


キコス国、キコス共和国とも呼ばれる。共和制国家。島は大陸が囲いコの字のような地理をしている。

北西の大部分はオリンシア帝国、北部の一部に旧イオブ含むいくつかの諸国がある、東北部から東にかけてアシュール帝国などいくつかの大国が乱立しており、大国ながら不安定な国家群がある。そして南には神聖アイプタハ王国、キコス国はそんな大国の間に存在する島国であったために不安定な政情が長らく続いていたが現在は比較的安定している。



クラトス達はルアン号から降りてキコス国降り立つ。


「へぇ、ここがキコス国、なんだか良さそうな場所ね」


ナシアーデは笑顔を浮かべ、辺りを見回す。


「キコス国の案内人は誰だ?」


クラトスは人が多くてわからない。


「あの娘、お前の事を把握している魔導士の一人でもあるぜ」


アストリオンは指を指す場所を見てみると紫色のゴシックドレスを着た少女がいる。


「あんな子供が......」


アリス、ラナのように魔導士として優秀ならば、活躍できる、知っていたことだが、

非正規として長かったクラトスにはやはり新鮮だった。

「子供なのは不満か?」

「いや、非正規で子供の魔導士はさすがに見たことがなかったからな、少し驚いたというか、子供の内から活躍できるなんてすごいなと」

「ヒューシィは才能ある魔導士、13歳でB級魔導士......将来有望だ」


ヒューシィは気が付いたのかこちらに向かい歩いてくる。


「私はD級だけど、子供に負けてるのね......」

「気にすんなよ、切磋琢磨して実力を上げて行けばいいだけだ」


アストリオンはナシアーデそう言ってヒューシィに向かい歩いていく。それについていくようにクラトスとナシアーデも歩く。


「ヒューシィ、連れてきたぞ」

「アストリオン、この私を待たせるだなんて良い度胸ね」


ヒューシィはアストリオンに近づき怒り出す。


「別にお前を怒らせても勝てるからな、ほら名前を聞いてやれ」

「聞かなくても知ってるわよ」

「......そういうわけにもいかんだろう」

「いいのよ、ほら、早く行きましょ」


アストリオンは小さくクラトス達に話す

「......こういう奴だ、すごく面倒くさい」

「......はい」

大体を理解する。


「......何か言った?」


ヒューシィが近づくと「なんでもない」とはぐらかしながら、アストリオンは後ろへ下がる。


「とにかく、後の事は【リザード・アイ】の魔導士に聞け、俺はここで」

「あっありがとう、アストリオン」


クラトスとナシアーデはお礼を言うとアストリオンは歯を見せ笑い、そのまま船に戻っていった。


アストリオンが見えなくなるとヒューシィはナシアーデに向かい合い。

「あんたがD級魔導士のナシアーデ=パナケね?」

「あっはい......」

ナシアーデに指を指しながら言う。


「そして......」


クラトスと向かいあう。


「一応E級魔導士のクラトス=ドラレウスね?」

「そうだが......」

ヒューシィは確認をすると、最後に自己紹介を始める。


「ヒューシィ=スレマよ、さっさと行きましょ」


ヒューシィはさっさと自己紹介をして、一人歩いていく、クラトスとナシアーデは急いでついていく。


「ヒューシィさんはどうしてそんなに急いでいるの?」

「急いでいるわけじゃないわ、あんたたちと私はね時間の価値が違うの、魔導士としての格が違うのよ」

「格......」

「そう格よ、私のように優秀な......」


ヒューシィはそれを言おうとした時、ハッと目を開きうつむいてしまう、ナシアーデをそれを不思議そうに見つめていた。


「いっいえ......そう......だから強くなるのよ、もっと、もっと!その為の時間を無駄にはしたくないのよ!」

「そっそうなんですか......」


ナシアーデは反応に困りそのままクラトスに話をかける。


「こっ向上心のある魔導士ね、クラトスと馬が合うんじゃないかしら......」

「どうだか」


目的地である、【リザード・アイ】にヒューシィに連れられ向かうのだった。






ある程度歩いていくと、首都ラエレドに入っていく、ナシアーデは周りを見渡していると不思議と疑問が浮かんだ。


「えっと、ヒューシィさん?ここ、少しギルド密集しすぎてない?」

「あんたもそう思う?」

「(確かに、町の規模に反して少し多いな......いくら首都とはいえ非公認ギルドならともかく、公認ギルドも3つ......)」



ギルドが密集することはほとんどない、非公認ギルド、魔導協会が基本的に関与しないで運営を行うギルドならば、可能性はあるが、魔導協会が関与する公認ギルドなら、密集することは避けるはずだ。


「あんたら、気をつけてよ、ここらのギルド仲悪いから」

「仲が悪いって、公認ギルド同士でも?」

「そう、ここでは協力なんてしないから、お互いが敵ね」


この先不安になってきた、ギルド同士仲が悪いどころか、敵とまで呼称するだなんて、普通ではない。


「敵って」

「まだ殺害事件とか起きてないから心配しないでよ」

「まだって」

「喧嘩よ喧嘩、まだ」


何かと不安の残る言い方をするヒューシィに困惑していく、辺りを見ると魔導士なのだろうか、敵意のようなモノを時々感じてくる。


「あれはギルド【ロックバード】の一味ね」

「【ロックバード】?」

「非公認ギルド【ロックバード】、悪事から足を洗ったはいいけれど、どうにもならなかった奴らが寄せ集まってできたギルドよ、悪事から足を当たったとはいえ、まぁ、信用できないから話さない方がいいわね」

「悪事から足洗ったのにか?」


ヒューシィはフッと笑う。


「当たり前よね、あいつらは素行が普段から悪いもの、ただバックに金持ち魔導士がいるから維持できているだけのギルド」

「......」

「ギルドのバックにいる魔導士もここら辺では重要ね、例え本人の魔導士が闇ギルドの気でなくても、バックの魔導士が闇ギルドと繋がってたなんて、ザラよ」

「夜一人で出歩くのは危険だな」


下手をしたら襲撃される可能性がある、治安そのものは悪いわけではなさそうだが。


「気を付けよう」


自分に言い聞かせる。オリンシア帝国自体、他の国に比べて繁栄している、それにアーシアは富裕層が多い地区で治安が良い為慣れてしまっている。だから、ここは危険であると意識するように心掛ける。


「ナシアも油断するなよ?」

「わかってるわよ」


ナシアーデと話しているとヒューシィは指を指す。


「着いたわよ、あれがギルド【リザード・アイ】」


ヒューシィが指を指す先、豪華な建物――


――のすぐ横にある開いてるかすらわからないボロい4階建ての建物


「嘘」「......」


ナシアーデは思わず口をこぼし、クラトスも言葉をなくす。


「いえ、本当、私も最近来たけど、相当ひどいわ」


ヒューシィはそのままギルドに入っていくため、クラトス達も追いかけていく。






カウンター席に一人魔導士が座り、二人の魔導士が席に座る魔導士と話し合っていた。


「......今日も達成できた依頼は2つだけ......か......」


マフラーを深くして、口元を隠した水色髪の男はマスターと言われた緑髪の屈強な体つきした男は笑顔で言う。

「いやぁ、まいったな」


マスターの隣でオレンジ髪のおかっぱの少女が話す。


「マスター、ヒューシィもやる気なかったです、もう魔導協会からも見捨てられてるのかもしれませんよ?」

「安心しろ、今日は新人が魔導協会より二人も送られてくるんだぞ?」


マフラー姿の魔導士は不安げに話す。


「D級とE級......俺たちが求めていたのは新戦力だぞ」


魔導士としての実力がなければ依頼は達成できない、ただでさえ余裕がないというのに、しかしギルドマスターは気にしない。


「弱かったら俺たちがサポートすればいい、良い奴だといいな」


楽観的なギルドマスターに男はやれやれといった様子だった。



ガチャ



ギルド【リザード・アイ】の扉を開ける音が聞こえる。


「ほら、新しい魔導士が来たわよ」


ヒューシィはドアを思いきり開き大きく声を出すと【リザード・アイ】の魔導士は近づいてくる。


「おっおお、ついに来たか!」






クラトスとナシアーデではギルドの中央に招かれると、ギルド【リザード・アイ】の魔導士達が集まってくる。



「君がクラトス、そしてナシアーデか、いやぁ、来てくれて嬉しいぞ」


緑髪の男は人一倍巨漢でクラトスも思わず圧倒される。


「俺はサイレオ=リポン、ギルド【リザード・アイ】のギルドマスターそして――」


ギルドマスターに言われると、他の魔導士も自己紹介を始めていく。


オレンジ髪のおかっぱ頭の少女が最初に名乗る。


「はい、私クリン=レンジィ、まだ公認魔導士ではないですけど、アストリオンさんの話ではD級相当らしいです、よろしくお願いします」


クリンはクラトスとナシアーデに笑顔で握手していく。


「はい、じゃあ、ほらスルア」

黒いマフラーで口元を隠した魔導士をクリンは腕を引っ張り催促する。


「スルア=ローンス......B級だ......」

「ちょっと変だけど......悪い人じゃないから、仲良くしてあげて?」


クリンは苦笑いを浮かべる。


「ヒューシィ......あっまたいない......」


どうやら、ヒューシィは頻繁にいなくなるようだ、クリンはあきらめて続ける。


「後は私のお兄ちゃんともう一人いるんだけど今は依頼で不在......だからこれで全部ね」

「......ここのギルド魔導士、マスター含め6人だけなのか?」

「そう、でも心配しないで?こう見えてみんな強いから!......あっ私は除く......」


クラトス、ナシアーデは困惑する、ギルドの大小あれど、魔導協会のギルドならば、当然魔導士の数も多いだろうと考えていた。


「ねぇ、マスター、クラトスもナシアーデでも、船旅で疲れてると思うから、上に案内してもいいですよね?」

「そうだな、クラトス、ナシアーデ、詳しいことは明日話そう」

「よし、さぁ、着いてきて、大丈夫、部屋は掃除してあるから!」


どうやら、クリンは【リザード・アイ】では主導して動いているようだ、スルアという魔導士にも、無理矢理動かしている。


「何か困ったことあったら、私に言ってね」


クリンはそう言いながら、上の階へ


「マスターと私とお兄ちゃんが1階、スルアとヒューシィちゃんが2階、そして貴方達が3階!ピッタリね!」

「もう一人いるんじゃないのか?」

「それは家が近くだからここには住んでないの」


内装は外観ほど悪くはないが、やはり年期の入った建物なのだろう、ところどころ修復した後が見せる、4階建ての3階、2部屋ずつ、元々魔導士の住み込みは少なかったのだろう。


「さぁ、着きました」


どの部屋も似たような内装、別に取り合いをするわけでもなく、自然と決まった。


「クラトスとナシアーデ、ふふ、嬉しいわ、新しい魔導士が増えて!」


クリンは笑顔で言う。


「やっぱり昔はもっといたのか?」

「私も別に古参ではないけれど、来る魔導士より去る魔導士が多いわ」


寂しげに語るとハッとまた笑顔で話す。


「他のギルドからの推薦なんでしょう?、時間があったらその時のお話聞かせてね?」


そういってクリンはご機嫌に階段を降って行った。


「ナシア、明日から頑張ろうか」

「えぇ、そうね......」


こうして、船旅の疲れを癒すため、部屋に入っていく、

本格的な活動のため、束の間の休息であった。



◆◇◆◇



アストリオンはルアン号に乗りながら、静かにキコス国の影を見る。


「闇ギルド【大地の牙】......なぜクラトスとナシアーデが選ばれた?」


考える、闇ギルドの破壊は新人がやるものじゃない、仮に実績があっても、普通は実力者を同伴させるだろう。


「サイレオならば先輩魔導士として適任とはいえ、奴はギルドマスター、そう易々とギルドを後にはできない」


ギルド同士が密集し、敵対している中、ギルドマスターがいなくなれば、どうなるか


「......やはり、誰かを向かわせるべきか......」


アストリオンは一瞬考えるが


「だめだ、それをしたら、クラトスの今後が不安定になる」


アストリオンならば、実力ある魔導師を送ることもできるだろう、しかしそれをしたら、クラトスが不正をしていなくとも

『クラトス=ドラレウスは本来ならば試験に落ちていた魔導師だが、特別扱いされて、公認魔導師になれた、卑怯な魔導師』

それではダメなのだ。


クラトス=ドラレウスは試験に落ちたのは事故であり、正真正銘に実力ある魔導師だと他の魔導師に納得させるためにも余計な手出しはできない。


「あーあ、俺が甘すぎるだけか」


空を見上げる。


「知り合いの親族を贔屓してるとか、言われるよな、こりゃ」


アストリオンは独り言をつぶやいていると、ルアン号の乗船員であろう、一人が話をかけてきた。


「アストリオンさんですね?」

「......そうだが」

「魔導協会のゲライト=ダダス様からお電話が」

「......わかった、すぐ行く」




電話を取りにアストリオンは船の中に入っていき、電話を取る、そして黄金の魔物達との戦闘についての報告を伝えた。


「......話は変わるが、クラトスやナシアーデはどうかね?」


思い出す黄金の魔物戦でのクラトスの戦闘を

「......クラトスは、まぁ、評価できる、危うさも感じるが、問題ない、ただナシアーデに関しては......」

ナシアーデの戦いは【黄金の会】の魔導士を取り押さえた事、そして書面でしかその実力を知らない。

しかし、明らかにクラトスより実力は劣っていたのだ。


「クラトスとナシアーデの依頼に何も思わないのか?」

「『どうして新米魔導士とナシアーデをペアで危険な依頼を受けさせたのかということかね?」

「......なぜあんな依頼が認められた、上位の魔導士でも死ぬ依頼だろうが、アレは」


アストリオンはゲライトに圧をかける。


「とあるS級魔導士サマの命令よ『例外的救済処置としてクラトスに同行する者は、ナシアーデ=パナケのみ、それ以外認めない』とね、いやだネー、残酷な魔導士というのは」

「......クラトスはナシアーデを守りながら戦っていけるのかを見定めるつもりか......」

「だがクラトスが依頼を達成できたなら、誰も文句は言えない、今は我慢だねぇ、アストリオン」

「......」

「アストリオン」

「......あぁ」

「ふっ、大丈夫だ私は彼らの真の実力はよく知っている、君よりもね」

「何かあるのか?」

「なんだろうネー」


ゲライトは意味あり気に言うとそのまま電話を切るのだった。



「あのジジィ......なにか隠してるのか?」


ゲライトの意味ありげな言葉にただイラつくことしかできなかった。



◆◇◆◇


キコス国の首都ラエレドのある屋敷に住まうのは非公認魔導士ゾエレ=ローズ。

キコスに住まうものでその名を知らぬ者はいない、公認ギルドであっても強くは出れず、非公認であれば容易く消せる、それがゾエレ=ローズ、キコス国内の魔導士を牛耳る者。


「(......)」


豪華絢爛な内装、メイドに連れられている者は無精髭に黒髪の男、魔導士カリヤ=ハシュル、旧イオブ地区はキコス国より北西方面での仕事中に呼ばれ渋々ルアン号に乗りキコス国にやってきたのだ。


「(何用なんだ)」


悪事からは足を洗った魔導士が集まる非公認ギルド【ロックバード】、拠点をキコス国に置いている。このギルドは後ろめたい経歴を持つ者も多く、その為周りからは毛嫌いされていた、ゾエレはそういった彼らを保護してくれているために【ロックバード】の魔導士達は頭が上がらないが、それを屈辱的に思うものもいる。


「(優雅に茶なんて飲んでやがる......)」


豪華絢爛な屋敷の庭に一人椅子に座る金髪にエメラルドの瞳をした少女に警戒しながらメイドについていく。


「よく来てくれましたね」

「ゾエレ、依頼か?」


カリヤは切り出す。


「そんなに急かさなくても、良いではないですか、紅茶、貴方の為に入れたのですよ?」

「すまないが、そういう気分ではない、ゾエレの元に行くためにわざわざ依頼の代わりの友人に頼む羽目になってね、今後はこういった事はやめていただきたい」


カリヤは少々威圧するものの、ゾエレは動じない。


「えぇ、そうですね気を付けます」


本当にそう思っているのかカリヤは内心そう思っている中、ゾエレは続ける。


「それで、わざわざ、俺を呼んだ理由は?」

「ギルド【リザード・アイ】の魔導士クラトス=ドラレウスを連れてきてほしいのです、あぁあとナシアーデ=パナケ?という方も気になりますからお願いします」

「【リザード・アイ】......腐っても公認ギルドだぞ?それにもう悪事は......」

「いえいえ誘拐ではないのです、ただこちらへ出向くように仕向けていただきたいのです」


何とも不思議な依頼だ、誘拐でもなく、出向くように仕向ける。


「リテュリス兄様にはわがまま言ったけれど、フフフ、言ってみるものですね、本当に来てくださった......」

「......リテュルス......」


リテュルス=ローズ、S級魔導士として魔導協会に絶対的な影響力を持つ魔導士の一人、彼女ゾエレがキコス国で影響力を行使できているのは兄の力もあるからだ。


「だが、そんな事なら【ロックバード】の連中でもできただろ?」

「ギルドマスターならともかく、他の方はいけません」

「なぜだ?」

「彼らはいまだに私を舐めているのです、まさか仲間が私に戦いを挑むなどしたら、大変でしょう?」

「......」


その通りだった、保護者として、それなりに恩を感じるものいるが、都合の良いように、時には店の場所取り、時には犬の世話、挙げればキリがない、もっと酷いのもあった、それを屈辱的に感じる者は当然にいた。しかし、ゾエレ=ローズこそ【ロックバード】の真の支配者である現状、喧嘩を売ってはならない。


「あぁ、そうだな、ギルドマスターを除けば、俺くらいしかいないのか、自制心があるのは......」

「えぇ、お願いしますね、カリヤ=ハシュル」


満面の笑みを浮かべてカリヤにお願いする、そんなゾエレが恐ろしく感じてそそくさと屋敷を出ていくのだった。



◆◇◆◇


「クラトスぅ、お客さんだよ!」

「うっ......うん?」


聞き覚えのある声、クリンがドア越しにドンドンと叩いてくる。


「(客?)今行く」


何事か、クラトスは急ぎ下の階へ走っていくと一人カウンター席で飲み物を飲んでいる男、無精髭を生やした男が座っていた。


「お前がクラトス=ドラレウスか?」

「そうだ......俺がクラトス=ドラレウス......E級魔導士......」

「なるほどな......サイレオ、こいつらを借りるぞ」

「まっ待て待て、いきなりすぎて何が何だかわからない!」


疑問に思って聞いたがそれをサイレオが代わりに答える。


「クラトス、さっきナシアーデにも説明したんだが......」


サイレオはクラトスに説明する、キコス国は数多のギルドが跋扈する状態であり、立場の弱い非公認ギルドには強力な魔導士や権力者がバックにいることが多い。


「その中でもゾエレ=ローズ、キコス国にある多数のギルドのバックに君臨する魔導士が彼女だ、近々挨拶するつもりだったんだが、ちょうどいいな、クラトスにナシアーデ行ってこい」

「えっえー、ちょっと、さすがに無警戒過ぎますよ」

「だが、ゾエレが指名してきた以上、断るわけにはいかん、それにゾエレは殺しは好まないお人だ、大丈夫だクリン」

「そうですけどぉ」


ここではバックに誰がいるのか、という方が重要なようだ、なんとなく理解してきた、そしてその名前には聞き覚えがあった。


「ゾエレ......」

「なんだ、やっぱり知り合いか?」

「いっ一応......」


カリヤもこういった事は初めてだった、恐らくは顔見知りなのだろうとは思っていた。


「どんな人なの?」


ナシアーデはクラトスとゾエレという人どのような交流をしていたのか興味がわいていた。しかしクラトスにとっては大変に困った事態だった何せ。

「(ゾエレ=ローズって......あの娘だよな......)」

ゾエレこそが自身に求婚してきた相手だったからだ、ナシアーデの問いに、頭の中はフル回転、今は上手く受け流す。


「あー、別に大して話した訳ではなくて、あくまで依頼主としての関係だ、ホント」

「......そう、本当にそうなのね?」

「ソウデス」


ナシアーデ何か疑わしい気持ちはあるが、とくに追及せずにカリヤに話しかける。


「えっと、今からゾエレ?の所に向かうのね?」

「あぁ、そうだ、早く行こうか」

「じゃあ、マスター行ってくる」



カリヤはサイレオに目を向けて、ギルドを出ていくと、クラトス達はサイレオに軽く挨拶をして、ゾエレの元に向かうのだった。



続く――

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