第42話 ネレイアイVSアクロテス
「っここは、私は気絶していたのか!」
アクロテスに飛ばされたグラデルは目を覚ます。
「っ......みんなが戦っている中......情けない」
グラデルは何とか立ち上がる。
「しかし......ここはどこだ、アクロテスの所からだいぶ投げ飛ばされたのかしれん......」
森を歩く。
「しかし、アクロテス恐ろしい魔導士だ、魔法も強力だが、肉弾戦も見た目に反し強い」
森を歩き回っていると開けた場所に出てきた。
「ここは―っ!?」
グラデルは開けた場所に人がいるのを見つける、それは見慣れた人影だった。
「グラデル......貴方......」
ユノ=ノエアだ。
「ユノ......」
「使い魔シヤ」
ユノの影からヒト型の黒い影が現れる。
「攻撃しなさい」
「わかりました」
シヤはグラデルに向かうと刃の形状をして攻撃を仕掛ける。
「少し、急ではないか!」
「もう話すことはない、そう前に言ったはずです」
「『シャイニング・ボム』」
グラデルはシヤの周りに光の玉まき散らす。
「『シャイニング・アロー』」
シヤは玉を避ける形で動くがその動きを読みグラデルは光の矢をシヤに狙う。
バァアアンッ!
光の矢と爆弾の炸裂にシヤは消失する。
「......さすがに下級の使い魔は倒せますよね」
「私も遊んでいたわけではないからな!」
ユノは槍を持つ。
「その槍は......」
「えぇ魔道具『ザーンデント』......イオブ国では国宝の一つだったもの」
「......」
ユノは『ザーンデント』を大事そうにさする。
「アクロテスは『デモンゲート』に試してみたい事があったみたい、私はこれを個人的に収集して、そしてアクロテスはこれをえらく気に入った、
『これを使おう、何気にするな、僕の考えでは『デモンゲート』は間違いなく発動する、これを使う理由はね、未知の可能性を見てみたいからだよ』
なんて言ってね」
ユノは町を見下ろす。
「......悔しいけれど、貴方は私より強い......きっと魔導協会では上位になれるんでしょうね」
「......降参するのか?」
「まさか......ここでやめたらイオブの同志に恨まれます、イオブの誇り、私が守って見せますよ」
グラデルとユノは対峙した。
◆◇◆◇
アーシアの町で魔導士達が紫スライムと攻防戦を繰り広げている中
「何がどうなってやがる......話と違う!」
町の中に紛れ込んでいたイオブの4人の魔導士は混乱し路地裏で隠れて話し合っていた。
「どうしたんだ!?我々は失敗......したのか......?」
計画では『デモンゲート』が発動した後、魔導士の邪魔をするために紛れ込んでいたが、どうにも知らされていた状況とは違っていた。
「どうする?あのスライムを一緒に倒すか?」
「一体どうすれ――グッ!?」
「あっああ......」
ゴキッ
一人の魔導士は喉元を掴まれそして潰される。
「まず一人」
残りの魔導士は突然の事に困惑する。
「おっお前はっ!」
「クソ!『アイス・ブラスト』」
一人の魔導士が黒騎士に魔法を放つ――
「――」
黒騎士は氷の塊を避け――
「ひっ――」
「二人」
頭を掴み壁にたたきつける。
「クソッこうなったら......」
一人の魔導士は隠し持っていた瓶を飲もうとするが――
「させん」
「いっ!?」
黒騎士は腕にナイフを投擲して飲まれるのを防ぎ、両手に魔力を込めて刃にする。
「――ッ!」
「チッ......一つ無駄になったか......」
魔導士は瓶を落として割ってしまう。
「三人」
両手の刃で魔導士の首を両断する。
一人残った魔導士は崩れながら命乞いをする。
「ひっ......たっ助け......」
命乞いをするがどんどんと近づいてくる。
「どうか命だけは......」
「ほう?命が惜しいのか?」
「......そうです」
「お前を生かすと私にメリットがあるのか?」
命欲しさに彼は語る、仲間の潜む場所を知っている、何を目的としていたか、主犯者はユノ=ノエアであることを、アクロテスが協力していたことを。
「だっだから......」
「それだけか?」
「へ?」
魔導士の腰から瓶を奪い取る。
「3つか......最低限、これだけ手に入れられればもう良いか」
黒騎士は男の頭に右手を当てる。
「待ってください、全部話したのに!」
「既に知っていた事をお前が勝手に話しただけだ」
黒騎士は男の頭に魔力を込める。
「他の奴も同じく地獄に送ってやる、これで四人だ」
そう言う魔弾を頭に撃ち込んだ。
死体から瓶を取り出していく。
「次は――」
黒騎士は次の対象を絞り込むと町を歩いていくのだった。
◆◇◆◇
ゲライトは町の戦線を確認し、今はエルマ一人が試験場待機している。
「遅い、奴は成功しているのか!?」
エルマは苛立っていた、ゲライトが言っていた、『デモンゲート』発動を失敗させるため、ジャミング魔法を習得している魔導士......ゲライトに詳細を聞いたネレイアイはアーシアにいたその魔導士に頼み、どうにか協力させたという経緯があった。
「報告されなければ、対処のしようが......」
エルマは一人でグチグチ文句を言っている中、使い魔が現れる。
「報告だ」
現れたのはヒューシィの黒猫の使い魔だった。
「『ジャミング・マギ』により『デモンゲート』のリンクは全て破壊された」
「成功したのか!」
「だが、アクロテスは不完全なリンクで強制的に魔界の門を町と繋げた、一瞬の勢いでそれを成されてしまったようだ」
「なん......だと」
その言葉にエルマの顔は青くなる。
「よって禁忌魔法『デモンゲート』は不完全な形で発動する危険がある、これがどのようになるかはわからない」
「もっと詳しく、これは重大なことだぞ!」
エルマはすがる様に黒猫の使い魔に話す。
「ヒューシィはコンビを解消されたため、詳しい事を知ることはできない、だからその質問に答える事は難しい」
「なっきっ緊急事態だぞ!?これが失敗したら町中の人が死ぬ!なぜコンビの解消が......」
「その質問には答えない」
「なぜだ!?」
「ヒューシィからそれらに関連する質問に答える事を禁止されている」
「おっおいっ!それは、困るんだ、ヒューシィだって死ぬ可能性があるんだぞ?」
「その意見、同意するが、言わない、言うわけにはいかない」
「......」
使い魔が言わないと言う以上、これ以上言っても無駄だろう。
「......そうか......何かあったら連絡を」
「了解した」
黒猫の使い魔は去っていく。
「とにかくこれはまずい、ゲライトに知らせるべきだ」
エルマも使い魔を使いゲライトに伝える準備を始めるのだった。
「なるほどねぇ、『デモンゲート』は不完全な状態でねぇ」
ゲライトはやれやれと言った感じで歩く。
「魔物は大体倒し終わった......あとは不完全な『デモンゲート』がさぁどうな――っ!」
試験場を中心に大きな轟音が鳴り響く。
「ん?んっん~?」
ゲライトは不思議な物を興味深そうに見るのだった。
「......あれは、イカか」
「イカ......イカ?......タコでは?」
「どっちでもいい!あの触手はなんだ!」
目のまえに現れたのは紫色の海洋生物の触手、この触手について話し合っていたエルマとオルイアは話し合っていた。
「おそらく不完全であったが故、触手のみがあちこちで召喚されているのでしょうか」
「だろうね、他の魔導士にも対処を求めるが......」
紫のスライムとは違い、これ触手といえど魔界の魔物。
「数は少ないが、前の紫スライムとは強さが違う、町の被害は大きくなるか......」
オルイアは観察する。
「いや......これは、もしかしたら、被害は小さく済むかもしれません」
「なぜそう思うんだい?」
「触手の根本を見ていただきたい」
紫の触手の根本には魔法陣が書いてある。
「動き方を」
触手は町の中など移動できる、しかしその動きというのは生物の動き方ではなく、ジグザグとしながら進む触手がほとんど。
「......これは、不完全な『デモンゲート』のせいか」
「おそらく、繋ぐには繋がれた、しかし入り口は小さく本体は出られない、小さい入り口もガレキの隙間を動いている感覚なのでしょう」
「奴らは攻撃をする際も突進のような攻撃はできない、そういうことになるな」
エルマはその事を他の者にも伝えるようオルイアに言う。
「ですな、では行かせてもらいますぞ『ウルフチェンジ』」
オルイアは四つん這いになると狼のような姿に変化する。
「エルマさん、行ってまいります」
「気を付けるように」
オルイアは狼の速さで町を駆けて行った。
「後はネレイアイか......頼むよ......」
「『再生』」
触手は攻撃を受けた部位を再生させ、叩きつける攻撃を行う。
「ぬ、動きに縛りがあるらしいが、これではキリがない」
「バン、バン、バン」
触手は確かに動きは遅くく致命傷を与えているように思える、しかししかしすぐ再生してしまう。
カベイアはガルフに話しかける。
「大体、本体は別なんだから、あまり意味ないんだよな」
「ふぅむ不完全な魔法ということは長期間は持たないのでは?」
「いつ終わるかわからないのとずっと戦うのか......」
「仕方ない、やるべきことを我々はやるだけだ」
「へいへい、ガルフは結構ごり押しなんだなぁ」
ガルフ達の他にも魔導士達は奮闘していた。
ユエルス=ミステインと妹であるペンメと白鳥に乗って空より迎撃をし――
「ちょちょっと、標高が高すぎるのでは」
「お兄様は早く触手を攻撃してくださいな!」
カバム=ウロンは他の魔導士の援護とアンサ=イーア回復補助――
「おめえら、ケガしたんならアンサの所へ行け、下らねぇ意地で死ぬな!」
「とほほ、ユノさんに眠らされてしまうとは......不覚でした......ここで汚名返上とさせていただきます」
それぞれの魔導士は皆『デモンゲート』の魔物と戦っていた。
◆◇◆◇
ネレイアイとアクロテスは戦いが始まろうとしていた。
「ねぇ......アクロテス様――」
「『メンタルプロテクト』」
補助魔法をかけ、ネレイアイに近づいていく。
「『雷光鉄槌』」
左手を巨大な雷を纏ったハンマーをネレイアイに当てようとする。
「アクロテス様......右腕はどうされたの......?」
ネレイアイはその攻撃を空に飛んで避けながら近づき問う。
「クラトス=ドラレウスにやられた、はっ!たかが腕だ気にするな、治す手段などいくらでもあるわ!」
アクロテスは口から魔弾を放ち、ネレイアイを打ち落とそうとする。
「『水面写し』」
「――くっ!」
ネレイアイは同じ技を右手から撃ち相殺する――
「――『アクア・ランス』」
「――っ」
上空から巨大な槍が襲い掛かる、アクロテスは自身の『雷光鉄槌』で守りを固める。
「――っ10年前......貴様は何も思わなかったのか?」
アクロテスは攻撃を耐えると『サンダーボルト』の雷を『雷光鉄槌』で空へ飛ばす。
「アクロテス様......あの時のことを......」
ネレイアイは飛ばされた雷を避けながら『アクア・ランス』を撃つ。
「当たり前だ!禁忌魔法は可能性だ、私はね、自らの魔法が世界に貢献できるのならそれでよかった!禁忌魔法だって同じだった!その為に禁忌魔法だって研究していたのだから!貴様らは恐れたのさ、禁忌を研究する魔導士を!」
「禁忌魔法がどんな形であれ世に出回れば大変なことになる......それは貴方だってわかっていたはず――」
「尚更だ!禁忌魔法とは何たるか、口で言ったってなにもわかりはしない連中がほとんどなんだよ!危険性を理解しない!ただただ恐れるだけ!それだけだ!
だが目で見ればわかる!見た者、知った者は禁忌魔法を畏怖する、良いではないか!それで!『サンダーボルト・ドロップ』」
空に飛ばされた雷は今度は雷のように落ちていく。
「――っ!『アイス・ライズ』」
ネレイアイは氷の刃を上空に撃ち放ち、雷の相殺を狙う。
「疑問に思わないのか!どうして過去の存在を今が堂々と評価するのか、
どうしてその評価が最善と思うのか!どうせ未来には変わるというのに!」
「――『水流連弾』」
ネレイアイは上空で雷を避けながらクルクルと回りながら高速の水の塊を撃ち放つ。
「くっ......『魔――」
口から魔弾を放とうと口を開くがネレイアイは狙っていたかのように
「『アクア・ランス』」
をアクロテスの口に狙いを定め撃ち放つ。
「――グッ!」
アクロテスは喉に突き刺さりそうになった所を歯で無理やり止めた。
「危ない危ない、さすがネレイアイといったところか」
「ふふふ......どうも......」
少しの間沈黙が起きる。
「アクロテス様は......魔導協会に居た時......どんな気持ちだった?」
「いきなりどうした?」
「旧友との再会ですもの、気になるわ......」
アクロテスは戦闘中であるにも関わらず空を見上げ、単眼であってもわかるほど優しい顔つきをして過去の思い出を思い出す。
「......楽しかった......な、ネレイアイ、ソリュー、クレウラス、ハハッもっと名前が出てくるな、そうだ、皆がいた......だがそんなモノは過去の話だ、皆、何処かへ行った、死んだ、袂を別った」
「でも......楽しかったわ......」
「ネレイアイ、君は何がしたい、私にノスタルジーを覚えさせたいのか?
残念ながら、個々人への思いはあっても、私は変わらない!」
そんなアクロテスを前にネレイアイは顔を空に見上げて哀しげな顔をしてつぶやく。
「楽しかったわ......あぁ......本当に......」
「......ネレイアイ?」
アクロテスは上の空で過去を思い出すネレイアイに困惑の目を向ける。
「......ふふふ......」
「ネレイアイ......君は......」
アクロテスは何を思ったのか
「......語らいは終わりだ、ネレイアイ」
「......えぇ......」
不意を撃たずなぜかネレイアイに話をかけてしまった。
「ネレイアイ、貴様はやはり......」
「ふふふ......どうしたの?......」
「――はぁ!」
アクロテスは隙を突くように『雷光鉄槌』をネレイアイに振りかざすが、ネレイアイはそれを知っていたかのように避ける。
「クラトス=ドラレウス、奴はネレイアイ、貴様の事を何も知らないな!」
「どうしたのかしら?......クラトス様の名を叫んで......」
「いいか!今の貴様には私を倒そうという意思を感じない、なぜかわかるか?
今の貴様の頭の中は別の事を考えているからだ!」
「......そんな事......みんな守って見せるわ......」
アクロテスは左手に魔法を込める。
「口では何とでも言える、ただ私はネレイアイ、貴様とは長いからなぁ!
あぁ奴には先輩として教えてやるべきだったなぁ!」
左腕の『雷光鉄槌』からは雷があふれ、ドンドンと大きくなっていく。
「左腕もこれでしばらく使い物にならなくなるだろう、これで終わりだ
蠱惑の妖精っ!『轟雷鉄槌』」
アクロテスは全身全霊の一撃をネレイアイに目掛けて放とうとする。
当たれば即死、雷は死体の灰すら残さないだろう。
「アクロテス......わたくしが......きちんと覚えておくわね......貴方の勇士を......」
「ハハハハッ何を言っている!これから死ぬというのに!」
ネレイアイは両手に魔力を込める。
「大地を潤す豊穣の神々よ、哀れ極まる雷に救いあれ、『
「――っ!?」
周囲一面を水面と満月のみの世界となった。
「――これは......ネレイアイの魔法......幻術か?」
歩いていると雨が降ってきた。
「......この魔法は上位だな、おそらくネレイアイのオリジナルか......」
――歩いても、見えるのは満月と水面に反射している満月のみ
「私の両腕が......あるだと......」
水面に反射してないはずの右腕がある。
「ネレイアイ、これは君の幻術だろう?......一体何をする気だ、殺すなら殺すと良い、いや君の役目は僕を殺すこと、殺すべきだ」
アクロテスが歩いていくと満月は落ちていき、太陽が昇っていく。
太陽が昇ると周囲は青い空に変わる。
アクロテスは過去のことを思い出す。
ネレイアイの事や楽しかった時の事、しかしそれは過ぎた事、アクロテスは既に過去を過去として進んでいた。
「ネレイアイ、君はやさしいからね」
眩い光に包まれると元の暗い森の中地面にうつ伏せで倒れていた。
「動けない......ネレイアイ、貴様、あの魔法はなんだ?」
アクロテスは近くに座っていたネレイアイに話しかける。
「......『雨月救陽』大自然に住まう神々が魔力、体力をすべて奪う......そんな魔法......ふふふ......どうだったかしら......」
「なるほど、体が動かないのはそれが原因か」
「......」
「......」
「禁忌魔法『デモンゲート』は不完全ではあるが発動させてある」
「アクロテス様、それって......」
ネレイアイは少し驚いた顔を見せる。
「......ユノ=ノエアは君が今向いている方角にいる、そいつの持つ魔道具『ザーンデント』を探せ」
「?」
「『ザーンデント』はユノが見つけてきた魔道具だった、アレは......久しぶりにわくわくした、私は未知の可能性として『デモンゲート』に使う予定だった、そして......ここからが重要だ......不完全な『デモンゲート』は失敗し、いずれ崩壊を始める、町の全滅はないだろう、しかしそれは『ザーンデント』が使用されない場合だ、アレを使われた場合は......私にもわからない......」
アクロテスはどういうわけか、ネレイアイに洗いざらい話してしまった。
「......ありがとうね......」
「......悪党に感謝するのはやめておけ」
「そうね......でも今のは友人アクロテス=ヘスペーにだから......」
「わたくしはユノ=ノエア様の所に行くわ......此処にはもうすぐゲライト様が来るはず......貴方のマスク近くに置いておくわね......」
「あぁ、ありがとう......」
「『水の揺り籠』」
水の玉に包まれていくアクロテス
アクロテスは玉の中央に浮かんでいく。
「またね......」
こうしてネレイアイは飛び立ち、ユノの所へ向かうのだった。
続く――
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