第39話 アクロテスとの攻防


『蛇の牢』内ではようやくクラトス達の魔封じの鎖を壊すことができた。


「さて、あとは脱出だけだが......どうする?」


どうやって脱出するかを考えていた。


「リスクはある、下手したら俺たちは死ぬくらいに......」


クラトスには一つだけ案はあった。それは皆が一斉に魔法を撃つこと......反射される危険があり、一歩間違えば死ぬ危険な賭けだった


「危険......だが......時間の猶予はない、反射程度で俺は死なん!」

「私は既に決めている、命など惜しくはない!」


しかしナシアーデは魔封じの鎖の破壊に魔力を多く消費して疲弊していた。


「私も......はぁはぁ......」

座っていたナシアーデは立ち上がろうとするがクラトスは制止する。

「ナシア無理するな、魔力を使いすぎたんだ」

「私だって魔導協会の魔導士よ......町の皆を守って見せるんだから!」

「......わかったよ......」


ナシア―デにどれだけ言っても無駄と察したクラトスは作戦を進める。


「仮に壊せたら......アクロテス達は必ず来る......」


壊した後、アクロテス達をどのように対処するか......それが難題であった。


「この事を伝える奴が一人必要になるから......3人でアクロテスとユノか......」


今いる者たちでは実力が不足している。そのため3人は時間を稼ぎ、一人が伝える必要があった。


「クラトス、グラデル、俺と来い、ナシアーデ貴様は森を降ってユノの裏切りを伝えてこい」

「......」


ナシアーデは言い返したかった、私は戦える、勝手に決めないで......と、だが

「わかった......みんな死なないでね?」

そんな身勝手な主張で取り返しがつかなくなることも嫌だった。


「ナシアーデ、『蛇の牢』を出たらすぐに私はネウスを召喚する!それに乗ってすぐに移動してほしい!」

「わかった!」



『蛇の牢』の破壊をしたら、グラデルはすぐさまネウスを召喚しナシアーデを乗せ、森を降らせる、クラトス、ゼオス、グラデルはアクロテスとユノの時間を稼ぐ。

穴はある、しかしやるしかないとそれぞれが決意するのだった。



◆◇◆◇



その頃はガルフとアリスは人間の液体化について、魔導協会の魔導士に報告するため、試験会場に向かっていた。


「おそらく、魔導士がいるはずなんだが......」

「いないわね、みんな帰っちゃったのかしら」


辺りは誰もいなく暗い中、会場の入り口では誰かが言い争う声が聞こえてきた。


「カベイア、それは本当ですか......?」


獣人の魔導士オルイアとフードの少女が言い争っているようだった、こちらに気づいたオルイアは少女に注意をした後近づいてくる。


「えっと何か用事が?」

「実は――」


ガルフは人間が液体化したことをオルイアに話した。


「......」


オルイアは驚いていると赤いフードの少女カベイアが挑発的にオルイアを見て笑う。

「私の言った通りだっただろ?親父ぃ?」


オルイアは考えると再度聞いてきた。

「......ガルフさん、それにカベイア、その人間が溶ける前に何をしたのか、その後どうなったのか詳しく、聞いてもよろしいですか?」

「あぁ、わかった」


ガルフは洗いざらい話す、女を追って町の端まで来たところ、怪しい薬を飲んで苦しみ始めた事、液体となり意思を持つように動き、魔法陣が現れて消えた事。


「私も同じだな、町の端を歩いていたら、男と出くわして、同じように液体になって消えっていった」

「貴方方は町の端でそれを見たと......これはもしかしたら重大な事なのかもしれません、カベイア、貴方が話していたアクロテスの事、信憑性が高まりました」

「っ!信じてくれた!」

「エルマさんの所へ向かいます、皆さんはそこで私と話したことと同じことを証言していただきたい」


オルイアはガルフ達を連れてエルマのところへ向かっていくのであった。



◆◇◆◇



『蛇の牢』の鉄格子にクラトス、ゼオス、ナシアーデ、グラデルの渾身の魔法をぶつける。失敗すれば死......それを覚悟で行う。


皆それぞれ鉄格子に手を当て

「......行くぞ!!」

魔法を撃つ、白い激しい光と共に大爆発が巻き起こる。






アクロテスはらこれより起きる出来事を想像しながら、ユノは灰色の槍を持ちながら覚悟をきめた表情で町を見下ろす。


「もうすぐ、同志は魔界と町をリンクされる」

「......えぇ」

「時刻が来たら開門される、一体どのような魔物が召喚されるのだろうねぇ」

「アクロテス、貴方は知らないのですか?」

「えぇ、知りませんとも何せ――」



バゴンオォンッ!!



突如けたたましい音が鳴り響く。


「――っ!?」

「なんですか!?」


アクロテスは一瞬考えアクロテスはその音が『蛇の牢』の方角であると察するとユノを置いて高速で走り抜ける―――



「――『雷装・サンダーハンド』」



――移動しながら両腕を黄色い雷を纏う手に変化させる。






『蛇の牢』には穴が開き煙が立ち込めていた。


「ゲホ......ゲホ、みんな......大丈夫か......」


クラトスは視界が土煙で悪くなっているなか周りの安否を確認する。


「グラデルっ!......ネウスを......」

「っ!......ネウス、ナシアーデを連れて逃げよ!」


グラデルは白馬ネウスを召喚する。


「......みんなまたね!」

「ナシアも気をつけろよ」


ナシアーデはクラトスの問い「うん」と答えると急ぎその場を後にする。


「構えろ、奴が来る」

「......『ドラゴンスケイル』」


視界が晴れてくると、ゼオスは森の先で警戒をしていた。

クラトスは戦闘前に魔力の装甲を纏う。


「――!」


猛スピードで何かがこちらに向かって来ている。

クラトス、グラデルも戦闘態勢をとる。



――そして



――アクロテスはゼオスの前に現れた。

「『サンダーブラスト』」

――至近距離での魔法の行使を行う。


「――っ『熱滅破』」

ゼオスはそれに対し反撃する、雷の巨弾に対して熱の衝撃で対抗するが、爆風でゼオスは後ろに吹き飛ばされる。



アクロテスはグラデルとクラトスに向かい話をかける。



「一つ、聞きたいことがある、魔封じの鎖をどのようにして壊した?」

しかしグラデルはその隙に攻撃する。


「秘密だ!『シャイニング・アロー』」


グラデルは光の弓3発アクロテスに撃ち放つ。


アクロテスはグラデルの光の弓を――


――右に除け


――左に除け


「『サンダー・ブラスト』」


光の弓を破壊し、そのままグラデルに魔法を貫通させようとするが

「舐めるな!」

寸前のところで避け――


「『シャイニング・アロー』」

避けながら地面に沿うようにアクロテスに向け弓を撃ち――


「そんな攻撃――っ!?」


光の矢は突如右に曲がり、アクロテスは体制を維持しながら左に避ける。


「――!」

「『竜激斬』!」


――アクロテスが左に避けた所を、クラトスの赤黒い魔力を帯びた剣がアクロテスの胴体を断ち切ろうとしていた――


「――っ」

「っ!(かっ堅い!?なんだこいつ......人間の体じゃない!)」


しかしクラトスの剣はアクロテスの表層にしかダメージを与えられていなかった。


「――くっ!」


クラトスは再度攻撃を剣で切りつけようとするが、アクロテスの左手に捕まれてしまう。


「――はぁっ!『獄炎打』」

ゼオスは猛スピードでアクロテスに突っ込み、炎を纏った打撃を与えようとするが――


ガシッ


「っくっクソが!」


アクロテスに右手で捕まれてしまう。


「『雷装・サンダーハンド』......死せよ」


左手にクラトスの剣、右手にゼオスの拳、それぞれの手に雷がより激しく帯びていく。


「グアァァァァ!?」


クラトスとゼオスは関電する。


「あぁ、殺す前に聞きたいことがあった、もう一人の女は何処だ?......もしや、あの女が鎖を壊したのかな?」

「言うかよっ!『ドラゴンブラス』」


クラトスの口から赤黒いブレスが放たれる。


「っ効かぬ!」


アクロテスの左右の手が封じられている隙をついてグラデルは魔法を撃つ。


「『光の雨』」


アクロテスの真上に魔法陣が現れると光の刃が落ちていく。


「――っ!」


アクロテスは畳みかけて降りていく光の刃に思わず両手を放してしまう。


「はぁ......はぁ......」



クラトス達は息切れを起こすが――



――対照的にアクロテスには余裕があった。



「......チッ時間稼ぎをさせられているな......『悪魔の手』」


アクロテスの右手は黒い怪物の手に変わる――

アクロテスの右手は分離し、アクロテスの右手だったものは黒い腕と口だけの魔物と化した。


「ナシアーデ=パナケを見つけなさい」

「ギシャァァア!!」


「させるか!『サンダーブレイド』」

クラトスは悪魔の手を雷の剣で切り裂こうとするが――


「――っ速い」


容易くかわされてしまう。


『悪魔の腕』は高速に移動しながら森を降っていく。


その様子をアクロテスは挑発的に話す。


「追うなら早くした方がいい、何せ『悪魔の手』はC級相当の魔物だ」

「っナシアは何級だ!?」

「ナシアーデはD級、クソが、奴は戦力を分散させるつもりだ」


アクロテスの左腕の雷は激しさを増す。


「追うなら結構、ここで二人になった魔導士を殺すまで、殺した後で追うだけだ」

「......おのれ!卑怯者!」


一瞬お互いを見る。


「クラトス行け」

「はっはっはっ意見が一致したな」

「っ!ゼオス、グラデル......」


三人でもギリギリなのに、二人で相手にするというのは、無謀以外の何物でもなかった。


「何を心配してる気色悪い、こいつを倒し、俺は評価を上げる」

「だが......」


グラデルは言う。


「クラトス、この勝負の勝敗はアクロテスを倒すことで決まるのではない、計画を失敗させたほうが勝ちなんだ!」


クラトスは共に戦いたかった。

「......そうだな......っここは頼んだぞ!」

――クラトスは決心し、急いでナシアーデの後を追う。


アクロテスは左腕の人差し指でクラトスの背中を指す――

「『サンダーレイ』」

雷の一線が向かおうとするが――

「させん!『シャイニングシールド』」


グラデルはシールドを張りクラトスを守る、一瞬クラトスは立ち止まり振り返ろうとしたが、ゼオスとグラデルを信じて走り、森を降っていくのであった。




「さて二人だけで倒せるのかねぇ」


アクロテスは余裕を見せて語る。


「随分と余裕そうだな、貴様の右腕は無く、ナシアーデとクラトスが森を降って行っている、貴様の『悪魔の腕』とやらもクラトスがさっさと殺すだろう、フッ強がりか?」


アクロテスの左手は巨大な雷の手となっていく。


「強がり?ハハハハハッ!そっくりそのままお返ししよう、君たちこそ強がりは止すべきだ、右腕がないからどうした?私はまだ本気を出していない、にも関わらずにだ、君たちはまともにダメージすら与えられていないではないか!」


アクロテスは高笑いする。ゼオスとグラデルは戦闘の体制を整える。


「グラデル......行くぞ」

「了解した!」




ゼオスとグラデルはナシアーデが森を降る時間を稼ぐため、クラトスはナシアーデを守るために森を降っていくのであった。



続く――

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