第29話 明日への準備
「はぁ......」
魔道具の練習をしていたナイミアは木の影で溜息を吐きながら休んでいた。
「おっここにいたか!」
「あっクラトスさんにガルフさん!」
ナイミアはクラトス達の元へ走って行く。
「ラナさんやグラデルさんの試合結果はどうでしたかぁ?」
それをガルフが答える。
「うむ、無事勝利を果たした」
その言葉を聞いてナイミアは胸を撫でおろす。
「はぁ~良かった」
「次はナイミアだ」
クラトスがそう言うとナイミアは何かを気付いた様子で話をかける。
「あっあれそういえば、アリスさんとドネイさんは?」
「あー、もうすぐ来るぞ......ほら」
クラトスが後ろに指を指すとドネイは魔道具に頬ずりしたりキスしながらゆっくり歩いてアリスはそれを興味深そうに見ながら歩く。
「え......何をしてるんですかアレは」
「ははは、すごいだろ?俺も最初は引いた、というか今も引いてる」
「我も最初は困惑したぞ」
ナイミアが困惑する
「おい!聞こえてるぞ!ちゃんとナイミアに説明しろッ!それじゃ俺がただの変な奴だ!」
「わかったわかった!」
ドネイが怒るとクラトスも仕方がないといった様子で説明をする。
「魔道具を作るには愛が必要だと、前にドネイ達が話してただろ?それと同じで魔道具の使用者が魔道具を、まぁ......あぁやって......大切に愛を育むことで魔道具をより扱えるようにするらしい......」
「そっそれってぇすごいですねぇ!」
ナイミアは眼鏡を輝させるが。
「いやいや、真偽不明だぞ?やって損はしないだろうが......」
「そんな話を聞いたことないからな、我ならやらない」
クラトス達が話をしているとドネイとアリスはクラトス達の元に着く。
「クラトス、ドネイって面白いのね!私もやってみようかしら?」
「やめとけやめとけ、あんなの真似したら日中歩けなくなるぞ」
「そうね......」
「クソぉ......好き勝手言いやがって」
ドネイは悔しそうにクラトスを睨みつける。
「あっ」
クラトスは何かを思いつく。
「ナイミアの魔道具に関して言えばもしかしたら意味があるかもしれない」
「......あぁ、確かにそうですね!」
ナイミアはそう言うとドネイを見る。
「ドネイさああん、お願いしますぅ、魔道具の愛で方のコツを教えてくださああい!」
「え!?」
ドネイは突然にナイミアに懇願されて困惑するが、必要であるとお願いされれば断らない。
「よくわからないんだが、まっいいか」
こうしてドネイはナイミアに魔道具の愛で方を教わる事になるのであった。
◆◇◆◇
???
とある屋敷にて、そこに白い学者服を着た男と美しき女......血のような炎と共に燕尾服も髪も瞳すら鮮血のように真っ赤で長身の男とタノールがいた。
齢30を過ぎの見た目をしたその女と男は計画が動きつつあることを喜んでいたが、タノールはその様を興味深そうに聞いている。
その女の声に男も喜んでいる。
「ヒッヒッヒッ、それはそうでしょう、私達は覚悟が違う」
「そうよ......私達はこのために......」
女は感情的になる。
「もうすぐ......もうすぐ......数多の魔導師が試みてきても失敗し続けた事を成功させる!」
男と女が話しているとタノールは口を挟んでくる。
『んっんっんっ君達が楽しそうで何よりだ、あそこまでの事やったんだから失敗なんて許されない、考えられないって気持ちだろ......違うかい?エイタ=オネロ』
「......」
エイタ=オネロ、そう呼ばれた女はタノールを睨みつける。
「あなたがアリスの情報を毎回報告しに来てくれたのには感謝している、でも少し馴れ馴れしいとは思わない?」
「ひっひっひっ、貴方の仕事はアリスの現状報告です、どうしてここに?何もないなら早く消えていただきたい」
タノールに明確に敵意を向けるがタノールは気にせずに話し続ける。
『怒らせたかい?しかし君達と私の関係ではないか!いつも私が馴れ馴れしいのは私なりの愛情表現なんだっ!』
タノールは歯をくっきりと見せて、笑う。
エイタはそんなタノールを冷めた目で見つめる。
「わかった、それで伝えることは特にはないのね?」
タノールは人差し指を立てる。
『んっんっんっ、実は一つだけある』
「あるのなら早く言いなさい」
タノールは血のような炎を纏う。
『それはだエイタ......アリス=オネロに会いに行けばわかる、では!』
「なっ!」
そういうとタノールは消えて行った。
「......どうしますかな?」
「行く」
その答えに男は少し驚く。
「あの男の言う通りに?いかに協力者とはいっても怪しすぎる」
「ならなおさらね、久しぶりにアリスに直接会っておきたいもの、タノールが本当の事を言っていたのかも確かめられる」
「それは確かに......」
こうしてエイタはアリスの元に向かうのであった。
◆◇◆◇
試合の後グラデルは一応とのことで身体検査を行われていた。
「私は必要ないと思うのだがな!」
「そういうわけにはまいりません、もしものことがあるかもしれませんので......」
医師がグラデルに対して話をしていると三角帽子を被った魔導師ユノが部屋に入ってきた。
「あっユノ様、只今検査中でして......」
「あー。すこーしだけお話したいことがありまして~」
「......わかりました、少しだけ、ですよ?」
「わかってますって」
そういうと医師は部屋を出て行き、グラデルとユノはお互い向き合うように座る。
「ははは!久しぶりだな!前に会ったのは確か――」
「5年前......です」
グラデルが言い切る前にユノは言葉を発する。
「どうせ聞かれるでしょうから言っておきますよ?、今ここにいるのは試合が思いのほか早く終わったからです」
「私に対して少々辛辣だな!」
「......なぜ私が辛辣なのか......自覚はあるでしょうに、私達の目標を放棄して――」
ユノはグラデルを睨むように見る。
「何を思ったのか、例の魔道具を手に入れていた......」
「それは偶然だがな!」
グラデルは言葉を挟むがユノは話を続ける。
「貴方と私は共にイオブ国復興を掲げた同志だった、グラデル......貴方は計画を目前にして突然姿を消した。そんな貴方が此処にいる事実は私を腹立たせてる」
「君だって此処にいるだろう」
グラデルは言い返すが
「私は違います、今の魔導協会の地位はただの踏み台ですよ?」
ユノはそれをさらに言い返す。
「それに、魔道協会は思ったほど一枚岩ではなさそうなのもわかっもの、これは収穫ですよ?」
その言葉に興味を持ったのかグラデルはユノに聞く。
「ほう......それは気になるな!是非お教えいただけるとありがたい」
グラデルに聞かれユノはやれやれと話し始める。
「上位の魔導師と下位の魔導師では魔導師としての意識が違うというだけです」
「それは実に......興味深い」
グラデルが顎を指で触りながら考える。
「これ以上教える義理はないですね......」
ユノは部屋から出ようとした時
「グラデル......なぜ姿を消したのですか?」
ユノはグラデルに背を向けながら話す。
「どのような理由であっても
「......やっぱり、変わらないですね」
そう言ってユノは歩いて行った
「ユノ、君も内心ではわかっていると信じているぞ!」
グラデルの声は去っていくユノに向けて発せられた。
◆◇◆◇
夕暮れ
「......我は何を見せられているのだ......」
ガルフの視線の先には......
「おーよしよし!」
「違う違う!もっと子供をあやす様に!」
「おっ......おぉぉ~よしよしぃ~」
ナイミアはドネイから魔道具の愛で方を教わっている様をクラトス達はずっと見せられていた。
「あー、ナイミア?ドネイの方法は可能性の話だからな?普通に連取した方がいいのかもしれないぞ?」
「ナイミア!面白いわ!」
クラトスは苦笑いを浮かべながら、アリスは笑いながらナイミアを見ている。
「ちょ、笑わないで――」
「集中だ!ナイミアぁ!」
「はっはいぃ!」
ナイミアはクラトスから貰った魔道具に頬ずりしながら、どうにかして愛でようとしている。
「うぅむ、大丈夫なのか?」
「......信じるしかないだろ」
そうこうしていると
「ナイミア!よくぞエルフ式魔道具愛で方試験を合格したな!これからはナイミアもエルフ式魔道具の愛で方を一人で行う事が出来るぜ!」
「えっ......なんでそんなのにいつの間にか合格してるんですか......」
ナイミアは困惑を隠せない、そんなナイミアにクラトスが近づいてくる。
「そろそろ日が沈むし、ナイミアは休んだ方がいい、明日は試合だぞ?」
「うぅ、うまくいく気がしないですぅ」
「大丈夫だ!今までの頑張りをきっと魔道具は答えてくれる!」
クラトスはナイミアを励ますと
「そうだ、ナイミアは勝てる、もちろん俺もな!」
ドネイも応援をする。
「ナイミアにドネイ、明日は頑張って!」
「うむ、誰か欠けてしまえば寂しいからな」
アリスとガルフも応援をする。
「じゃ、ナイミアにドネイ、明日は頑張れよ!」
「はいぃ頑張りますぅ」
「あぁもちろんだ!」
こうして明日の試合の準備は整った、ドネイとナイミアは共に魔道具をクラトスからもらい受けた、ドネイは問題はなさそうだが、ナイミアにはいまだに不安が残る、果たしてナイミアは魔道具を扱うことが出来るのか?そして明日の魔導師試験、最終試験の試合ではドネイとナイミアは勝利することが出来るのか!?
次回へつづく――
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