第11話 第1次試験 集う者たち

旧試験塔附近


ガルフは旧試験塔が見える辺りまで近づくことができたが......


「(かれこれ何時間たった?......完全に拮抗状態であるな)」


姿は見える魔導師も見えない魔導師も旧試験塔に入っていくものはいない、誰かが入ろうとすれば狙い打ちにされる危険性があるからだ。


「(だがいつかは入らねばならぬ)」


クラトスを探していたが見つからなかったガルフは一人で入ろうと立ち上がろうとした時だった。


なっ......


少女が一人で旧試験塔に歩いて行く。


「(まずい!)」


ガルフは急いで出ようとしたとき――


「ちょっちょっと!もう少し警戒した方が!」


クラトスがその少女を止めようとしていた。そしてそれに合わせてドネイとナイミアも付いて行く。


「あっクラトス!」


ガルフもクラトスが出て行った勢いに合わせて出ていく。


「おっガルフ!大丈夫だったか?」

「我はな、お前は......」


ドネイとナイミアを見るガルフ


「うむ、どうやら仲間も増やしたらしいな」

「何か増えたんだ」


気が付くと少女は近づいていた。


「何か御用?」

「あっ......」


そして気づいてしまう、その少女お服には血痕が大量についていることを......


「はっははは、お嬢さんやんちゃしてんなぁ!ナイミアもそう思うだろ?」


クラトスは近づいてきた少女に困惑してナイミアに話を振る。


「へぁ!?なっなんで私に!?どっドネイさん!」

「いっ?俺かぁ!?」


3人がお互いがどうするか話している間少女はずっとその模様を見ていた。


「私の名前はアリス=オネロ、あなた達も私とたたかいに来たのかしら?」

「へ?はははまさか!心配して話しかけただけ!」

「そうだなクラトスの言う通りだ我らは戦いをしに来たわけではない」


戦いをしに来たわけではないことを知ったアリスは満面の笑みで笑う。


「わぁ!それは嬉しいわ!皆私にたたかいをするから困っちゃって」

「困っちゃって......か」


クラトスはアリスが言ったことと服の血痕から何をしてきたのか理解した。


「むぅ、どうやら話しこんでいる間に魔導師達が囲み始めているな」

「アリス、あまり殺すなよ」

「?」


クラトスの言葉を理解できなかったのかアリスは首をかしげる。


魔導師達はクラトス達を包囲して一斉に攻撃を企てているようだったが......


「ガルフ、ナイミア、ドネイ行くぞ、アリスは加減するんだわかったか?」

「???」


やはり理解を示さないアリスに不安を感じるがそのまま戦いに挑む。


「『アクア・レイン』!」

ナイミアの水の魔法で魔導師達の頭上には豪雨が降る。

「おらぁ!サンダーブレイドォォ」

雨に濡れた魔導師を雷の剣で切り裂き、雷は水伝って魔導師達を戦闘不能にする。


「即興で考えた割にはうまくいったな」


クラトスは自慢げに笑う。


「くそっなんだこいつら!」


クラトス達に猛攻に逃げの姿勢を見せたところをガルフとドネイは追撃する。


「逃げる者を攻撃するのは好まないが......『ウィング・ブラスト』」

Pポイントになってくれや!『アイス・アロー』」


ガルフとドネイは魔導師を逃がさない、彼らを逃がせばいつかはこちらに害が及ぶためだ。


「この人たちとたたかえばいいのね?」


アリスは指を鉄砲の形にして魔導師に向けると――


「バン☆」


光の玉が飛んでいく。


「ガァッ!?」


相手の魔導師の頭に当たると頭は体から消失していた。


「!」

「まじか......」


クラトスとドネイ、他の魔導師はアリスを見る。


「あの子供を狙うぞ!」

「馬鹿!やめろ!」


クラトスはアリスに立ち向かおうとする魔導師を止めようとしたが......


「バン☆バン☆バン☆」

「ギャァ」


アリスは敵と判断した魔導師の頭を的確に狙い続ける。


「ひっ......」


逃げる魔導師にもお構いなく狙おうとするが......。


「アリス!もういい!」

「どうしてかしら?敵は皆殺しにしないと......」


クラトスはそれでもなお敵を攻撃しようとするアリスの手を持つ。


「アリス!そんな簡単に人を殺してはいけない!」

「?」


無垢に首をかしげるアリスにクラトスは何とも言えぬ感情を抱いた、人を殺しても何とも思わぬその感性に対する怒りと何とも思うことができないアリスへの哀れみ、そんな複雑な感情をアリスへ抱いていた。


「アリス、次からは魔法を使いすぎないようにな......、体力を使いすぎるのは良くないぞ......」

「なんだか心配させてしまったかしら?ありがとう親切な魔導師さん」


クラトスはどんなことを言っても無駄であろうアリスにできるだ魔法を使わせないようにし殺しをさせないようにした。


「はぁ......ガルフ辺りには魔導師はまだいるか」

「いる......しかし先ほどの戦いを見て怖気づいている魔導師もいるだろう」

「だな......」


ラナ達やグラデルはいない。


「待ちたいところだが」


大所帯な現状では魔導師の恰好な的である、それに狭い建物の中では同士討ちのリスクもある。このことを考えれば待つことは危険であった。


「じゃ行くか、アリス」

「?」

「アリスは俺の近くに居ろよ?」


アリスは特に不満な様子はなくクラトスと共に旧試験塔に近づいて行く、魔導師の目線も気になるが、今回のヒントは先着など関係ない、みな様子見をしているようであった。


「(まぁ先に行くのは勇気いるよな)」


クラトスは旧試験塔に近づいて行く、森の開けた場所の真ん中に灰色の塔。

クラトス一行はそんな塔に入っていくのであった。




◆◇◆◇


無情の森


クラトスが塔に入っていくのと同じころラナとグラデルも塔に向かっていた。

しかし子どもはいいカモとして狙われやすくグラデルはラナを守りながら進んでいた。


「なんだか、守られてばっかり......」

「ははは気にするな!子供は守られる者で大人は守る者!ただそれだけだ!」


白馬ネウスにグラデルはまたがりその後ろにラナが乗りながら森の中を駆けていく。時々現れる敵もネウスとグラデルが倒していった。


「しかしラナにはそろそろ魔導師を倒してもらわねば、Pの問題もそろそろ考えておいた方がいいな!」

「そうね......」


この試験においては確かに最後まで体力を温存しておいて最後に魔導師を倒すという考えもある。しかし最後まで残る魔導師はみな強者ぞろいになってしまう、そのため今のうちにPを溜めておきたかった。


「私の経験則から言えば相手が気絶するかリタイアを叫ばせばPは手に入る!」

「できるかしら?」

「できる!」


ネウスは駆け抜け、ようやく旧試験塔が見えてきたところで......。


「――!」


何かを察知したグラデルはラナを担いでネウスから飛び降りる。

そして召喚獣ネウスを退却させる。


「――ヘイブ?」

「あれがヘイブ......」


ラナはその姿を見てヘイブであるとわかったがボロボロな状態であった、何やら違和感があった、片手には小瓶を持っていたがそれを捨てる。


「ラナ......どうか死んでください......弟のために!」


そう言うとヘイブが魔力あふれ出てしているのが目視できた、肉体は徐々に大きくなり、巨大な手と爪、巨大な牙をした怪物に変化した。


「ラナから事情は聞いていたが......人であることを捨てるというのなら私も本気で行かせてもらおうか!」


グラデルは自身に光を纏うとヘイブに突撃する。

「グッ!」

ヘイブはそんなグラデルの突撃を両腕で防御する、がその防御行動を呼んでいたかのようにグラデルは追撃を行う。

「『シャイニング・ランス』!」

右手に光輝くランスを創造するとそのランスをヘイブの腕を貫くように差し込む。


「グアァアア」

ヘイブは後ろにのけぞると

「『シャイニング・ボム』」

左手に光の玉を創造してのけぞったヘイブに複数の玉を後ろに飛びながら投げつける。


光の玉はヘイブに当たると大きな円のような爆発が起きた。


「グァァアァ」


ヘイブが叫ぶ、その声は到底人間のもとは思えなかった。


「やはり、適応できていないな......」

「適応?」


見たことのない暗い顔つきでつぶやくグラデルを見ながら適応とは何のことか気になり質問するラナだが


「ん?......いや気にする必要はない!」


ヘイブは態勢を立ちなおすとふらつきながら突進してくる。


「っ!『シールド』」


ラナとグラデルを守るように現れた壁はヘイブの突進を無力化する。


「ウッ」


怯んだ隙を突いてグラデルは光の弓を創造する。


「『シャイニング・アロー』」

光の弓はヘイブの腹を貫く。

「っ!ヘイブ!早くリタイアして!『ダーク・ブラスト』」


貫かれた腹に闇の衝撃波が放たれるとヘイブは大きな悲鳴を叫んだあとに前かがみになって倒れ込む。


そしてそのままヘイブは人の姿へと戻っていく。


「っヘイブ!」


ラナは人の姿に戻り倒れているヘイブに駆け寄るラナ。


「うっなぜ私に駆け寄るのですか?私はあなたを殺そうと」

「そんなの関係ないわ!」


ラナとヘイブが話しているところに先ほどの小瓶を持ってきたグラデルは話しかける。


「ヘイブ、君が飲んだであろうこれは何なのか教えてほしい!」

「......詳しくは......身体強化や魔力を増幅させることくらいしか知りませんよ」

「......そうか」

「ただ......何かの実験でできたらしいです......」


それをグラデルは興味深そうに聞く。


「ねぇ......リタイアして?」

「......ですが」

「ヘイブ、今の状態では君は無理だ無駄死にする必要もないであろう!」


ラナとグラデルの説得にも首を縦には振らない。


「私は......お嬢様を裏切る行為までして......」

「相当な覚悟で挑んだのであろうが無駄死しては弟さんが可哀想だろう!」

「お願い!ヘイブ!」


ラナとグラデルの説得に心を動かされたヘイブは......


「う......りっリタイアァ」


ヘイブは泣きながらリタイアを叫ぶ、殺そうとした人に慈悲をかけられるという事実の悔しさと生きられるという嬉しさで混ぜこぜの感情であった。


「後はアルとガルフを探さねばならぬな!」

「そうね......」


アルもガルフも無事であることを祈るしかない。


「今は旧試験塔に向かおう!もしかしたら皆がいるかもしれないからな!」

「ええ!」





ヘイブのリタイアが受理されるまで待ち転移を確認したのちにラナとグラデルも旧試験塔に向かう。

試験が始まりバラバラになっていた仲間たちが旧試験塔にて徐々に集まろうとしていた。

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