第128話

 「――獅子狩ノ咆哮シシガリノキズ

 

 巨大な銃から放射された砲撃は、ハヤテの視界を覆い尽くした。回避行動が間に合わないと理解した瞬間、ハヤテはダメージを受けながらも回避行動を続けた。

 回避し続けるハヤテに対し、酔鬼は笑みを浮かべてハヤテを見据える。そして巨大な銃を構えたまま、悪戯な笑みを浮かべて言った。


 「……これは避けられるかぁ?」

 「っ!?」


 そう言った酔鬼は、幻影虎砲を使って分身を作り出した。ハッとしたハヤテは構え、酔鬼はニヤリと笑みを浮かべたまま引き鉄を引いた。放たれた砲撃を回避し続けるハヤテだったが、四方八方から追撃が来て回避が困難になる。

 そう感じていた時だった。酔鬼が急に動きを止め、不満そうな表情を浮かべながら明後日の方へと視線を向けていた。


 「チッ……時間切れか。もう少し楽しめると思ったのによぉ~、――残念だぁ」

 「何を言ってるっスか?」

 「あぁ、説明が必要かぁ?そうだなぁ、良い機会だから教えてやるよぉ。楽しませてもらった礼だと思ってくれぇ」


 小首を傾げながら酔鬼がそう言った瞬間だった。その場を押し潰す程の圧力が、一帯を覆い尽くした。明後日の方向を指差しながら、酔鬼は「纏い」を解いて言った。


 「俺の役目は、姫さんと焔鬼を引き離してお前らみたいな奴と一戦交える事だぁ。そして俺たち黒騎士がここに来た理由の一つは、ほぼ達成されたところだぁ」

 「何の話っスか?ま、まさか……お前ら、総大将アニキをっ?」

 「焔鬼を殺すのが目的じゃねぇから安心しろぉ。だが、それに近いかもしれねぇけどなぁ。この妖力がどんな意味を持つのか、お前らで考えるんだな」


 そう告げる酔鬼は片手を振り、手元で銃を遊ばせて数発の砲撃を放った。それを回避したハヤテの視界には、既に酔鬼の姿は無かった。だが姿は見えなくても、酔鬼の声が耳に入って来た。


 「楽しかったぜぇ、鬼組のハヤテ。また何処かで会えたら、続きをやろうぜぇ。その時は、もう少し強くなっといてくれやぁ」

 「ぐっ……くそっ!!!!」

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