第127話

 「……っ!?」


 酔鬼が構えた巨銃から放たれた砲撃は、ハヤテの視界を全て真っ白に包み込んだ。白く輝く砲撃んい包まれたと思われたハヤテは、酔鬼の背後に瞬時に移動して回避した。

 だがしかし、その姿はボロボロとなってしまっていた。肩で息をしているハヤテは、片目を閉じて奥歯を噛み締める。そしてその片腕からは、鮮血が垂れていた。


 「……良く避けたじゃねぇかぁ」

 「はぁ、はぁ、はぁ……避けてねぇっスよ……」

 「死んでなきゃ避けてるって事だぁ。俺のこの技を受けて生き延びたのは、お前とあの人だけだぁ。り甲斐があるなぁ、マジで」


 酔鬼は白い歯を見せて嬉しそうに笑った。その仕草は子供っぽく、何処か楽しげな雰囲気が見え隠れしている。酔鬼は片手で顔半分を押さえながら、不敵な笑みを浮かべて言った。


 「……ククク。ハヤテと言ってたなぁ、お前。お前なら、やっぱり本気が出せそうだぁ!!」

 「っ……冗談は程ほどにして欲しいっスねぇ!!」


 酔鬼が砲撃を数発放ち、その砲撃をハヤテは回避した。空中を飛び交う砲撃の雨を回避しながら、ハヤテは真下に向かった茜とそれを待っていた綾たちの姿を見つけた。

 合流出来た事を確認すると、ハヤテは酔鬼から距離を取って言った。


 「俺を捕まえられるつもりなら、もっと本気を出した方が良いっスよ」

 「そんな事を言って良いのかぁ?なら、望みを叶えてやろうじゃねぇかぁ」

 

 距離を取るハヤテに対し、それを追う酔鬼。着いて来ている事を見たハヤテは、酔鬼に悟られないように真下に居る彼女たちの様子を見つめる。その視線に気付いたのか、綾は煙管を咥えながら手を挙げた……――


 「――ハヤテが動いたようじゃのう。ワシらも動くか?杏嘉」

 「そうすっか。アタイとこいつで、そいつを護れば良いんだろ?」

 「そうじゃ。あまり気乗りしてないようじゃが、他でもない焔様からの命じゃ。従うべきじゃろう」

 「……チッ、分かってるっつの」


 綾の言葉を聞いた杏嘉は、後頭部を掻きながら渋々と立ち上がった。狂鬼は茜の傍に近寄り、小声で言葉を交わしたのである。


 「これは恩返しだ。オレは茜姉さんを護る。今はあの人が居ねぇからな」

 「あ、うん。ありがとう。ええと、狂鬼ちゃん」

 「……あぁ(調子が狂うから、ちゃん付けは勘弁して欲しいな)」

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