第107話
「……――っ!」
「鬼火、
焔との距離を取った蒼鬼がそう告げると、蒼鬼の周囲で蒼く燃える球体が複数出現する。その複数の球体は一匹の龍となり、焔へ目掛けて放たれる。怒号にも似た咆哮を天に轟かせるようにしながら。
「っ……!」
焔はその龍の前で刀を構え、真正面で振り上げて一直線に振り下ろした。剣圧が龍を真っ二つに切断し、剣圧は風圧となって蒼鬼へと放たれる。その剣圧を正面から受けようとした瞬間、蒼鬼の真横で焔は姿を現した。
焔の動きの速さに目を見開いた蒼鬼は、容赦なく薙ぎ払いを喰らった際に頭部のカ甲冑が砕けた。額を押さえる蒼鬼が着地した時には、眼前には剣先が突き付けられていた。
「……それで終わりか?蒼鬼」
「っ……」
「その顔を見るのも久々だな。白い髪に蒼色の瞳、蒼鬼と名付けられた時から変わらない正義感に包まれた眼差しのままだ」
焔は目を細めてそう言った。甲冑の半分以上が砕けた蒼鬼は、顔の半分を片手で押さえながら流れる血を拭い払った。二本指を突き立てて、その指先から蒼色の球体が発生する。
それを見た焔は、呆れた表情を浮かべながら片手を差し伸べた。
「――
「……」
至近距離で放たれた波動は、焔を大きく包んで遥か後方にある山を削った。地面を抉り、地形が変形してしまう程の威力は凄まじい物だろう。常人であれば、蒸発して跡形もなく消失するのが普通という技だ。
それ程の技を放った蒼鬼は、目を見開いて焔を見つめていた。何故なら、砲撃を直撃していたはずの焔には、傷と呼べる類の物が全く無かったのだ。片手で防ぎ切り、消失するまで微動だにしていなかったのである。
「ば、馬鹿なっ……焔鬼、お前は何者だ!?」
「何を今更聞いてやがる。オレは……――ただの半妖だ」
そう言った焔は再び刀を構え、冷ややかな眼差しを向けながら刀を振り下ろした。
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