第100話
茜を学校の屋上へ降ろした際、オレは茜に耳打ちした。
「……安心しろ、お前はオレが護ってやる」
戸惑ったような表情を浮かべていたが、オレは茜の反応を見る前に背中を向ける。空中で立っている蒼鬼の元へと向かい、正面まで近寄ってから見据えた。
「待たせたな、蒼鬼」
「……いや、大した時間ではない」
「その様子じゃ、オレの提案を受け入れるって事で良いか?」
「あぁ、構わない。正直に言えば、私は姫になど眼中に無いのだ」
「へぇ、散々追っ掛け回してくれた挙句にそれか。まぁ、オレからすればそれは有り難い話だ。正直、茜を護りながら戦うのは面倒な部分があるからな」
オレは刀を肩に当てながら、蒼鬼の言葉を受け入れる。蒼鬼は礼儀を重んじる剛鬼よりも規律正しく、そして狂鬼よりも勝負好きな部分がある黒騎士だ。
そんな蒼鬼の性格を熟知しているオレだが、分からない事が一つだけあった。それは蒼鬼が、今回何しに来たのかが分かっていないのだ。
何のために魅夜を操り、オレが纏めている鬼組を感化させたのか。その理由が未だに理解出来ず、そして結局答えが出ないままこうして対面してしまっている。
「……蒼鬼、一つだけ聞きたい事がある」
「ふむ……何だ?」
「お前がここに来た理由だ。積もる話の一つや二つあるんだろ?茜の事が眼中に無いのなら、お前の詳しい目的が知りたい。話せるなら、教えて欲しいものだが?」
オレがそう問い掛けると、蒼鬼は顎に手を当てて考えるような仕草を見せた。少し思案を巡らせていたが、やがて蒼鬼は腕を組んで問いに答えた。
「――あぁ、確かに目的はある。が、これは私の身勝手な願いに過ぎない事だ」
「……それは、オレにも関係する事か?」
「あぁ、勿論だとも。
「黒騎士全体に関わる事、か。……なるほどな。なら、オレに認めさせてみろ」
「?……」
「お前がこの数十年間、オレたちを見逃してからどれ程強くなったのかをな。見せてみろ、そして認めさせてみろ。それ次第で、オレは答えを決める」
そう言った瞬間、蒼鬼は『だろうな』と呟いた――。
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