第96話
剛鬼の強さは、黒騎士の中では強くもなく弱くもない。そんな曖昧な立ち位置だが、オレからしたら厄介な相手だ。何故なら、アイツはただの黒騎士じゃねぇからだ。
「……ただの黒騎士じゃないだぁ?んなの信じられる訳ねぇだろ」
「あぁ?お前と話して無ぇよ!この女狐が」
「ああ!?んだとゴラッ!!」
「あぁ?やんのかコラッ!!」
いがみ合いを始めた杏嘉と狂鬼を見つめる綾は、煙管を咥えながら肩を竦める。やがて二人の間に入った綾は、両手で両側に居る彼女たちの頭を軽く殴った。
「あだっ!?」「うぐ……」
「二人共、蜘蛛の餌食になりたいのかのう?」
「「い、いえ……滅相もありません」」
ニコリと笑みを浮かべる綾に対して、杏嘉と狂鬼は並んで正座をした。頭を下げた彼女たちは、綾に聞こえない範囲の小声で会話をし始める。
「(お、おい女狐!コイツ、イカれてんぞ!味方じゃねぇのかよ!)」
「(こんな奴でも味方なんだよ。総大将と盃を交わしてる時点で、アタイと一緒だ)」
「(その割にはお前、立場弱くねぇか?)」
「(おまっ……分かってんのか?綾を怒らせたら蜘蛛の巣に張り付けにされんだぞ?それも小せぇ蜘蛛に見張りをさせて!)」
「(それはさっき見たっつの。あれぐらい耐えられねーのかよ?ハッ、よっわ)」
「(それが一日中続いてもか?)」
「(……は?)」
「(ちなみに最悪、三日間蜘蛛漬けにされる時もあるぞ)」
「(……まじ?)」
「(マジだ)」
「二人共~、ワシの話……無視するとは良い度胸じゃのう♪そんなにお仕置き、されたいのか?っふっふっふ」
綾のそんな言葉を聞いて、ギクリと肩を震わせた杏嘉と狂鬼。ゆっくりと綾の方へ視線を戻すとにこやかな表情とは裏腹、黒いオーラに包まれた綾の姿に彼女たちは寒気を走らせた。
危険を察知した彼女たちは、ほぼ同時に綾に向かって弁解をし始める。
「「こいつが先に悪口を言ってきました!!」」
「て、てめぇ……鬼なら鬼らしく潔くしろよ!!」
「はぁ!?鬼に潔さとか関係無ぇだろうが!馬鹿か!」
再び綾の目の前でレベルの低い不毛な争いをし始めた彼女たち。そんな彼女たちの事を見下ろしながら、チラッと綾は視線だけを妖力が濃い方向へと意識を向けるのである。
「(村正……死ぬでないぞ)」
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