第37話
「容赦の無い事をしますね」
「チビ猫が攻めて来たんスから、これは正当防衛っスよ。それに組員なら、この程度で済んだんスから感謝して欲しいっスね」
目を細めながら、ハヤテは短刀を仕舞ってそう言った。隣までやって来た刹那は、倒れて気を失っている魅夜を眺める。外傷は擦り傷や軽い火傷がちらほら見えている部分を見て、刹那は横目でハヤテを見た。
視線を感じたハヤテは、訝しげにその視線を重ねて言った。
「何スか?」
「女性に手を挙げるなんて最低ですね。焔様は、そんな事はしませんよ?右腕として恥ずかしい行為ですね」
「止むを得なかった状況を見てた癖に何を言ってるんスか。それに今回、覗き見が好きな
「覗き見、ですか。……それは確かなのですか?」
「詳しい話は、アニキにするっスよ。とりあえず俺が離れたら結界を解いて、屋敷に戻って来るっス。寄り道は禁止、すぐに戻って来る事っスね」
ハヤテはそう告げながら、魅夜を抱えてその場から離れて行った。その背中を眺めつつ、張っていた結界を解いて刹那もその場から退散する。『すぐに』と言われた手前、素直に戻る事を選んだ刹那だった。
「……(誰かに見られてる気が……気になりますが、すぐに戻りましょう)」
少し周囲を観察した刹那だったが、早々に帰る事にした。だがその判断は、間違っては居なかった。ハヤテの忠告に従った事で、刹那は危険を回避していたのである。
『(ふむ、あの者……こちらの気配に気付いていたのか?それとも直感か……。少なくとも、あの者と同じように出来る者だというのは確かなようだ)』
地面が水面のように波紋を立て、その中心から頭を出す黒甲冑の影。その者は結界も解けた事を確認し、再び地面の中へと戻って行った。反転していた空間はやがて色が戻り、元の世界へと戻る。
学生たちの声や鐘の音が響く中、そこには何かが遭った形跡は跡形も無く消えていた。それどころか、抉れた地面や壊れた校舎も全てが元通りとなっている。だが学生たちは違和感に気付かないまま、自分の日常を過ごすのであった。
『(しかし、あの者たちの長は何者だ?
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