第36話
「……蹴り落とされた事はある?」
「ぐっ……!」
壁から壁へ、空中移動を繰り返していたハヤテ。そんなハヤテの動きを先読みし、真正面からかかと落としを繰り出して真下へとハヤテを落とした魅夜。
魅夜は足元で地面に叩き付けられたハヤテを見下ろし、無表情のまま平坦な口調で問い掛けた。
「――ハヤテ、焔はどこ?」
「っ……さぁ、俺を倒したら分かるかもしれないっスよ」
「……そう」
魅夜はハヤテから目を逸らして、少し考えるような仕草をする。焔の右腕であるハヤテを倒したとしても、すぐに他の幹部が出て来る事は間違いないのだろう。そう予想する事は、魅夜でも簡単に分かる事だ。
だが魅夜は、眉一つ動かす事なく言うのであった。
「じゃあ、そうする」
振り被った左腕は、
手応えが無い事を確認した魅夜は、移動したハヤテを見据えて四つん這いになった。まるで獲物に狙いを定める猛獣のように。
「……そんな細い腕でクレーター出来るとか、ヤバイっスね。(とはいえ、このまま回避に徹してもいずれジリ貧になるっスね。それに、さっきからチビ猫が攻撃する度に出ている蒼い炎。あれは何なんスかね?)」
最初に打撃を打ち込んだ時、高速移動をする為に踏み込んだ時、かかと落としを繰り出した時、そして……地面を殴った今も、蒼い炎が出現していたのだ。
疑問は浮かんでいたのだが、それを追求する余裕が無かった為に気にしていなかった。がしかし、ここまで違和感がある事にはハヤテは放っておく訳にはいかないと判断した。
「すぅ……はぁ……」
「……?」
「チビ猫……忠告してあげるっスよ」
「忠告?」
その時、魅夜は背筋が凍り付いた。いや、恐らくはその場に居る者は感じただろう。結界を張って姿が見えず、別の空間にも居るという状態の魅夜とハヤテ。
だがしかし、人間たちには嵐の前触れと思わせる程の肌寒い風。妖力を持たない人間は、恐らく悪寒となってそう感じている事だろう。が、妖力を持った者たちは違う。
「ふぅ……ここから先は、瞬き厳禁っスよ」
「――っ!?」
それは餓鬼と遭遇した茜と同等か、それともそれ以上と思える程の恐怖心。それを感じた魅夜は、判断を見誤ってハヤテへと突撃するのであった。その行動を見たハヤテは、魅夜の腹部に重い一撃を叩き込むのである。
「がはっ……!」
「その程度の動きで
「ぐっ……」
「
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