第34話
「チビ猫……どうしてアニキを探してるんスか?」
「どうして?」
ハヤテはそう問い掛けながら、両手に持った短刀を逆手に持ち帰る。短刀に付いている輪を軸にして、手元で回転させて遊ばせつつ魅夜の様子を伺い続ける。
一定の距離を保ちつつ、相手の間合いに一気に接近して叩くのがハヤテの得意分野。意表を突いた攻撃や暗殺を得意とするハヤテは、鬼組の中でも焔と互角に渡り合える存在となっている。
対して魅夜も、同じく意表を突く戦闘スタイルでも接近戦に特化している部分もある。ハヤテよりも速度は劣るものの、その小さな身体から想像出来ない程の威力と身体能力を有している。
その二人が対峙すれば、周囲に影響が出るのは一目瞭然である。
「どうして?って……理由を聞く必要があるの?」
「そりゃあるに決まってるっスよ。……俺はアニキの右腕っスからねぇ」
「右腕……?」
「っ!?(気配が変わった?)」
右腕という単語を聞いた瞬間、魅夜は見据えるようにハヤテを睨み付ける。やがて口角を上げた魅夜は、ハヤテの視界から姿を消した。
「っ……(見失った?)」
速度に自信のあったハヤテだが、視界から姿を見失った瞬間に周囲に気を張り巡らせる。そうしなければならないと悟る程、魅夜の速度が通常よりも速く動いているのは明白。
やがて魅夜の気配を察知したハヤテは、右側に持った短刀を振り払う。魅夜が出現したのは背後からの奇襲を考えての出現だった。それをいち早く察知したハヤテだったが、反撃が遅れたのか脇腹にダメージを受けてしまった。
「ぐっ……!」
「……」
「危ない事をするっスね、チビ猫。(殺傷能力のある攻撃だったら大量出血っスね)」
「骨折すると思ったのに手応えなかった。何か巻いてる?」
「さぁ、どうっスかね!!(次はこっちから)」
反撃開始という意志を見せたハヤテは、魅夜が見せた速度よりも速い速度で四方八方と移動する。校舎から校舎へと三角跳びをしつつ、死角からの一撃を狙う。相手がどう出るか、それを伺いながらハヤテは魅夜を見据える。
「……ハヤテ、あまりボクを舐めないで」
「っ!?」
ハヤテは目を見開いた。何故なら、さっきまで魅夜を中心に高速移動をしていた最中、ハヤテは魅夜の姿を常に見ていた。にもかかわらず、ほんの一瞬の瞬きで魅夜の姿を再び見失ったのだ。
そして魅夜は、ハヤテの移動先を予想して先回りをしていた。通常以上の速度、自分よりも速い速度で移動していたハヤテの動きを読み、目の前に出現したのである。
「……蹴り落とされた事はある?」
「うぐっ……」
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