第18話
茜が焔に礼を告げた後、疲労が表情に出てた事を確認した焔は茜を部屋に戻した。部屋の戻って行くのを見届けた所で、刹那は焔に問い掛けた。
「焔様、本当に彼女の記憶を消さなくて良かったのですか?」
「あぁ、構わない。たまには協力者を得るのも一興だろ?」
「それは分かりますが、彼女が信用出来るかどうかも役に立つかどうかも不明なままです。もう少し慎重に事を運んでも良かったのでは?」
由良茜はこの場に居る者と比べれば、ただの人間に過ぎないのだ。それを理解していない焔ではない事は、刹那も重々承知している。だがしかし、だからこそ由良茜という存在の記憶を残したままというのを理解出来なかった。
「――それに彼女は普通の人間です。今日は昨夜の事もあり保護はしますが、明日からは日常に戻るのです。鬼の存在を知ったまま、日常を過ごす事は困難になるはず。やはり記憶を消し、何も知らないままの方が宜しいのでは無いでしょうか?」
刹那がそう告げた瞬間、焔へと視線を向ける一同たち。その疑問の込められた視線を一斉に浴びた焔は、溜息混じりに肩を竦める。そして頬杖をやめ、両膝に手を添えて言った。
「確かに刹那の言う通り、記憶を消して日常に戻す方が得策だろうな。オレもその意見には大いに賛成だ」
「ならば……」
「だがこれはオレたちの勝手に決めた事でしかない。最終的に決めるのは、由良茜自身だ。知らない方が良い事も確かにあるが、知らないと後悔する奴だって居るんだ。お前らだって、知らないまま失うのは我慢ならないだろ?」
『……』
焔がそう言うと、戸惑った様子でそれぞれ苦渋の息を漏らした。その反応を見た焔は、やれやれと思いながらも言葉を続ける。
「――だから人間にも、同じように選択する資格はある。お前らが人間嫌いなのは知っているし、それを
焔は微かに口角を上げながら、目の前で座る全員へ視線を向けた。やがて告げた後に小さく息を吐いた焔は、「んじゃ、今回の会合はこれで終わりだ」と告げて解散を促した。
それぞれが外へ出て行き、焔も部屋を後にした。自分の部屋へ向かう中で、ハヤテと刹那だけは焔の後ろを着いて行っていた。部屋を出てからしばらくして、焔は自室へと辿り着く。
その瞬間、入り口に立ったまま焔は彼らに告げるのである。
「――他の奴らの動向を見といてくれ。お前らも不満はあるだろうが、おかしな行動をしようとする奴は連れて来い。良いな?」
「畏まりました」「了解っス」
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