第14話
――はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……。
真っ暗な世界の中で、目的もなく彷徨い続ける。走っても走っても出口は見えなくて、見える景色は全て暗闇でしかない。出口の見えない迷路でしかなくて、途方も無い孤独感に襲われる。
『ヌオオオオッッ――!!』
そんな孤独感の中、何処にも出口が見えない空間だけが視界を覆う。そんな空間の中でそれは、自分を追い込む敵だという事を感じ取った。
それに恐怖し、逃げ惑い……やがて見えない壁に阻まれた瞬間、それは笑みを浮かべて腕を伸ばすのであった。
「っ――はぁっ、はぁっ、はぁっ……ゆ、夢?」
バサッと飛び起きた彼女は、体中に張り付いたシャツと汗の臭いを感じながら、周囲に広がる景色を確認するように視線を向ける。
「ここ、は?」
「あ、起きた」
「へ?」
周囲を確認し終えた所で、何処から聞こえたのかと声の主を探す。やがて声の主を見つけたのだが、彼女は自分の見ている光景に目を疑った。
何故なら、そこには天井から覗き込む少女の姿があったからだ。板を一枚ズラした状態で、顔の半分だけをこちらへ見せている少女が居たからだ。
「……えっと、どうしてそこに居るんですか?」
「ん、趣味?」
「(て、天井に住み着く趣味……なのかな?へ、変な人だ!絶対に変な人だ!)」
「今、失礼な事を考えてるでしょ?」
「そそそそそそんな事無いですよ!?」
「(あ、これは図星の反応だ)」
彼女のたじたじな反応を見つつ、少女は天井から姿を現す。やや長い白い髪の毛を揺らし、少女の着地する瞬間に布団の中から飛び出した彼女に視線を向けた。
慌てて起きた所為もあってか、着ている服が肌蹴ている。微かに見えている肌や胸元を見て、少女はムスッとした表情を浮かべて腕を伸ばした。
――むにゅ。
「ひゃあっ!?ど、どうして胸を揉んだんですか!?」
「ボクよりあってムカついたから?」
「何で疑問系なんですか。私が疑問に感じてるのに」
ジトっとした目を向ける彼女に対し、手を軽くワキワキさせながら少女は手を離した。部屋から出ようとしながら振り向き、平坦な口調で彼女に告げた。
「服を整えて部屋を出て。焔が待ってる」
「ほむら……?」
そう少女が告げた瞬間、彼女の脳裏に昨夜の記憶が蘇る。記憶が嘘ではなかった事を感じながら、恐怖と共に目の前に現れた少年の姿も一緒に思い出した。そして目の前に居る少女の記憶も。
「あの、助けてくれてありがとうございます」
「お礼なら、ボクじゃなくて焔に言って。ボクは焔の命令に従っただけ。着替えたら廊下に出て。待ってるから」
そう言って少女は部屋を出ると、彼女は自分が居る場所を再認識した。ここは何処なのだろうか、という疑問を。
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