第2話
キーンコーンカーンコーン……。
高らかに鐘の音が響き渡り、朝の授業前の予鈴を知らせる。そんな予鈴と共に頬を掠める風は、季節の変わったばかりの春の風をも連れて来る。
自動車が走る事の少ないこの町では、学生の話し声で賑わっている。だが勿論、学生だけではない。商店街で商売を営んでいる八百屋の店長や服屋の店員の声も響いている。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……!」
そんな商店街の人混みの中を掻き分け、明らかに急いでいる制服に身を包んだ少女が居た。急いで家を出たのか、中途半端に整えた髪がボサボサとなっている。そんな少女の事を見掛けた商店街の者達は声を掛ける。
「お、
「今日もは余計ですっ」
「後五分で校門が閉まると思うけど、間に合うのかい?」
「だから急いでるんですぅ~!!!!」
商店街の中を駆け抜け、学校の姿を視認するとハッとした表情を浮かべる。だが視界の端で校門を締めようとしている教員を見つけた。
商店街の人間から「茜ちゃん」と呼ばれていた彼女は、『ええい』という掛け声と共に走り幅跳びの要領で校門を越えようとした。
「ふぅ……セーフ」
タタンと着地して、陸上競技のように綺麗な姿勢を取る彼女。そんな彼女の様子を見ていた教員は、溜息混じりにボードで軽く彼女の頭を小突いて言った。
「いや、アウトだぞ。
「ええー、ちょっとはおまけして下さいよぉ」
「駄目だ。連続遅刻魔のお前におまけなんてやるか。ほら、さっさと教室行け」
「はぁーい」
教員と彼女の様子は教室の窓から良く見える。彼女が遅刻した事は一目瞭然であり、誰もがそう理解している。だがしかし、ただ一人だけ。教室ではなく屋上から下を見下ろす人影があるのであった。
その人影は欠伸をしながら、昇降口へと向かう彼女の姿を見届けて言った。
「――アレが今夜の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます