08 トワイライト村決戦(前編)
ついに作戦決行の日がやってきた。
あたしは、トワイライト村の頭上を子供ドラゴンのムースと共にめぐる。
夜の闇に紛れてできるだけ静かに。
そうできるのは、タバサから翼をもらったムースだけだ。
消音装置?
とかいうのを付けているからできるらしい。
それにムースは子供だからな。
軽いからあまり音がしない。
眼下には悪魔教の者達が大勢いた。
タバサからもらった暗視スコープで見ると、どれくらいの数なのかバッチリ見えていた。
十人で一塊になって行動しているが、その集団が五つほど確認できる。
ざっと五十人ほどだ。予想よりちょっと多い。
それを見たあたしは、別の場所に向けて特殊な笛でサインを送った。
その音は、鷹であるチャイにしか聞こえない音だ。
チャイはどこかへ行って、数分後にまた帰って来た。
足に括り付けられた紙には、準備完了と書かれていた。
なら、作戦決行あるのみだ。
あたしはムースをあやつって、その場から急降下した。
音が消えているといっても、さすがにドラゴンの気配は消せなかったらしい。
地面まであと少しと言った所で、気づかれた。
「なんだ?」
「何かくるぞ!」
「上だ! 上にドラゴンがいるぞ!」
異変をさとった者達が頭上を見上げるが遅い。
先制攻撃はアタシ達がとった。
「やっちまえ!」
「きゅいいいいい!」
ムースがそこにいた悪魔教の人間達に突進。
何人かをひいてふっ飛ばしていった。
それと同時に離れた所から、光が届いた。
おそらくシェフィだ。
カイゼルのおっさんといっしょに行動しながら、魔法をつかっているのだろう。
閃光が収まった後、真っ赤な炎があがっている。
あたしが相手取っている連中の意識が一瞬だけそちらに向いた。
炎がすぐに消えてしまうが、敵は苦しげな声をあげて目を覆っている。
暗闇の中、急に強い光を見た人間は、視界がまんぞくに聞かなくなる。
それを利用したのだ。
あたしは暗視モードから切り替えた光除去モードのスコープをつけているから平気だった。
今のうちに、うろたえる連中の隙をつく。
ムースから飛び降りて、剣をひらめかせる。
「ーーっ!」
一人、二人。
敵が血だまりにたおれていった。
ムースも自在に飛び回って連中をなぎ倒してく。
順調だ。
やっと暗殺者らしい仕事が役に立った。
こうして長い間体をはって戦うのは、何だか久しぶりな気がする。
戦闘自体はちょくちょく今まであったっていうのにな。
一人でだから、余計そう思うのかもしれない。
竜騎士部隊では、背中を預けられる者達がいたから。
そんな中、ようやく連中が立ち直り始めた。
攻撃されている事を察知した者達が動き始める。
「敵だ! 敵が来ているぞ!」
だが遅い。
「アメリアさんだけではありません。こちらもいますよ!」
別の方面から奇襲をかけてきたヒューズが合流してきた。
早いな。
そっちは人数少なかったのかもしれない。
次いでやってきたタバサが光線銃で連中をひっかきまわした。
「あたしもいるよー。それそれーっ」
そして、
「僕もいる事を忘れずに。君たちを根こそぎ倒しに来た悪魔だ」
クランもだ。
けど少し削いだといっても敵は五十人近いから、すぐに乱戦になった。
敵味方。入り乱れての戦い。
その最中、あたしは一人の人間が遠く離脱していくのを見た。
一人だけ、扱いが違う。
そいつは明らかに他の人間から守られていた。
重要人物待遇、というやつだ。
おそらく親玉なのだろう。
「まて!」
あたしは、見失わないようにしながら、そいつを追いかける。
たまに他の人間とまざって、見分けがつかなくなりそうになった。
けれど夜目や小回りの利くチャイに上空からみはらせているから、かろうじて行方を見失う事はなかった。
上空を旋回するチャイの誘導にしたがって、奴を追いかけていく。
たどりついたのは、大きな鉄の板の前。
何十メートルもの高さがあった。
これがクランの言ってた、門ってやつか。
悪魔教は、この門から悪魔を呼び出すために、この村を占拠して、封印石を集めているんだっけか。
「これ以上、悪あがきはやめるんだな。残りの石はあたし達が回収してる!」
しかし、門の前に立ったそいつはにやりと笑う。
不安がよぎった。
「ふははは、封印石を回収した? 何のことだ? 偽物をつかまされたとも知らずに!」
男の背後で、音が立つ。
扉にいくつかのくぼみがあるのが見えたが、そこに四つの意思がはまっていた。
扉は少しずつ動いて開こうとしていた。
まさか、とっくのむかしにすりかえられていたのかよ。
(あたし達のやった事は無駄だったっていうのか!?)
しかし、今ならまだ間に合うかもしれない。
(これ、たぶん本物なんだよな。開くって事は。クランは冗談だとかいってたけど、だとしたら今の状況めちゃくちゃやばいじゃねーか!なんで、今ここにいるのがあたしだけなんだよ!)
とにかく、なんとかして扉をとめないといけない。
あたしは扉の前へ行こうとした。
しかし、足元に弓矢がささって立ち止まらざるをえなくなった。
「カイゼル、お前!」
その弓を言った正体は仲間だった。
カイゼルが邪魔をしてきたのだ。
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