06 回収完了2



 それから半時。

 船をこいでたどり着いたのは、半透明のドームの中だった。


 水上にあったけれど、透明だったからびっくりした。


 船が何かにぶつかった時は、何もないように見えたから焦ったな。


 でも、シェフィが解放魔法、とかいうのをつかってから、船はすすっと前に進み始めた。


 そうしてあたしたちは、不思議なドームの内側に入っていったのだ。


「開放魔法って聞いたことねーけど、どうやって覚えたんだ?」

「それは、わかりません」


 覚えてないということだろうか?


「でも、すげーな。そんなめったになさそうな魔法が使えるなんて。才能があるんだろーな」

「そうだったら、嬉しいです」


 嬉しそうにするシェフぃはそのまま話を続ける。


「ここにきたおかげで、魔法の使い方を思い出せたのかもしれません」


 その言葉に引っ掛かりを覚えた。


(ん? 魔法の使い方って忘れたりするものなのか?)


 気になったけど、聞いている暇はなかった。

 ここは遠方のよく知らない場所、あたりを警戒しなければいけない。


 四方へ注意を向けながら、ドームの中を進んで行った船は、その先に隠されていた遺跡の中へ向かう。


(クランの話では、海の上にあるそれらしい建物に隠されてるって話だけど、ここでいいんだよな?)


 遺跡の中を色々と船で回ってみるが、流れ着いた海藻とかすずしげに泳ぐ魚くらいしか見つからない。


(なかなか見つからねーな)







 しばらくあっちをうろうろ、こっちをうろうろしていたら。シェフィが「あっ」声をあげた。


 目の前に淡く光る管みたいなのが並んでいる。


 何だこれ。


 人生の中で一度も見た事がない奴だな。


「このしかけ、しってます」


 けれど、シェフィならわかるらしい。


 シェフィが、子守唄みたいなのをうたった。


 すると歌の音程に応じてなにか、管が順番に光っていった。


 その最中、どこからともなく魚の魔物が現れる。


(おい、戦力が少ない時にかぎってこういう危機くるなよ)


 あたしはおっさんに声をかける。


「おっさん、シェフィを守るぞ」

「へいへい、しょうがないねぇ」


 飛び道具の弓を射るおっさんに援護してもらいながら、魚の魔物を掃討。


 船に飛び乗ってきた時は、バランスを崩さないようにするのが大変だった。


 しかし、それも何とかなった。


 最後に一匹を蹴落とした瞬間、シェフィの歌が終わった。


 管が全部光輝いて、とても扉には見えなかった壁が、左右に開いていった。


(隠し扉かよ。無駄にこってんなこの場所)


 一体どういう理由で作られた場所なんだ?


「ここは古代遺跡と言われてる場所で、おっさん達が生まれる何千年も前の古代人が作った遺跡らしいわよ。トライライト村の人達はうまい事利用したそーね」

「みてーだな。しっかし……」


 こんな厳重に封印石が隠されてるって、ひょっとして悪魔なんとかも本物じゃないんだろうか。


 いやまさか。


 きっと村の人間が一矢報いろうと頑張っただけだろう。

 

 あたし達は開いた扉の奥へ向かって、中にあった石を手に入れた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る