05 水の石回収任務



 火の石を回収したついでに拾って来た豚は竜舎の横で世話になる事になったようだ。


 シェフィが面倒を見ているが、兵士達も豚ならば近づきやすいと気にかけてくれていたりする。


 回収した石は今度は奪われないようにと厳重に保管されているようだ。


 ザーフィスの時のようにはなりたくないからな。


 そんな後。


 水の石の回収は、おっさんことカイゼルとシェフィとで行う事になった。


 あたしは二連続の任務だ。


 後衛が二人だから少し不安だ。





 何度目かになるとドラゴンの乗り方もなれてきた。


 今度もあたしへシェフィのドラゴンにのせてもらう。

 おっさんの後ろは嫌だ。

 なんかうっかりで振り落とされそうな気がするし。


 目的の場所は、この前より少し遠い。

 三時間ほどドラゴンに乗って、海岸にたどり着いた。


 海だ。


 話にしか聞いた事がないから、来た事なかったんだよな。


(本当に広いんだな)


 風がなんか、独特だ。


(なんだろうこのにおい。嗅いだことがない。しょっぱい匂いだな)


 水平線も、初めて見た。


(絵本で見た事あったけど、海ってほんとどこまでも広がってんだな)


 感慨深い思いで海を眺めていたら、となりでおっさんが愚痴を言っていた。


「はぁー、おっさんにこんな遠いところまで行けっていうなんて、うちの王子様はほんっと人使いが荒いんだから」

「信頼されてるって事だと思います」

「だといいけどねぇ」


 カイゼルは海を見つめながら苦虫をかみつぶしたような表情になる。


 反対に、シェフィは初めて見る海にうきうきしているようだ。


「海、綺麗ですよ」

「そだねー」

「おしごと、いや、なんですか?」

「そうじゃないさ。ただ、おっさんなんかを置いてるクラン王子の心境がわかんねーなと」

「クランさんは優しい人です。だからカイゼルさんのこと放っておけなかったんだと思います」

「そうかねぇ」


 とりあず、地図に記されている場所へむかうため、小舟を借りて海へ出る。

 こぎ方はおっさんが知っていた。


 ゆれる船の上にのるのは、ちょっと不安だ。


「うわっと。これ、ひっくり返ったりしねーよな! 大丈夫だよな」


 騒いでると、こういう時にうろたえそうなおっさんになだめられた。


「はいはい大丈夫だから、座ってなさい」


 以外に余裕の態度だ。


 あたしは、泳げない人間だから、ひっくりかえったらどうしようもない。


 だから、落ち着かないのだ。


(おっさんはいいよな。来る前に、泳げるっていってたし)


 シェフィはどうだったか。


「シェフィは、だだだだ大丈夫かっ」

「私も大丈夫です。たぶん泳ぎ方知ってると思います」


 驚愕の事実だ。


(ちくしょう。うろたえてるのあたし一人だけかよ!)


 そんなこんながありなあがら、沖に出ていくと、すぐに魚の影が水の中に見えた。


 透明度が高くて、水中の中がよく見える。


(すずしそうだな。あとうまそう)


 きれいな景色だったが、芸術をたしなんでいるわけでもないので、そんなかんそうしかでてこない。


 ある程度手を動かして疲れたのか、おっさんが船をこぐ手をとめて、空を仰いだ。


 話ながら、手をプラプラさせている。


「シェフィちゃんは、任務に関してどう思ってる?」

「クランさんの力になれて嬉しいです」

「けなげだねぇ」


 おっさんってクランの次に何考えてるのかわかんねーよな。

 遠い目になって空に視線を注いでいる。太陽のまぶしさでもみてるんだろうか


「あいつが優しいってことはおっさんにも少し分かるわよ。危なくなったら一番前に出るし、危険な事はやらせようとしないしね」

「はい、私の時もそうでした。クランさんは、そうするのは当たり前の事だ。償いだからって言ってた時があります」

「償いねぇ」


 クランはシェフィには口が軽いのかもしれない。

 あたしや他のメンバーには言えない事でも、子供のシェフィだから言えるんだろうか。


 なぜか、ちょっともやもやしてしまった。


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