アメリアの過去
――あなたにとっての過去とは、何ですか?
そんなの知らねーよ。
夢に見るほどの過去なんてない。
だってあたしには、昔の記憶がない。
記憶にある一番古い景色は、真っ赤に燃える建物。
おそらく孤児院だった建物が燃えている景色だ。
あたしは、その燃えている孤児院の前でつたっていた。
そこから、今のあたしの人生は始まっている。
だから、それ以前の記憶はまるでない。
捨てられたのかとか、親と死別したのかとか、そんな記憶もまったくなかった。
おそらくあたしは、その燃えていた孤児院で育ったのだろう。
だけど、あたしの友人はどんな顔で、どんな名前だったのかとか。
その施設の大人達はどんな風だったとかは、まるで分らない。
どんなに望んでも、これっぽっちも思い出せやしない。
おそらく一斉に知り合いをなくしたショックで記憶を失ってしまったんだろーな。
その当時は、愕然としたもんだった。
でも、それでいいんじゃないかと最近は思えている。
今の孤児院の施設長マザーは良い人だし。
孤児院でお世話しているチビ達も、境遇にまけないいい奴等に育ってる。
だから、あたしはもう、過去に対する執着はそれほどなくなっていた。
今のあたしにとって大事なのは今、そして未来だ。
過去なんて、その程度の存在だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます