06 準備完了



 それから小一時間ほどかけてあれこれ買い物してたら、横でクックとシェフィが友達になっていた。


「たくさん商品があって、立派なお店ですごいです」

「えへん。でへへへへ、そんなに褒めても何もでませんにゅお! そうだ、このとっておきの商品を紹介しましょう」

「わぁ、綺麗なビー玉です」

「でしょでしょ! 大した値はつかないけど、とっておき! 目玉商品を紹介して自慢げになりますよーお」


 友達ができて良かったけど。

 カモられないか気を付けてみてないと。


 そういえば、前々から気になってたが、シェフィはどういう生活してるんだ。


(いつも部隊の部屋にいるけど、まさか城で寝泊まりしてるのか?)


 記憶身ある限りは、彼女がどこかへ帰っていく姿など見たことがない。


 両親とかは、いるんだろうか。


 ちょっと気になった。

 

(孤児院とかで育ったって風でもないんだよな)


 なんていうか、シェフィからは育ちの良さみたいなのを感じるのだ。

 貴族社会みたいなマナーがしっかりしてるとかそういうのじゃなくて、普通の一般家庭のしっかりした良い人の元で育ったような感じで。


 視線の先では、買い物を終えたようだった。


「はぁ、おっさんが戦う状況になったら、結構ピンチなんだけどねぇ。一応備えはしておきますか」

「備えあれば患いなしです」


 シェフィは杖を購入していたが、おっさんは弓だった。

 二人とも外見通り後衛なんだな。

 あたしとクランが前衛をつとめればバランスは悪くないか。


「ではでは、またのごひいきを!」


 うるさい人間がいなくなったその後は、地図を確認して、奈落の谷の情報をすりあわせる。


 魔物の種類や攻撃のくせ、特性などをできるだけ頭に叩き込んでおいた。


 得に毒のある魔物が多いらしいから、解毒薬もかかさずに持っていくことにした。


 情報はどんな職業でも、状況でも大事だ。


 裏の仕事をしていた時も、持っている情報の多さが依頼達成の助けになった事があった。


 そこまで移動する足は、今度はシェフィのドラゴンにのせてもらう事にした。


 この間クランと一緒に相乗りした時は疲れたから。


 別にふざけてるわけじゃないけど、こう。


 距離が、ちかい。


(あたしが落っこちないようにしているんで、みょうに姿勢を固定したがるというか、ぐ、具体的に思い起こすと顔から火がふきそうだ)


 どうせからかっているんだろうから、気にするだけ労力の無駄だとは思ってるけど。


(何度あってもなれないんだよ!)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る