05 騒々しい商人



 クランによると、谷には狂暴な魔物が多くすみついているという、だから装備は念を入れて整えなければならないらしい。


 だから数日かけて地図を見たり、武器を新調したりあれこれバタバタしていた。


 今回のメンバーは、結構多い。


 クランとあたし、そしてシェフィとおっさんだ。


 と、いう事で四人分のきちんとした装備をととのえるためにと、クランが呼んだのは、流れの商人の少女クックだった。


「うっひゃー、お金儲け! お金儲け! お城の人達に商売! 約束された明日の裕福に心が躍りますねっ!」


 朝、あくびをかみしめながら出勤。


 部隊の控室の扉を開けたら。


 なんかいる。

 控室にやってきたら、いた。


 見知らぬ人間がいた。


 色々と濃いやつが。


「ささっ、良い武器をとりそろえてますよーう!! どれでも選んでくださいな!!」


 小躍りしながらの商売トーク。


(けっこう、うるさい。なんだこいつ。っていうか、少しは欲と自分の心を隠せよ。普通の奴がつれてきたってわけねーよな)


 クランが気に入って連れてきたヤツなのだろうが。

 あいつが関係するやつって、ほんと変わりもんばっかだ。


「さあさあ、どーんとお買い物してください! 充実の品ぞろえを誇ってますんで。ない胸をはりますよ!」


 無視無視。


 すでに部屋にいたシェフィとおっさんは、それぞれ困惑したり疲れた顔したりしている。


「アメリアさん」

「ちょっとお嬢ちゃん、おっさんたちにこの子の相手は荷が重いわよぅ」


 部屋に入るなり救いを求める視線をなげかけられてうっとなる。


 あたしだって、この手の人間は苦手なんだよ。


 たまにいるんだよな。


 自分のペースに巻き込もうとするやつ。


(個性が強すぎるやつって、なんかそこにいるだけで疲れなくないか?)


 そいつとは仕事で一緒に行動する事があったんだけど、そいつと行動している時はミスが多くなったんだよな。

 ちょっかいかけてきて、邪魔してくるって理由が多かったからだが。


(こいつもきっと無自覚に人の足を引っ張るタイプなんだろうな(偏見))


 とりあえず、商売トークをできるだけ聞き流すようにしながら、その少女(クックというらしい)が持ってきたしなものを見ていく。


 よさそうな研ぎ石がいくつかあった。


 武器もそこそこ品揃えがいい。


 こういうのって、あるところにはあるもんだな。


 どれも質がよさそうだ。


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