第5章 新たな仲間

01 王子という身分



 二度目の仕事から帰った後、なれない報告書については部隊の連中総出で教えてもらった。


(タバサもヒューズもシェフィも、新人かまいたい欲をかくしもしねーんだもんな)


 おかげで助かったが。


 そんなに珍しいんだろうか。


(まあ、心臓ぬきとって人質にするくらいだしな。上の人間が)


 きっとしばらく新しいメンバーが入っていなかったに違いない。


 そのあとは、お決まりのクランのおしおきタイム?

 だった。


(今回(いや、前回もおもったけど)おしおきされるような事してねーだろ)

 

 だけど、クランは人の話をまったくきかないので、弁明の余地などない。

 それは必然だったようだ。


 ヒューズが、お相撲さんのきぐるみ?みたいなのを着て、城の中を一周させられていた。

 タバサは、うさ耳を頭に着けてもちつきやらされてたな。

 意味がわかない。


 シェフィは、みんなにお肉を焼く係。

 もっと意味がわからなくなった。


 おっさんはクランの椅子にされていた。


「なんでおっさんだけこんなきつい仕打ちなのよぉ! 今回なにも仕事してないでしょうが!」


 涙目になって、体力の限界でぷるぷる震えている中年男性の姿は、哀れみをさそった。


(おっさんだけ、扱い悪くねーか?)


 で、あたしはというと。


「君にはこれを着てもらおうかな」

「げっ、それ。本気でいってんのかよ」


 お姫様みたいなドレスを着せられて、専属の画家に肖像画をかかされるという罰だ。


 何の拷問だよ。


 そんな証拠が残るようなもん、なんであたしにだけ。


 できあがった肖像画はクランの私室に飾られる事になった。


 出来栄え悪くなかった。


 現実の景色をそのままうつしとったみたいだった。


 けど、その対象が暗殺者って。


 しかも飾る場所が、暗殺対象の部屋。


 真相を知る者としては、これをどんな心持ちで眺めればいいというのだ。








 お仕置の後、部隊の部屋の隅で黄昏てたらおっさんに話しかけれた。


 腰を痛めたらしいので、シェフィにシップをはってもらったあと、じっとしていたようだ。


 けど、いつもはあんま話しかけてこないのに、めずらしい。


「この間の任務はどうよ」


 でだしは当たり障りのない内容だ。


「別に、どうってこたねーよ。お前の上司が一人でなんでもかんでもやろうとする事いがいはな」


 思い出して少し憤慨してると、おっさんは予想していた様子で呆れた声を出す。


「あらら、またあの王子様は」


 そういうのは、皆の共通意識なんだろうか。

 おっさんが、あの王子またやったか、みたいな表情になっている。


「王子様は、見た目はひょうひょうとしているけど、意外にストレスたまってるのよ。こりずにつきあってあげてちょうだいね」

「へいへい。っていっても、玩具にされるのはたまったもんじゃねーけどな」


 そりゃ、ある程度はつきあうけど、

 あんなお姫様扱いされるような事はもう二度とごめんだからな。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る