02 暗殺



 たどりついた目的地。


 浪々の民の拠点には白い布のテントがたくさんあった。


「やっと、ついた」


 終わりが見えたとたんに、ぼんやりとしていた意識が回復してくる。


 木陰になりそうなものを見るだけでも、なんだか生き返るような気がした。


 立ち並ぶテントは、たたんで持ち運びできそうなものばかりだった。


 けれど、布はけっこうぶ厚くて、日光を通さない。


 でも手に触ってみると軽いという、不思議な素材だった。


「服装は結構別なんだな」

「彼等は、長時間強い日光にさらされているからね」


 通を歩く流浪の民は丈の長い服を着ている。


 首元も腰回りもゆったりとしていて、通気性がよさそうだった。


 通りを歩くだけで、色々と分かる事があったが、特徴的なのは……。


 砂漠の民は、のんびりした性格らしい。


 アタシ達を見て、「おや~?」みたいな反応。


 それで、数秒くらい考えてから「ああ」みたいな顔になる。


 警戒心が仕事してなさそうな連中だな。


 よくそれで生き残って来たものだ。


(生存競争とかすぐ負けそう)


「申し訳ありませんが、この拠点の代表者と話がしたいのです。どちらに?」

「ああ、あっちのテントにいますよ。疲れているでしょう? 呼んできましょうか~」


 舞っている間眺めている流浪の民達も、のんびりとこちらを見つめてくるのみ。

 そんなだから、予備に言った人間がトップを呼ぶのも時間がかかった。


 木陰でまたしてくれるのはありがたいけどな。


 一時間くらいしてから、ようやく長とかいうやつがやってきた感じ。


 クランが手を振って、あたしに話しかける。


「それじゃ、話してくるよ」

「おう。っていや、あたしも行かなきゃ意味ないだろ」

「じゃあ、僕達がいるテントの影で待機しててくれ」

「中に入れねーのかよ」

「大丈夫だよ」


 その後は、そんなやりとりでまた陰で待機。


 それからさらに一時間。


 周りよりちょっと高いテントの外で待ちぼうけしつつ、流浪の民がくれた水でチャイを冷やしていた。


 声は聞こえているから、その砂漠の民の王様っぽい奴と、クランは何か話し込んでいるようだが。


 その間、アタシの仕事は……。


「ふぁーあ」


 一応、ついてきたならその分働かなければ。


 近くで危ない奴がいないか警戒、だ。


 けれど、それっぽい人間は視界にまったく入ってこない。



 暇すぎてあくびしながら立っていると、子供が話しかけてきた。


 流浪の民の男の子だ。


 うさちゃんのぬいぐるみを持って、笑っている。


「お姉ちゃんお姉ちゃん」

「なんだ、チビ助」

「あのね、これ王子様に渡してって、さっきそこであった男の人が言ってたの」

「そうかありがとな」


 男の子は、手をふりながら去っていく。

 あたしは嫌な予感がして、うさちゃんに鼻を近づけてみた。


「うわー。ビンゴかよ」


 危機感死滅している場所だと思っていたが、やはり一筋縄ではいかない場所だったらしい。



 火薬の匂いがする。


(あー、あのくそ王子を暗殺しようと考えてる奴が、いるんだな)


 出来る事なら、自分がそうしたいくらいだ。


 でも、人質の存在がそうさせてくれないから。


「守るしかねーんだよなぁ」


 どんなに嫌な奴でもな。


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