02 変わったメンバー
王城に真正面から入っていくのは新鮮な感じだった。
真正面から入っていって真正面から捕らえられたりしたら、最高の皮肉になったのだがそうはならなかったようだ。
普通に案内されて、普通に部隊の控え室までたどり着いた。
城の上の方にある、大きな部屋だ。
案内の人に頭を下げて、扉をあける。
扉をちょっと開けた瞬間から、耳がうるさくなった。
「あはは、ヒューズ君、かわいいー」「や、やめてください。からかわないでくださいよタバサさん。僕は着せ替え人形なんかじゃないんですからね」「まあまあ、いいじゃないの少年。これも青春ってことで」「どこがですかっ、カイゼルさん見てるなら止めて下さ。うああああ、どこ触ってるんですかっ」「え、別に変なとこなんて触ってないよ、おもしろいねぇ」「あ、あの。みなさん……、やめた方が……」
怒涛の様にセリフの奔流が押し寄せてくる。
声のだいたいが若かった。
(何だこれ)
竜騎士部隊。部隊だから、どんなむさいおっさん達がひしめき合っていると思ったら。
部屋を眺めると。
(……えっと、バカップルの少年少女に、ひらひらの服を来た小さな女の子、くたびれた服を来たおっさん……じゃねーか)
予想に反して、比較的若い人間が多かった。
二名は、自分と歳が近そうだったし、他一名は孤児院のチビ達と大差ない年頃だった。
ぱっと見て一瞬、部屋を間違えたのかと思った。
しばらく扉の前でボケっとしてたら小さな女の子がこっちに気が付いた。
「あっ」
あの怒涛のセリフの中で、最後に状況をおさめようとしていたセリフの子だ。
慌ててこちらに駆け寄ってくる。
孤児院のチビ達を見ている気分になった。
ここが城の中だという事を忘れそうになって仕方ない。
その子は、仕立ての良いドレスを来た女の子。
桃色の髪の毛にリボンを付けた、大人しそうな雰囲気の子だ。
歳は十歳とちょっと、だろうか。
「シェフィ・トワイライト。十二歳です。はじめまして」
そして、自己紹介をしてぺこりとお辞儀。
しっかりとした子だった。
育ちの良さを感じる。
金持ちどもは、見ただけで「うげっ」となるあたしだか、さすがにこんな純粋無垢の子供にまでアレルギーを起こしたりはしない。
「おう、あたしはアメリア。ただのアメリアだ。よろしくな。他は……」
部屋の中を見回す。
騒動はちっとも鎮火しなさそうだ。
彼らに名乗ってもらうより、この子に聞いた方が速そうだ。
「ここはどういうあれなんだ。竜騎士部隊、でいいんだよな?」
「はっ、はい!」
どうやら案内人が部屋を間違えたわけではなさそうだった。
シェフィは緊張した面持ちで、部屋の中にいる人物について説明しはじめる。
「えっと、女の子の恰好させられてる人が、ヒューズさん。ヒューズ・デイ・マナトリアさんです。この国の第二王子です」
「えっ、あのやせっぽちが?」
紹介された少年。
ヒューズは、ひょろりとした体格の少年だった。
兵職で働くより、学者として働いている方がしっくりくるような見ためをしている。
唯一短くした青髪だけが、兵職の雰囲気を漂わせていた。
中性的な顔立ちだから、女装しててもなんかしっくり似合って見える。
(いや、ていうかなんで女装させられてんだよ)
つっこんでいい事か悩んでいると話が進んでいってしまった。
シェフィは女装変態犯らしき少女を示して、説明を続ける。
「それと、ヒューズさんを着替えさている人がタバサさんです。タバサ・インフニットさん。探検家ですけど、ヒューズさんがすかうとしてきた人です」
この国の第二王子に、さらに変態的な恰好をさせようとしている女性をみる。
快活そうな雰囲気の少女だ。
分厚い作業着を着ていて、またしても、こんなところにいるような人間に見えない。
視界の先で朗らかに笑っている。
邪気のまったくのない、くったくのない笑みだ。
嫌がらせしてるって感じではないな。
(楽しい事が好きな、マイペース人間って感じか)
珍しい白髪で、ちょっと目立つ容姿だ。
頭のてっぺんに、工具の形をした髪飾りをつけている。
一房だけひょいひょい揺れているのは、アホ毛だろうか。
そで、次にシェフィが示したのは、くたびれた服の中年のおっさん。
「後は、傍観している人がカイゼルさん。普段は情報屋さんですけど、たまにお手伝いしてくれます」
後は「いやぁ、青春だねぇ」とか言ってるいかにもおっさんくさい雰囲気のおっさんだな。
安全なところから、若者を冷やかすのが趣味そう(偏見)。
あと、くたびれた服を着てるから、公園とかでよく見かけそうだ(偏見)。
(スラムで見かけても印象に残らないだろうな。極悪人にカモられて殴られてそう)
これといって特徴のない見た目だ。
他の人物はどこか特徴がとがって見えるけど、このおっさんだけ一般人って感じがする。
なんでこんな所にいるんだろうか。
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