03 一週間前
時間は一週間前にさかのぼる。
孤児院 『アメリア』
朝日が昇る前に、あたしは起きる。
手早く身支度を整えて向かうのは、多くのチビたちが寝ている大部屋だ。
孤児院の仕事は朝から忙しい。
チビたちを起こして、飯を作って、食器を洗って掃除をして、着替えさせて、掃除をして、洗濯をして。
やる事はたくさんだ。
半日もする頃にはくたくたになってしまう。
けれど、だからといって休んではいられない。
夕方に帰ってきた女性、孤児院の経営者に引き継いでのお仕事の時間だ。
最近、孤児院の経営は、うまくいっていない。
孤児達をお世話するのには当然金が要る。
けれど、お金を出してくれる人が少なくなってきているので、別口から調達しなければならないのだ。
「さてと、今日はどんな依頼人がくるんだか」
アタシは動きやすい服装に着替えて、ローブをかぶる。
周りを警戒しながら、裏路地で栄えている酒場に顔を出した。
あらかじめ決めていた席に着くと、依頼人がやってきた。
その依頼人は、黒い角の意匠を胸元につけた人間だった。
名前はカルムと名乗った。
おそらく偽名だろう。
顔は、フードで隠してあるので見えない。
「単刀直入に言う。国の宝物庫から盗み出してほしいものがある」
「へぇ」
依頼はだいたい盗みの仕事。
あたしの夜の顔は盗賊だ。
最初の頃はあたしも真面目に、色々な仕事をしていた。だけど、孤児院出身という身分が仕事を遠ざけてしまっていた。
運よく職にありつけても、少ないお給金しか入らないものだから、こんな場所に流れついちまったというわけだ。
(そりゃ、ちょっとは思うところはあるけど、孤児院がつぶれちまわないためだ)
これからも、チビたちを育てていくために、身のこなしをいかして、盗みの仕事に手をださないとやっていけない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます