6月3日の赤ずきんちゃん
狼さんと赤ずきんちゃんが居ました。
今日は、二人が大好きな海を見に行きました。
森からは少し離れていますが、海を見るためと思えばなんでもありません。狼さんと赤ずきんちゃんは並んで歩きました。
海は、ざぶんと音をたてながらキラキラ輝いています。
あんなに光っているんだから、きっと光を出すなにかが海には住んで居るのね。赤ずきんちゃんは思いました。
海の向こう側には、大きな街が小さく見えています。
あんなに小さく見えるのも、赤ずきんちゃんにはとっても不思議なのでした。
狼さんは海を見ながらお話をしてくれます。遠い遠いところには、もっときれいな海があるのだと言います。
赤ずきんちゃんは、そのきれいな海が見たくてたまらなくなりました。そんな知らない世界を、狼さんはようく知っています。そんな場所に狼さんは行ったことがあるのだそうです。
赤ずきんちゃんは、すっかり感心してしまいました。
狼さんは、そうやってお話してくれながらも、ふっと無言になることがありました。
見上げると、なにか考えているような顔をしています。
なんだろう?赤ずきんちゃんはどきどきして来ました。狼さんは黙って一体なにを考えているんでしょう?
そういえば、昔ママが言っていました。悪い狼さんには気をつけなさい、食べられてしまうわよ。
この狼さんがもし、悪い狼さんだったらどうしよう。食べられてしまうのかしら。赤ずきんちゃんは急に不安になって、色々なことを狼さんに喋りかけました。すると、狼さんは笑って答えてくれます。
赤ずきんちゃんは安心して……安心した瞬間に見てしまいました。狼さんの大きなお口にならぶ尖ったたくさんの牙を!
赤ずきんちゃんは思いました。狼さんは、優しくて面白いけど、怖い狼さんなんだわ!
もう一緒に遊ばない方がいいかしら。
そう真剣に考えましたが、おかしなことに、なぜかそれは嫌だなと赤ずきんちゃんは思います。そんなの寂しいわ。でも、でも……。
赤ずきんちゃんがそんなことを考えているとは知らない狼さんは、楽しそうにお話してくれています。そして、その瞳は黒くキラキラ輝いています。
このキラキラの目がとっても好きだわ。赤ずきんちゃんは、優しくて面白いけど怖い狼さんを見上げて思ったのでした。
おしまい。
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