第3話 嬉しい

 どうやらここでの仕事は楽ばかりでは無さそうだ、でもスタッフさんたちが優しく教えてくれる、家とは大違いだ。

やれば褒めてくれるし、失敗すればちゃんとただしいやり方を教えてくれる、なんでもっと早くに知らなかったんだ。

「わーい!なんか飛んでますよ!ミーア先生!」

と、ドールが蝶を追いかけながら楽しそうにはしゃぐ。

「あれは蝶という生き物で、、、、」

ミーア先生はドールに詳しく教える、まあヒトに比べればあまり詳しい知識ではないが。

「リョウさーん!休憩ですよー!」

ミライさんが休憩の時間を知らせてくれた。


「わぁ!ずいぶんキレイに整備できたんですね!このお花の配置もすっごく素敵です!」

今日の仕事は花壇の整備、こういう小さな仕事もパークにとっては重要な仕事らしい。

「あの、、手先が器用で、、、もともと、、小学生のころは園芸委員とかも、、、やってましたから、、、」

ここででしゃばってベラベラ喋るのが俺の特徴、余計な口とはこの事だ。

「へぇー!凄いですね!男の子なのに園芸をやるなんて!なにか特別な理由とかあったりするんですか?」

ミライさんは聞く、優しい聞き方で、今までで自分のことをこんなに楽しそうに聞く人なんて初めてだ。

「いや、あの、、友達が入ったから、、一緒に、、、」

この理由も俺の特徴、べつになにか興味の有るものなんてない、ただ、一人が怖い、誰かに取り残される恐怖。

「へぇ、、、友達思いのいい子ですねー!」

どうして、、、?どうしてこんなにも俺を褒めるの、、、?

「少しずつリョウさんの事が解ってきた気がしました!まずは、、手先が器用で、、、友達思いで、、、あとはフレンズの皆に優しいです!」

なんでなんだ、、、?なんでこんなに褒めるの?

「たいちょーさーん!」

そこにドールがやって来た、が、しかし、俺は嬉しくて泣いていた。

「ど、どうしたんですか!?、、私、何か酷いこと言ってしまいましたかね、、、、」

ミライさんは心配して寄り添ってくれた、それがまた響く、指先がキュッとなり、苦しくなる。

「たいちょーさん、どうしたんですか!?」

ドールも心配して寄ってくる。

「嬉しいから、、、」

ポロリと言葉が出た、つい言ってしまった。

「そうですかそうですか、、、」

ミライさんは更に頭を撫でる、顔を見上げると優しく笑いかけていた、しかしその笑顔には何かが隠されているようだった。

「嬉しいなら、、わらいましょ?」

ミライさんは優しい言葉をかけてくれた。

「たいちょーさん大丈夫ですか?」

ドールもさすってくれた。

「ドールさん、ありがとうございます、隊長さん、少し具合が悪いんですよ、、、少し休ませてあげましょう。」

「分かりました!」


俺はミライさんに小屋に運ばれた。

「一生懸命頑張って、どういう気分だった?」

ミライさんは真剣な表情で、だけど優しい顔で聞いた。

「嬉しいです、」

素直に答えた、ミライさんはまた褒めた。

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