クビの配達引き受けます #10
「ほう」
モリスの口角が上がる。同時にヘカトンケイルの四連ガトリングガンが、火を噴いた。
BRATATATA!
「それはいよいよもって光栄だね。あのアンリミテッド・アーマーの全力を引き出せるとあっては。正式採用……早めの量産も視野に入れないとな」
吹き荒れるは嵐のごとき弾雨。射線が狙うのは、無論APザジである。
「いやいやまあまあリミッター解除と申しましても最初の一段階程度でしてようやくギアが一つ上がる程度と申しますかまだまだ底は深いのでございますと申しますかつまりワタクシはまだまだまだまだ本気を出していないといいますか出せない状況にあると申しますか」
機関砲に負けないマシンガントークを続けるサンジュ。そのユーザーたるザジは、今まさにパルクールの真っ最中にあった。
電子看板を蹴る。直後、弾雨が電子看板を粉砕。
ビル壁を蹴る。直後、弾雨がビル壁を粉砕。
電柱を蹴る。直後、弾雨が電柱を粉砕。
弾雨は当たらぬ。だが近づけぬ。このままでは反撃もままならぬ。そしてヘカトンケイルの火線は、じわりと追いつきつつある。
焦り。配送遅延以外で、久々に味わう感情。ザジは、バイザー下で歯をむき出した。
「御託はそろそろお腹いっぱいだよサンジュ! 準備はどうなのさ!?」
「はいはいまったく現状最高の適合率を持っているユーザーのリクエストと言えども諸々の準備とか申請とかクライアントへの負荷計算とか色々と準備が立て込むものですから色々と諸々と大変面倒ややこしい事々をこなさねばならなくてですね」
「でも、そろそろ終わっただろ?」
壁を、モニタを、電線を跳ね回りながら、ザジはヘカトンケイルを照準。ハンドガンの引鉄を引く。射撃、射撃、射撃。
狙いは正確無比。モノアイ、関節、装甲の継ぎ目。ザジの射撃は考えうるウィークポイントを的確に狙う。
だが効果なし。雲上人の技術に裏打ちされたヘカトンケイルは、関節部だろうと地上製のAP弾なぞ意にも介さない。介さないまま、弾雨の精度は上がっていき。
一発。ついにザジの肩口を弾丸が掠めかけた矢先、サンジュの認証は下りた。
「いやいやまったく感謝してほしいですねえどうにかこうにか認証も下りて計算も終わりましたので――アンリミテッド・アーマー№-30、リミッター解除シーケンス限定完了。両脚、右腕、背部。フェイズ2移行スタンバイ」
AIの、サンジュの口調が変わる。にわかに、アンリミテッド・アーマーのシステムが、熱を帯びる。
そして変形は、システム限定開放は始まった。
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