クビの配達引き受けます #9
「ありゃあ」
バイザーの下、ザジは眉をひそめる。
AP弾は全て命中した。だがヘカトンケイルの防護シールドには傷一つ無い。赤い瞼の下で、巨大なモノアイが照準を合わせる。笑うかのよう。
ザジは、あえてその目を覗き込んだ。
「この距離でAP弾を弾くのかあ。やるなオマエさん」
「実際問題中々に丈夫強靱頑丈頑健な素材でございますね珍しい興味深いこれもまた新素材新開発新商品というコトなのでございましょうかモリス様」
「ああ」
そうモリスが頷いた矢先、ヘカトンケイルは残りの二本腕をビル壁から引き抜いた。
落下、はしない。同時に起動した重力制御装置により、ヘカトンケイルはふわと浮遊する。
「ふむ?」
片眉を吊り上げるモリス。見たところ、この試作型に近接迎撃装備はまだ無い。四本腕の可動範囲から鑑みても、このモノアイ周辺は死角に位置している筈。だからこそザジはここへ潜り込んだのだ。もっとも、開発者側もそれを予見して新型シールドを設置したのだろう。後できちんと評価してやらねば。
だが、そうなると。
AIが取るだろう手段は――。
KBAM!
轟音。エンジン駆動。唸りを上げるヘカトンケイルの下部スラスター。
加速。加速。呵責無い加速。
「お、わ、と」
慌ててバランスを取るザジ。その背で、モリスは淡々と見ていた。
真正面。瞬きする度に巨大化する、ビルの壁面を。
「成程、そういう対処ルーチンが組まれているのか」
僅かに震える銀箱。ヘカトンケイルの加速力が、慣性制御装置の閾値を超えつつあるか。
「む、う!」
ザジも当然その狙いを察する。身をもぎ離し、強引にヘカトンケイルを蹴る。蹴り昇る。上部到達。跳躍。
DDDOOOOOOMM!!
またしてもビル壁面に突っ込むヘカトンケイル。電子看板が幾枚か破砕、落下していく。
間一髪免れた破壊。上下逆さに見下ろしながら、しかしモリスは不満顔だ。
「どうにも旗色が悪いんじゃないかい? アーマード・パルクール殿」
「そうですね。今のままでは」
言いつつ、くるくると回転するザジ。その真下、丁度横切ろうとした一般エアカー。飛び石代わりに一瞬着地、再跳躍。再びビル壁面へ立つ。
見上げる。体勢復帰し、浮遊するヘカトンケイルmk-Ⅵ。その四本腕全てから、ガトリングガンが展開。
「なんで、久々にリミッターを解除しようかと」
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