ドナ・ヴァレンタイン3

 それからふたりは、あのままソファでもう1回したあと、ジェットバスに入りたいというドナの要望で寝室に移動した。その際、邪魔なので服は全て脱いだ。


 バスタブに湯が溜まるまでベッドで一度、風呂に入ってからは湯船でいちゃついているうちにもう一度した。


 そのあと濡れた身体のままベッドに入ってからは、数えるのもバカらしくなるほどやりまくった。


 そして真夜中を過ぎたあたりで、ドナが気絶するように眠りにつき、ふたりの行為は終わりを迎えた。



「ふぁ……」


 窓から射し込む朝日で、陽一は目を覚ます。


「んぅ……もう、朝ぁ……?」


 陽一が身体を起こすと、ほどなくドナも目を覚ます。


「おはよう、ドナ」

「ん……おはよう」


 彼女は自身の身体を覆うシーツを引き剥がし、身を起こした。


「うわぁ……身体ベトベトね」


 ドナはひととおり自身の状態をかくにんしたところで、陽一に恨みがましい目を向ける。


「ほんと、遠慮なしにしちゃって」

「ドナが欲しいって言ったんだろ?」

「にしても限度ってもんがあるでしょうが」


 呆れたようにそう言ったあと、不意にドナが、意地の悪い笑みを浮かべる。


「もし赤ちゃんができてたら、責任取ってもらおうかしらね?」

「ああ、いいよ」

「えっ!?」


 ちょっとからかうつもりの発言に対し、真顔で即答されたドナが、逆に驚く。


「……もう、冗談よ。いまもお薬飲んでるから、その心配はないわ」

「そっか」


 安堵した様子もなく淡々と応える陽一に、ドナはクスリと笑みを漏らす。


「あー、シャワー浴びたいんだけど、お風呂ってあれだけ?」

「いや、奥にもうひとつバスルームがあるよ」


 ジェットバスを見ながら問いかけるドナに、陽一はそう答えた。


「さっすがスイートね。それじゃ、先に浴びてくるわね」

「ああ、ごゆっくり」


 それから交代でシャワーを浴びたあと、陽一はルームサービスの朝食を頼んだ。

 冷蔵庫やキャビネットにいくらでも食べるものはあるが、用意するのが面倒だったのだ。

 この日、ドナが休みだというので、陽一も彼女に合わせて1日休むことにした。


 彼女と自分の衣類をクリーニングに預け、ふたりはガウンを羽織って朝食をとった。


「さて、セックスもできるようになったみたいだし、これからは恋愛も楽しんでいこうかな」


 朝食を食べながらの会話のなかで、ドナがふとそう言った。


「お、いいんじゃないか」

「とりあえずヨーイチはダメね」

「おおっと、それは残念。理由を聞いても?」

「私、独占欲強いのよね。カリンやアラーナと、別れる気ないでしょ?」

「ないね」

「じゃやっぱりダメ」

「そっかー」


 少し残念そうにそう言いながらも、陽一はしごく納得した様子だった。

 というのも、念のため【鑑定】した結果、彼女に【健康体θ】が付与されていなかったからだ。


「でも、セックスはいいの?」

「だっていま私フリーだもん。恋人ができたらしないわよ?」

「なるほど」


 どうやら彼女なりの貞操観念があるらしい。


「だれか気になっている人とか、いる?」

「そうね、アイザックはちょっと気になるかも」

「あ、年上が好きなんだ」

「そこにこだわるつもりはないけど、彼、なんだか頼もしいし」

「まぁ、確かに」


 人生の大半を海軍で過ごし、イージス艦の艦長にまでなった男である。

 そのうえ、魔王軍との戦争も経験しているのだ。頼りにならないはずがない。


「でも、浮気とかしたら一発でバレるぜ?」


 なにせ彼は【鑑定】を持っている。


「しないわよ。私、本気になったら一途いちずだし」

「でも、俺との関係とか、大丈夫?」

「そういう過去を気にするような男なら、興味ないわね」


 さらっとそう言い放ち、コーヒーをひと口飲んだところで、ドナは不意にまじめな顔になる。


「それはそれとして、彼って結婚とかしてるのかしら?」

「あー、そうだなぁ……」


 陽一はアイザックに申し訳ないと思いつつ、記憶を探るふりをしながら彼を【鑑定】した。


 彼は若いころに一度結婚し、3人の子をもうけたが、中年のころに離婚していた。

 元妻にはすでに別のパートナーがおり、子供たちもみな独立している。


 そして現在、アイザックに特定の相手はいないようだった。


「たしか結婚はしたけど、離婚したとか言ってたような……」


 こまかいところは伏せて、それだけを伝えた。


「そっか。それと、これはもっと大事なことなんだけど」


 ドナは眉間にしわを寄せ、少し前のめりになる。


「あの歳でも、セックスってできるのかしら?」

「どうかな……」


 アイザックは70に近い年齢だが、見たところ身体はしっかりとしていた。

 少なくとも不能でないことは軽く【鑑定】してわかったが、それ以上の健康状態を調べるのは気がとがめるのでやめておく。


「元気そうだし、大丈夫じゃないかな」

「そうよね! まぁいまはいいお薬もあるみたいだし」

「そ、そうだな……」


 俄然やる気をだしたドナを見て、陽一はサマンサに一度相談しようと決めた。


 アイザックと仲のよかった彼女なら、彼のためにいいポーションなり精力剤なりを作ってくれることだろう。

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