第12話 ごほうび

「いいかげんにしなさいよおおおぉぉぉおおぉぉぉおおっ!!!!!」


 その絶叫は、手足を拘束されてベッドに大の字に寝かされているシャーロットのものだった。


 うっかり媚薬を舐めてしまったアラーナと、それにつき合って同じく媚薬を舐めた花梨と実里が欲情したため、シャーロットはそのまま放置されてしまったのだ。

 キングサイズよりもさらに大きなベッドはシャーロットを大の字に寝かせてもなおスペースが空いており、陽一らはそのスペースでさんざん楽しんでいたというわけである。


「あぁっ! またっ……もういやぁっ!!」


 そう叫んだあと、シャーロットの身体がガクガクと震えた。


「もういやぁ……。なにもされてないのにぃ……」


 シャーロットはインキュバスの媚薬を塗られてからずっと放置されていたが、そのあいだも媚薬の効果で大変なことになっていた。


「おねがいよぉ……シャーリィおかしくなっちゃうよぉ……」


 シャーロットは子供のように泣きじゃくりながら、陽一を求め続けていた。


 媚薬を塗られたあと、せめてなにかしらの責めがあればそれに対抗することができたのかもしれない。

 しかし異世界の媚薬による未知の催淫状態に入ってからずっと、なにもされずただ目の前で繰り広げられる肉欲の狂宴を見せつけられ、断続的に訪れる刺激にさいなまれ続けたシャーロットの心は、すでにポッキリと折れてしまっていた。


 激しく交わる陽一とアラーナ、それにふたりの様子を熱心に見ていた花梨は気づかなかったが、交接を終えて少し落ち着いていた実里の耳にはシャーロットの悲痛な叫びが届いていた。

 媚薬の効果がまだ少し残っている実里にしてみれば、陽一と何度交わったところで満足できるものではなく、ひとり余ったシャーロットは格好の獲物だ。


 ちなみに実里は風俗嬢時代、女性を相手にしたことも何度かあるので、百合プレイへの忌避感はない。


 ゆらりと立ち上がった実里はショーツを完全に脱ぎ、スカートのホックを外した。


 実里はシャーロットの下へ歩み寄ると、左足に結ばれていたロープを外し、拘束を解いた。


「え、なに……おねえちゃん、なにするの……?」


 心身の異常が続いたシャーロットは、すっかり精神年齢が退行してしまっているようだった。


「大丈夫、お姉さんが優しくしてあげるからね」

「やだ……それ、ちがうの……欲しいのは、おにいちゃんのなのぉ」


 戸惑いつつも実里の意図察したシャーロットはふるふると首を横に振ったが、実里は気にせず欲望のままに行動した。



「うぅ……ぐすん……うぇぇ……」


 実里が満足するまでひたすら相手をさせられたシャーロットは、解放されたあとグズグズと鼻をすすり始めた。


「どうしたの、シャーリィ?」


 セクシー系の大人金髪美女が子供のように泣いている姿はいささかシュールではあったが、実里には眉を下げてぐずるシャーロットがなんだか可愛い妹のように思えてきた。


「ふぐっ……シャーリィ、変なの」

「なにが変なの?」

「シャーリィ、おねえちゃんにいっぱいされたの。いやって言ってもおねえちゃんやめてくれなかったの」

「……ごめんね?」

「ううん、いいの。シャーリィ悪い子だからお仕置きされても仕方ないの」

「お仕置きのつもり、なかったんだけど……」


 そのつぶやきは、どうやらシャーロットには聞こえなかったらしく、彼女は言葉を続けた。


「シャーリィ、いっぱいされたの。もういやなの。でも……、まだものたりないの……うぅ……」


 そこでシャーロットが潤んだ瞳を実里に向けた。

 その視線を受けた実里は、胸がキュンとなるのだった。


「シャーリィ、へんなのかなぁ? びょーきなのかなぁ……?」


 不安げな顔をしたシャーロットに胸をキュンキュンさせながら、実里は優しく微笑んで首を横に振った。


「大丈夫。シャーリィは変じゃないよ」

「でもぉ……あんなにしたのに、もういやなのに、もっとしたいの……。ぜったいおかしいの」

「心配しないで。ちゃんとすれば治まるよ」

「ちゃんと? おねえちゃん治せる?」

「私には無理かな。でもお兄ちゃんなら……」


 そう言いながら、実里は陽一の方に目を向け、シャーロットもその視線を追った。


「おにいちゃんなら、治せるの?」

「うん、きっとね。ほら、おにいちゃん空いたみたいだよ」


 アラーナとの行為を終えた陽一は、求められるままに花梨とも交わったようだが、実里がシャーロットと楽しんでいるあいだに一段落ついたようだ。


「おいしそー……なの」

「うふふ。じゃ、いこうか」


 実里は手を縛っていたロープをほどいてシャーロットを解放し、身体を起こしてやった。


「大丈夫? 立てる?」

「んぅ、だいじょーぶ……ひぅっ!!」


 なんとか立ち上がったシャーロットは、実里に支えられながらよろよろと歩き始めた。

 少し動くたびにビクンと身体が震え、膝をつきそうになるのを、実里の力を借りてなんとか耐えていた。


 【健康体β】を持つアラーナと花梨、実里はその気になれば媚薬の催淫に抵抗レジストできたのだが、興に乗っていたため効果を受け入れてしまっていた。

 しかしいくら受け入れたからといっても催淫は状態異常なので、【健康体β】によって短時間で回復されてしままう。


 じつをいうと途中からはほとんど催淫状態から脱しており、自前の情欲で乱れていた部分が大きい。

 しかしシャーロットはいまなお深い催淫状態にあり、ちょっとした動きが快感につながっていた。

 ただ歩くだけで強い刺激を受けながら、なんとか陽一のもとにたどり着いたシャーロットは、彼の傍らにへたりこんだ。


「あ、実里……って、ええっ!?」


 何度もアラーナに搾り取られてぼんやりとした頭で実里の姿を確認した陽一だったが、彼女のそばにいるシャーロットの姿に目をむいた。


「えっと、解放したの?」

「はい。この娘はもう大丈夫ですから」

「いや大丈夫って……」


 なにがあったのかは知らないが、シャーロットは怯えた様子で実里にしがみついていた。


「大丈夫だよ、シャーリィ。お兄ちゃんが治してくれるからね」

「ほんと? おにいちゃん、なおしてくれる?」

「シャーリィ? お兄ちゃん? なに言って――」


 そこまで言ったところで、実里は陽一の口を人差し指で押さえ、ウィンクした。

 意図はよくわからないが、陽一はとりあえず様子を見ることにした。


「シャーリィ、お兄ちゃんにちゃんとおねだりできる?」

「……うん、がんばる」

 そしてシャーロットは、卑猥な格好で卑猥な言葉を並べておねだりをした。


(……なにプレイ?)


 抜群のプロポーションを誇る金髪美女が、少女のような口調でおねだりしている。

 なにが起こっているのか理解は及ばないが、卑猥であることは確かである。


 それから何度かやりとりを経て、陽一もすっかりその気になった。


「お兄ちゃんの、ほしいか?」


 そしてここまでの奇妙なシチュエーションに乗ることにしたのだった。


「うん……ほしい……」

「うーん、でも、悪い子にはおあずけかなぁ」

「えっ? やだぁ!! おねがい、もうおかしくなっちゃうのぉ! すぐにちょぉだいよぉ……」

「じゃあ、シャーロットはいい子になれるか?」

「うん! シャーリィいい子になる!!」

「お兄ちゃんやお姉ちゃんの言うことちゃんと聞けるか?」

「きくぅ! いうこときくからはやくぅ」

「お兄ちゃんやお姉ちゃんを困らせるようなことはしないか?」

「しないよぉ……! だから、だからぁ……」

「約束だぞ?」

「やくそくするの!! おやくそく、ぜったいやぶらないから、はやくちょぉだいっ!!」

「よし、いい子だ」


 それからシャーロットにご褒美を与えたあと、さらに花梨、実里、アラーナが参戦し、5人での大乱闘になった。

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