第5話 英雄の卵─奇跡と驚き─

「──こんな事が……あり得るの?」


 召喚士のお姉さんは驚きの声を上げました。

 それもそのはずです。過去の記録からも、英雄候補は四年に一人、伝説の武器は百年に一度現れれば良いと言われているのですから……。どの諸説にも、同じような内容で描かれています。


 今回に関しては、それが同時に二つ……これは歴史的に見ても、奇跡としか言えないのです。


「武器の姿が見えるわよ……」


 魔方陣からうまれた影の塊が、徐々に薄れて形がハッキリしてきまし。


「剣の様な形の物と、四角い何か……。盾なのかな……?」


 トウカちゃんが疑問の声を上げる中、お姉さん達はその光景を見て足を震わせます。


「やはり、武器は二つなのね……。次の厄災いは……そんなにも大きいものなの……?」


 占い師のお姉さんは、よっぽど、驚いたのでしょう……意味深な言葉と共に、腰を抜かすようにその場に座り込んでしまいました。


 伝説武器についていた影は飛び散り、姿をハッキリと現しました。その姿を目の当たりにして、トウカちゃんも胸が弾けるほど高鳴りました──!




「──か、か、かわいいの!」


 驚く事に現れた武器は、大きなうさぎさんのぬいぐるみと、大きな針の様な物でした。


「僕、うさぎさんがいい!」


 トウカちゃんが自分の背丈ほどある、白くて可愛いうさぎさんに抱きつきます。彼女は、大きなぬいぐるみには昔から憧れを抱いていたのです。

 それを手にしたトウカちゃんは、笑顔が止まりません。


「な、なぁ、あれなんだよ? 冗談だろ?」


 お姉さん二人は、ヌイお兄さんの発言で目を反らしました。

 武器以外の形状は、今までに一度足りとも前例には無いのです。その事を知ってる彼女達は、何となく後ろめたい気持ちになりました。


「お、おぉ~、英雄の卵達よ! 見事に武器を授かる事が出来たようだ~! 貴方達には、今後如何なる……」

「──おい……聞けよ。いくらなんでも失敗だろ? やり直せって……」


 ヌイお兄さんの言葉に召喚士のお姉さんが、プイッとそぽを向きました。召喚士のお姉さんは、勢いでうやむやにしようとしましたが、流石にそうはいかない様です。


「貴方達は、厄災を乗り越えるため世界を回り己を鍛えなさい。そして見事人々を救い、英雄となるのです!」

「ってことで、早く行きなさい……シッシッ!」


 お姉さん達は、強行突破を図りました。起きてしまった結果を、変える術など元より無いのですから……。

 

 そして同時に、トウカちゃんもそれどころではありませんでした。お姉さん達の話を聞いて、彼女は重大な事に気づいいたのです……。

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