第4話 英雄の卵─出会い─
開かれた扉の先は、とても広く……目がチカチカしそうな汚れひとつ見当たらない、純白の部屋でした。
部屋の一角には、白いソファーに座っている二人の同じ顔のお姉さん達が居ました。
トウカちゃんと目付きの悪いお兄さんは、門番さんに中に入る様に進められ、お姉さん達の前まで歩いて行くのです。
「──今回、選ばれた英雄候補は貴方達……ってあら? 子供?」
透き通る青い長髪のお姉さんが、様式美を語る最中、トウカちゃんの顔を見て驚きの声を上げました。
「皆、すぐ子供扱いする……。もうトイレも一人で行けるのに……」
すぐ隣に立っているお兄さんに聞こえていたのでしょう、「いや、そういう問題じゃないから」っと小声でツッコミを入れられました。
「──ま、まぁ神様のお告げな訳ですし……。ゴホン、貴方達の名前を言いなさい」
燃える様に赤い短髪のお姉さんが、強めの口調でトウカちゃんを指さしました。
「ぼ……僕は、トウカ……と言います」
赤髪のお姉さんは「間違いないの?」と、青髪のお姉さんに声を掛けます。確認を取ってる所を見ると、おそらく青髪のお姉さんが占い師様なのでしょう。お姉さんは驚いた顔をしながら質問に対して縦に首を振りました。
──すると突然。
「俺の名前はヌイ、なぁ? このオープニング、スキップとか無いのか?」
隣に立っているヌイと名乗ったお兄さんが、突如意味の分からないことを口走たのです。
トウカちゃんは驚きました……『子供の自分だって緊張して敬語を使ってるのに、このヌイって名乗ったお兄さんは、何て強気なんだ』っと。
そしてそのすぐ後、自分の事を子供だって認めてしまった事を思いだし『しまった……』っと頭を抱えたのです。
「貴方も間違いなく、英雄候補の様ね……。オープ何とかとか、ステップとかはよく分からないけど、早くして欲しいと言う事かしら?」
青髪のお姉さんは、ヌイお兄さんを睨みます……。しかしその姿を見ても、ヌイお兄さんはまったく気にしていない様です。
「あぁ~その通り。この後、適正検査するんだろ? 武器が出るか出ないかの二択。時間は有限だ、さっさとすませた方が、お互いの為だと思うんだけど」
そう言って、ヌイお兄さんはお姉さん達を急かす発言をしたのです。この時、トウカちゃんは『まったく……わびさびを分かってないよね……』っと、子供らしからぬ事を思っていました。
「貴方達の様な人達に、武器が現れるとは思わないわね……。確かに、貴方の言うように時間の無駄ね。さっさと済ませましょうか?」
彼女の発言と行動から推測すると、赤髪のお姉さんが召喚士様なのでしょう。
召喚士のお姉さんが、ヌイお兄さんを睨みながらも立ち上がりました。
「良い武器を頼むぜ? 世界を救わないといけないんだからな?」
ヌイお兄さんは凄い自信です。まるで、自らに伝説の武器が現れるのが当たり前の様に言ってるのですから……。
召喚士のお姉さんは「ふん……言ってれば良いわ」と鼻で笑います。そして、その場で急に踊りを始めたのです。
右に左に、ゆっくりと舞う姿はとても美しく、トウカちゃんは今が召喚の儀と忘れてしまいます。それ程に、目の前のお姉さんの舞は素晴らしく、まるで天使が踊っている様でした。
「へぇ~……神楽舞の一種か? 本当、見事なクオリティーだな……」
ヌイお兄さんも、口では無粋な事を口にしていますが、その踊りから目を離そうとはしません。
優雅だった舞は、次第に激しさを増し情熱的に変わっていきます。
──すると、突如地面に魔方陣が現れました!
「──あ、現れるの?」
占い師のお姉さんも、驚きの声を上げソファーを立ち上がります。召喚士のお姉さんは踊りを終え、最後に両手をパンッ! と合わせました。
「な、何か出てきたよ!」
トウカちゃんは驚きの余り声をあげてしまいました。なんと……魔方陣の中からは、二つの影が現れたのです……。
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